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06 花見の会
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今日は、蔭間茶屋恒例のお花見会の日だ。
日本だと、花見は桜で春のイメージだけど、ここのは涼しくなってから。
日本でいう秋に、赤い曼珠沙華みたいな花を咲かせる木を愛でる。
夜にライトアップされて、その下で着飾った可愛い陰間達が酒とご馳走でお客様をおもてなしするんだ。
毒々しくて、とっても倒錯的だ。
まあ、宴会して盛り上がりたいってことは共通だよね。
基本、常連さんのための催しだから、部屋持ちの兄さん達は上座にいて、多くの常連さんが順番待ちしている。
立食形式で食事や飲み物も用意してあって、歌や舞いも披露されてて飽きさせない工夫もしてるみたいだ。
イシュレイは上座の末席で、次々に来るお得意さん達に笑顔を振りまいていた。淡い黄色の着物がイシュレイによく似合う。
そう! イシュレイもこの度めでたく部屋付きになったんだ。
まだまだ上位の兄さん達には人気も稼ぎも及ばないけど、おっとりしてて可愛いイシュレイならすぐに片手に入れると思う。
俺達の雑魚寝部屋を出てくとき、涙を溢したイシュレイに俺も泣いた。
素直じゃないヨーランですら、後ろを向いて目に涙を溜めていたのは内緒だ。
学生寮みたいで楽しかったもんなぁ。
といいつつ、ヨーランの席もなかなかに賑わっている。
あのキツい性格に虐められたいって特殊なお客さんが固定でいるから、部屋付きになるのも近いだろうな。
なんで、こんなにのんびり人様の観察が出来てるかって?
俺には、お得意様がリロイ様しかいないからです。
常連さんには漏れなく招待状を送ってるはずなのに、リロイ様は毎回こういう場には来ないんだって。
つまり、俺は……。
「あれ? 一人でいる陰間がいるよぉ?」
甲高い嫌味な声が聞こえてきたぞ。
きゃらきゃらと笑うのは、リシャールだ。両手にお客様をぶら下げてる。
きのこみたいふわふわした金髪と大きな青の目で、店では五番人気くらいではある。
なのに、何故か、最下層の俺を目の敵にしてんだよね。
五番人気なら、大人しく上座にいろよ。
年は俺より思いっきり下だけど、先輩だからちょっと頭を下げる。ちょっとだけ。
「まさか、お得意様が一人もいないの? ねぇ、先生方、可哀想だからぽめ太についてあげて?」
「まさか。折角お前の順番が回ってきたところじゃないか」
「申し訳ないが、私は可愛い子が好みだからね」
リシャールとお客さんの声に、周りもくすくすと笑い出す。
そう言えば、俺って仲のいい陰間、イシュレイとヨーランしかいなかったわ。
外国からの出稼ぎだって見下されてる節もある。
さすがにトップ3の兄さん達はそんなことしないけど。
俺はこの中で、多分一番年上なので、ぐっと堪える。大人げないからな。
「ぽめ太、中に入って厨を手伝え」
俺の金剛ハザナさんが助けてくれた。良かった。
「俺って嫌われてんなぁ」
「そりゃそうだろ」
え?!
思わずハザナさんを見上げる。
厳しいけど、基本的に俺の味方になってくれるのに。
「みんな、借金を持ちつつ頑張って上を目指してるんだ。技も容姿も必死に磨いて、誇りもある。やる気のないお前は目障りだろうさ」
それは、前からハザナさんに言われてる言葉だった。
なんでお前はここにいるんだ?って。
俺は俯いた。
なんでって、俺がいる理由なんて……。
立ち止まってしまった俺の頭に、ハザナさんがポンポンと手を置く。
「ま、そこがぽめ太のいいところでもある。が、もう少し身を入れてくれると俺も嬉しい」
こくんと頷いた。
元の世界で俺は一人っ子だったから、ハザナさんをお兄ちゃんみたいに勝手に思って慕ってる。
「意外に手先が器用だからな。ぽめ太は厨番の方が向いてるのかもな」
「本当?! 俺、厨番やりたい! 推薦して、ハザナさん!」
「あ、あー」
急にハザナさんが口籠りだした。
あれ? お世辞だったのか?
結局、俺が楽しく厨の手伝いをしているうちに、俺にとって初めての花見会は例年通り盛大に終わったようだった。
日本だと、花見は桜で春のイメージだけど、ここのは涼しくなってから。
日本でいう秋に、赤い曼珠沙華みたいな花を咲かせる木を愛でる。
夜にライトアップされて、その下で着飾った可愛い陰間達が酒とご馳走でお客様をおもてなしするんだ。
毒々しくて、とっても倒錯的だ。
まあ、宴会して盛り上がりたいってことは共通だよね。
基本、常連さんのための催しだから、部屋持ちの兄さん達は上座にいて、多くの常連さんが順番待ちしている。
立食形式で食事や飲み物も用意してあって、歌や舞いも披露されてて飽きさせない工夫もしてるみたいだ。
イシュレイは上座の末席で、次々に来るお得意さん達に笑顔を振りまいていた。淡い黄色の着物がイシュレイによく似合う。
そう! イシュレイもこの度めでたく部屋付きになったんだ。
まだまだ上位の兄さん達には人気も稼ぎも及ばないけど、おっとりしてて可愛いイシュレイならすぐに片手に入れると思う。
俺達の雑魚寝部屋を出てくとき、涙を溢したイシュレイに俺も泣いた。
素直じゃないヨーランですら、後ろを向いて目に涙を溜めていたのは内緒だ。
学生寮みたいで楽しかったもんなぁ。
といいつつ、ヨーランの席もなかなかに賑わっている。
あのキツい性格に虐められたいって特殊なお客さんが固定でいるから、部屋付きになるのも近いだろうな。
なんで、こんなにのんびり人様の観察が出来てるかって?
俺には、お得意様がリロイ様しかいないからです。
常連さんには漏れなく招待状を送ってるはずなのに、リロイ様は毎回こういう場には来ないんだって。
つまり、俺は……。
「あれ? 一人でいる陰間がいるよぉ?」
甲高い嫌味な声が聞こえてきたぞ。
きゃらきゃらと笑うのは、リシャールだ。両手にお客様をぶら下げてる。
きのこみたいふわふわした金髪と大きな青の目で、店では五番人気くらいではある。
なのに、何故か、最下層の俺を目の敵にしてんだよね。
五番人気なら、大人しく上座にいろよ。
年は俺より思いっきり下だけど、先輩だからちょっと頭を下げる。ちょっとだけ。
「まさか、お得意様が一人もいないの? ねぇ、先生方、可哀想だからぽめ太についてあげて?」
「まさか。折角お前の順番が回ってきたところじゃないか」
「申し訳ないが、私は可愛い子が好みだからね」
リシャールとお客さんの声に、周りもくすくすと笑い出す。
そう言えば、俺って仲のいい陰間、イシュレイとヨーランしかいなかったわ。
外国からの出稼ぎだって見下されてる節もある。
さすがにトップ3の兄さん達はそんなことしないけど。
俺はこの中で、多分一番年上なので、ぐっと堪える。大人げないからな。
「ぽめ太、中に入って厨を手伝え」
俺の金剛ハザナさんが助けてくれた。良かった。
「俺って嫌われてんなぁ」
「そりゃそうだろ」
え?!
思わずハザナさんを見上げる。
厳しいけど、基本的に俺の味方になってくれるのに。
「みんな、借金を持ちつつ頑張って上を目指してるんだ。技も容姿も必死に磨いて、誇りもある。やる気のないお前は目障りだろうさ」
それは、前からハザナさんに言われてる言葉だった。
なんでお前はここにいるんだ?って。
俺は俯いた。
なんでって、俺がいる理由なんて……。
立ち止まってしまった俺の頭に、ハザナさんがポンポンと手を置く。
「ま、そこがぽめ太のいいところでもある。が、もう少し身を入れてくれると俺も嬉しい」
こくんと頷いた。
元の世界で俺は一人っ子だったから、ハザナさんをお兄ちゃんみたいに勝手に思って慕ってる。
「意外に手先が器用だからな。ぽめ太は厨番の方が向いてるのかもな」
「本当?! 俺、厨番やりたい! 推薦して、ハザナさん!」
「あ、あー」
急にハザナさんが口籠りだした。
あれ? お世辞だったのか?
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