異世界転移した先は陰間茶屋でした

四季織

文字の大きさ
18 / 38

18 派手な半纏と灯さんと俺

しおりを挟む
 この世界に来て約8ヶ月目、俺は初めての冬を迎えている。

 といっても、ここには四季がないようで、一気に寒さが来て体が追いつかない。

 特に、今年は乾燥も酷いらしい。
 そういや、俺が来てから全く雨が降ってないな。
 このままだと、内陸部の水不足が深刻化しそうなんだって。

 昼になっても気温が上がらないので、支給された半纏を着る。
 綿が詰まってて快適なのに、お店の子達には不評だ。

 派手だからだと思うんだよね。柄がうるさいのに目に痛い原色だから。

 オーナーが選ぶと、どうしてこうなっちゃうんだろう。
 本人は派手さに負けない顔の造りとオーラがあるからいいけど、普通の人のことを考えてほしい。
 金剛まわしさん達が「俺達も言ったんだけど」って申し訳なさそうに配るから、逆に申し訳なかった。

 廊下をうろうろしていると、灯さんが仕事している姿を見かけた。
 紺の着物にたすき掛けをして、背伸びして窓拭きをしていた。可愛い。

 灯さんが来てから、半月が過ぎた。
 痛々しかった傷もかさぶたになり、赤みも引いてきた。痕も目立たないといいんだけど。

 灯さんは翌日からすぐに働き始め、あっという間にみんなから可愛がられるようになっていた。
 気立てが良くて謙虚で可愛くて、一生懸命な姿が愛されないわけがない。

 この街かこの世界の常識なのか。
 ここの人達は、あまり体を売る仕事に悲観的じゃない。
 むしろ、待遇のいいこの店で奉公できるのは喜ばしいことのようだし、誇りを持ってる人もいる。

 灯さんから俺が体売ってることになにか言われたことはないけど、どう思ってるんだろう。


「ぽめ太くん!」

 俺に気づいた灯さんが、手を止めて笑いかけてきた。可愛い。
 
「体は平気? ちゃんと食べた?」
「うん。いつもありがとう」

 最初、灯さんは食も細かったんだ。ホントにどれだけ酷い目にあってたんだろう。

 もし、豪商が逃げた灯さんを探してたらいけないから、灯さんは俺と同郷の出稼ぎの外国人ということにした。
 逃げてきたことを知っているのは、オーナーとハザナさん、エルキドさんだけ。
 そして、俺達が渡り人って知ってるのはオーナーだけだ。


「それでね、みんな僕のこと女だと思ってたみたいで……」

 最近、灯さんの口から同じ下働きの小さな子達の話が出るようになった。
 一緒に洗濯をしたり干し物をしている姿は、大男揃いの金剛まわしさん達から「小さくて癒される」って密かに人気が高い。
 
 その子達も灯さんに懐いてるし、灯さんも面倒見るのが上手い。妹弟とかいたのかな。

 灯さんが急に話を止めて溜息をついた。

「どうかした?」

 最近、話していてもつらそうな表情を見せるようになった。

「あ、ううん、ごめん。あれ? オーナーとハザナさんだ」

 振り返った先に、廊下を曲がってくる大男二人の姿が見えた。
 大男達もこっちに気づいたようだ。

「ぽめ太、お前、半纏着てるんだな」
「あ!」

 着たままだった!
 うわぁ、俺、こんなの着て歩いてたんだ。
 にやにやしたハザナさんに言われるまで忘れてた。

「なんだ、あ!って」
「う、ううん、なんでも」

 オーナーが怪訝そうに見てくるから、少し目を逸らす。

「アカリの邪魔してないだろうな」

 助けのつもりなのか注意なのか、咳払いをしてハザナさんが口を挟んできた。助かった。

「あ、あの、ぽめ太くんは僕の手伝いをしてくれてて……」
「アカリはよくやってるってエルキドも褒めてたぞ」

 ハザナさんがにこにこと笑みを見せて、灯さんの頭を撫でる。
 扱いが違いませんかね! 人柄? 人柄のせい?

 オーナーを見ると、ハザナさんの後ろでにやにやと俺を見ていた。
 この根性悪そうな顔! でも、好き!

 撫でられて戸惑ったように、でも頬を染める灯さんが可愛い。
 そうだよね、21才で撫でられることってないから恥ずかしいよね。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

男だって愛されたい!

朝顔
BL
レオンは雑貨店を営みながら、真面目にひっそりと暮らしていた。 仕事と家のことで忙しく、恋とは無縁の日々を送ってきた。 ある日父に呼び出されて、妹に王立学園への入学の誘いが届いたことを知らされる。 自分には関係のないことだと思ったのに、なぜだか、父に関係あると言われてしまう。 それには、ある事情があった。 そしてその事から、レオンが妹の代わりとなって学園に入学して、しかも貴族の男性を落として、婚約にまで持ちこまないといけないはめに。 父の言うとおりの相手を見つけようとするが、全然対象外の人に振り回されて、困りながらもなぜだか気になってしまい…。 苦労人レオンが、愛と幸せを見つけるために奮闘するお話です。

監獄にて〜断罪されて投獄された先で運命の出会い!?

爺誤
BL
気づいたら美女な妹とともに監獄行きを宣告されていた俺。どうも力の強い魔法使いらしいんだけど、魔法を封じられたと同時に記憶や自我な一部を失った模様だ。封じられているにもかかわらず使えた魔法で、なんとか妹は逃したものの、俺は離島の監獄送りに。いちおう貴族扱いで独房に入れられていたけれど、綺麗どころのない監獄で俺に目をつけた男がいた。仕方ない、妹に似ているなら俺も絶世の美形なのだろうから(鏡が見たい)

幸せな復讐

志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。 明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。 だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。 でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。 君に捨てられた僕の恋の行方は…… それぞれの新生活を意識して書きました。 よろしくお願いします。 fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。

一夜限りで終わらない

ジャム
BL
ある会社員が会社の飲み会で酔っ払った帰りに行きずりでホテルに行ってしまった相手は温厚で優しい白熊獣人 でも、その正体は・・・

左遷先は、後宮でした。

猫宮乾
BL
 外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

【本編完結済み】卒業パーティーで婚約破棄をやらかした王子が『真実の愛』に辿り着くまでの話

むちこ
BL
学園の卒業パーティーで婚約者の公爵令嬢を断罪して婚約破棄を言い渡した第一王子は、そこで見た女の本性に打ちのめされすっかり女性不信に。断罪するはずが反対に王位継承権を剥奪され、失意の彼に手を差し伸べたのは… という話を書くはずが、ヒロインも悪役令嬢も当て馬にして王子様が大好きな人とイチャイチャ幸せになった話になってしまいました。 本編完結済みです。時々イチャイチャを追加するかも。

神子様のお気に入り!

荷稲 まこと
BL
異世界に召喚された主人公、百瀬瑠衣。 そこは女性が存在しないBLゲームの世界だった。 『神子様』と呼ばれイケメンたちにちやほやされる瑠衣であったが、彼はどうも不満そうで…。 長編の合間の息抜きに書きました。 ふわっと設定なのでふわわっと読んでください。 すけべシーンには※が付いてます。

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

処理中です...