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第2話 熊じゃなくて
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「本当の熊は、殴ったら駄目だからな」
俺が殴った人は、そう言った。俺を咎めることもない。
3年の斎木蒼一郎先輩だ。
斎木先輩は俺の事情を聞くと、旗の設置を手伝ってくれた。
「結構です」と恐縮しても、静かに微笑むだけで、黙々と旗を立ててくれる。
俺が1本取り付ける間に、2本3本取り付けるから「慣れてるんですか」と言ったら、一瞬止まって。
「いや、差し込むだけだから」
真顔で答えられた。
すみませんね、不器用で!
先輩のおかげで、あっという間にノルマを終え、俺は先輩と帰路についていた。
多分、俺が野生動物にビビってるから、気を使ってくれたんだと思う。
「あの、先輩は、あんなところで何をされていたんでしょうか」
「あー」
「あ! 言いにくいなら、言わなくても大丈夫です! 男には、仕方がないときがありますもんね」
特に、先輩くらいのイケメンになると、人目も多いから一人になれるのは藪なんだろう。
溜まるとツライのは、よく分かる。
「誤解してるようだけど、多分、それ違う」
実は、この斎木先輩。生徒会の寡黙書紀なのだ。
涼しげな顔のイケメンで、もちろん攻略対象者の一人だ。
剣道部のエースでもある。
当然、さっきの俺のへなちょこ攻撃も、さっとかわされていた。
親衛隊も、もちろんある。
「抜くなら、トイレで十分だろ」
「親衛隊がトイレまでお供するって聞きました」
「なんだ、それ」
斎木先輩は、ぷっと軽く吹き出した。
それは、西条くらいだぞって。
え、生徒会長の西条会長はそうなんだ。ちょっと引く。
ゲームの設定では、斎木先輩の親衛隊は、寡黙で温和な先輩の人柄に合って、穏やかな親衛隊だったはずだ。
「狸の世話してて」
「へ? たぬき?」
ぽつりと先輩が言うから、聞き返してしまった。
斎木先輩が言うには。
山菜を取りに藪に行ったら、仔狸が怪我をしているのを見つけて、駄目だと知りつつ治療してやったらしい。
母狸とはぐれたのか、餌も持ってきてやっているそうだ。
「へぇぇ」
「あー、うん。駄目だよな、野生だし。分かってるんだけど」
「可愛いでしょうねぇ」
「動物好きか?」
「はい。親がアレルギーで飼ったことはないんですけど」
小さいモフモフしたのは好きです。
そうか、と斎木先輩が微笑む。
先輩も面倒見るってことは動物好きなんだな。
でも、そんな設定、あったっけ?
「あそこ、茸取れるんですか?」
斎木先輩が言うには、なかなかに食材の宝庫らしい。
実は、生徒の立入禁止区域なので黙っててくれないか、とイケメンが神妙に言うから。
「いいですよ。今度、狸見せてくださいね。そしたら、俺も同罪です」
俺は笑って言った。
俺が殴った人は、そう言った。俺を咎めることもない。
3年の斎木蒼一郎先輩だ。
斎木先輩は俺の事情を聞くと、旗の設置を手伝ってくれた。
「結構です」と恐縮しても、静かに微笑むだけで、黙々と旗を立ててくれる。
俺が1本取り付ける間に、2本3本取り付けるから「慣れてるんですか」と言ったら、一瞬止まって。
「いや、差し込むだけだから」
真顔で答えられた。
すみませんね、不器用で!
先輩のおかげで、あっという間にノルマを終え、俺は先輩と帰路についていた。
多分、俺が野生動物にビビってるから、気を使ってくれたんだと思う。
「あの、先輩は、あんなところで何をされていたんでしょうか」
「あー」
「あ! 言いにくいなら、言わなくても大丈夫です! 男には、仕方がないときがありますもんね」
特に、先輩くらいのイケメンになると、人目も多いから一人になれるのは藪なんだろう。
溜まるとツライのは、よく分かる。
「誤解してるようだけど、多分、それ違う」
実は、この斎木先輩。生徒会の寡黙書紀なのだ。
涼しげな顔のイケメンで、もちろん攻略対象者の一人だ。
剣道部のエースでもある。
当然、さっきの俺のへなちょこ攻撃も、さっとかわされていた。
親衛隊も、もちろんある。
「抜くなら、トイレで十分だろ」
「親衛隊がトイレまでお供するって聞きました」
「なんだ、それ」
斎木先輩は、ぷっと軽く吹き出した。
それは、西条くらいだぞって。
え、生徒会長の西条会長はそうなんだ。ちょっと引く。
ゲームの設定では、斎木先輩の親衛隊は、寡黙で温和な先輩の人柄に合って、穏やかな親衛隊だったはずだ。
「狸の世話してて」
「へ? たぬき?」
ぽつりと先輩が言うから、聞き返してしまった。
斎木先輩が言うには。
山菜を取りに藪に行ったら、仔狸が怪我をしているのを見つけて、駄目だと知りつつ治療してやったらしい。
母狸とはぐれたのか、餌も持ってきてやっているそうだ。
「へぇぇ」
「あー、うん。駄目だよな、野生だし。分かってるんだけど」
「可愛いでしょうねぇ」
「動物好きか?」
「はい。親がアレルギーで飼ったことはないんですけど」
小さいモフモフしたのは好きです。
そうか、と斎木先輩が微笑む。
先輩も面倒見るってことは動物好きなんだな。
でも、そんな設定、あったっけ?
「あそこ、茸取れるんですか?」
斎木先輩が言うには、なかなかに食材の宝庫らしい。
実は、生徒の立入禁止区域なので黙っててくれないか、とイケメンが神妙に言うから。
「いいですよ。今度、狸見せてくださいね。そしたら、俺も同罪です」
俺は笑って言った。
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