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第一章:あの日、再び
黒の悪魔と死
しおりを挟む「意外と、遅くなっちゃったな。」
今朝、下ってきた道を、そのまま登る途中。
孤児院の近くで、アザミやモモナ、ミチカといった、
お決まりのメンバーに捕まった。
結局、モモナにつられて…各々が、道の真ん中で騒いでしまい。
「アナタ達ッ!
もう夜も近いんですよ!早く、建物に入りなさい!」
今朝のデジャヴのように、サラ院長に怒られた。
そして…
「特にヨウは…早く、中腹の森を抜けて山頂へ。
気を付けて…自分のお家に、帰るんですよ。
ーー”黒の悪魔”を、忘れてはなりません。」
心配そうな顔のサラ院長に、そう、声をかけられた。
心配になるのも、無理はない。
サラ院長も…
7年前の【黒の誕生】で、息子さんを、亡くしているからだ。
そんなサラ院長の言葉で、
俺たちは散り散りに解散していって。
俺はまた一人、
ヒマリとの約束の場所までの道を歩いていた。
「”黒の悪魔”…か。」
さっきの、サラ院長の言葉を、思い出す。
この世界に生きる者で…この単語を、知らない者は…いない。
いつからあるのか、ずっとずっと昔から語り継がれていた、
”伝承ー【黒の悪魔と旅人と】”
子供はみんな、
”夜になったら黒の悪魔が来るぞ”という、
大人たちの脅し文句を信じて。
夕飯までには、ちゃんと家に帰るように育つ。
…そんな、教訓のように語り継がれていた昔話が…
昔話じゃ、なくなったのは…
7年前のあの日、【黒の誕生】で。
普通、”光”をエネルギーとするカラーズのチカラは、
…夜の闇の中では、使えない。
だから、【黒の悪魔の伝承】は
空想でしかありえない、ただの昔話のはずだった。
だけど、7年前のあの日、夜の闇の中…。
ーーー伝承と同じ、”漆黒のチカラ”で。
伝承と同じように、一瞬でーーー
俺たちの故郷、リビ山は。
その殆どが、更地になった。
昔話の中で生きていた”黒の悪魔”は、
7年前のあの日、間違いなく…現実に、”誕生”したのだ。
「父さん…。」
俺を背後にかばい、
黒の悪魔に向かっていく、勇敢な背中を思い出す。
父さんが向かっていってすぐ…
”黒の悪魔”は、本格的にチカラを解放して。
…父さんは、二度と会えないところへ、いってしまった。
俺を含め、生き残った人たちは、
みんな、”黒の悪魔”を、遠巻きにしか見ていなくて。
惨事の後、ホワイトノーブルが、聞き込みをしたらしいけど…
…誰も、その顔を、
ハッキリと見てはいなかった。
ただ、みんな共通していたのは…
『闇夜に溶け込むことなく…眩しいくらいに、”紅く”、輝く、
ーー伝承通りの、瞳をしていた。』…ということ。
あとは、背丈や体格から、成人男性だろう…ということも分かったけど。
それ以上のことは、いくら調べても分からないままだった。
「黒の悪魔…。今も生きてる、のかな。」
あの日、一瞬にして俺の日常は崩れ去った。
俺だけじゃない。
アオ兄も、アザミも、モモナも、ミチカも、サラ院長も…。
偶然生き残った俺たちは、”黒の悪魔”に、家族を奪われ。
きっとまだ…みんな、あいつを憎んでいる。
ーーそれでも。
それでも、みんなこうして。
今日一日を、大切に笑い合って、支え合って、生きているんだ。
「…死んで、ますように。」
あの日から7年。
ホワイトノーブルも捜索しているらしいけど、一切、情報がつかめないらしい。
あの爆発で、自身も消し飛んだのでは…と、考える学者もいる。
恨みは、もちろん消えていないけど。
今はまず…あの大惨事から守ってくれた、
助けてくれた父さんとアオ兄に。そして、母さんも含めて。
俺の大切な家族に恥じないような…
…そんな男に、なりたいと思う。
「よっしゃー!俺は言える!言ってやる!」
もう一度、自分に気合を入れて。
約束の切り株まで…
ここから歩いて、あと25分。
ちょっと急がないと、約束の時間に遅れてしまいそうだ。
「ついに、告白…するん、だな。」
そう、口にしたことで、いても経ってもいられなくなり。
逸る気持ちのまま、小走りで山道を駆け出した。
ーーー【黒の再来】まで、あと50分ーーー
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