黒の悪魔が死ぬまで。

曖 みいあ

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第二章:新しい世界

見えない勅令

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「な、んで…。お前が、ここに…!」


抱えられた情けない格好のままでも…

怒りで、頭に血が昇っていくのが分かった。





「お前のせいで……うわぁ!!!」


ブレイズに、怒りを叫ぼうとしたのに…




「よいしょ…っと。」



大先生に…なんとも雑に、地面に投げられて。



「いてっ!!!」


受け身もとれず。あっけなく、地面に背中を打ち付けた。





痛がる俺を気にもとめず、
大先生は、10メートルほど先から向かってくるブレイズに…



「初めまして!こんにちは。

僕は、タケト・ノヴァンと言います。どうぞよろしく。」


見たこともない…爽やかな笑顔で。

右手を差し出しながら、向かっていった。






俺は痛めた背中をさすりながら、
ブレイズの動きや発言を、警戒する。


「…。あなたが、この組織の…トップ、でしょうか?」


ブレイズは、そう、にこやかに問いかけ…

こちらに向かって、ゆっくりと歩くのを…やめない。





「いいえ。僕は、ただのイチ隊員ですよ。

ホワイトノーブルに憧れている…この、ブラックアビスの、ね。」


大先生も、後ろにいる俺からは見えないが…たぶん、笑いながら。

ブレイズと同じくらいのスピードで…ゆっくりと、歩みを進める。






「嘘は…よくありませんね。」


ブレイズが、そう言って歩みを止めた。

白と黒…2人の隊長の距離は…約、3メートル。





「嘘…ですか?

それは…どの部分を、指しているんでしょう?」


大先生は、相変わらず楽しそうな声色で言う。



ブレイズと同じく…歩みは、止まった。




「どの部分か、ですか…。

そうですね。強いて言うなら…すべて、ですね。」



ブレイズは、微笑んだまま…


…ゆっくりと、左腕を上げた。

肩から垂れ下がった真っ白のペリースが、大きく揺らめく。





「大先生っ!危ないっ!!」


俺は、2日前、
ブレイズに攻撃された場面を思い出し…

咄嗟に、大先生に向けて、大声で叫んだ。




しかし、そんな俺の叫びも気に留めず…



「勅令するーーノエル、舞い”踊れ”。」


ブレイズはそのまま、よく通る低い声で勅令した。






ただ…


(”狂え”じゃなくて…”踊れ”…?)




ゆっくりと発現したノエルや、周囲に溢れるモヤも、


【黒の再来】の夜の”白”とは違う…

ジャアナの街で見ていたような”水色”だった。



そうして現れたオーバー…イルカのノエルも、


氷の柱ではなく…
周りにまとっているのは、水色の、水の塊だった。






「…私の、近距離での発現にも、全く動じない。

あなたは…私の勅令に、攻撃する意志がないことを、
一瞬で、察知したようですね。


ただの隊員では…ありえない、高い能力と、判断力です。


それに、ブラックアビスも…我々に憧れている組織では、ありませんね。」


ブレイズは、発現したノエルを優しく撫でながら。

消えていくノエルを見つめ…

穏やかな口調で、大先生に向かって、そう指摘した。






「…。

いやぁ~。ブレイズ隊長ったら、僕を褒めすぎですよ。

隊長の流れるような勅令に…咄嗟に、行動できなかっただけです。



ただ…



…今から、ちょっと、反撃してみようかな~なんて。」





大先生は、とても楽しそうに言い…右手を、勢いよく振り上げた。



そして…


「勅令するーーペアレ、”解き放て”。」





(大先生の…勅令…!!!)


俺は、ずっと気になっていた大先生の勅令を…凝視する。




見逃さないように…と、目を凝らしたが…




「えっ?」




大先生の周りには…

オーバーらしきモノも、

なんなら、溢れ出る光や、モヤなんかも



何も…勅令する前後で、変わったようには、見えなかった。





なのに…



「…っ!」

ブレイズは、サッと身をひるがえして。

大先生から離れた所…1メートルほど、後ろに飛び退いた。


そして


「やはり…私が『すべて、間違いです』と…

指摘した、通りでしたね。」


微笑んだまま…だけど、真剣な口調で、そうつぶやいた。






「お~、やっぱ避けられるか!さっすが隊長だな。

せっかく良い子のフリして近付いたってのに~。



ただの隊員だって嘘ついたことや、
ブラックアビスが、お前らに憧れてるって嘘も…

…挙げ句、俺のチカラまで。


ぜ~んぶお見通しだなんて、面白くないなぁ~。」


”面白くない”…なんて、言っておいて。


大先生は、すごく楽しそうに…ブレイズと、話を続ける。




「改めまして…

俺は、ホワイトノーブルの”真の野望”を阻止するために作られた

ブラックアビスの…”特色隊”隊長、タケト・ノヴァンだ。


さっきは、嘘ばっかついて、悪かったな!


ほら、ブレイズ隊長って…
ホワイトノーブルの隊長3人の中でも、”最強”って、言われてるだろ?

俺って、慎重なタイプだからさぁ。」




(大先生が…慎重?)


まだ1日も一緒に過ごしてないけど…

…たぶんこれも、嘘だな。




「そうでしたか。

やはりあなたが、ブラックアビス”最強”と噂される…”特色隊”の、隊長。


そして…慎重なタイプ…。

情報では…”自信が服を着て歩いている”、とのことでしたが…。」


ブレイズが、はて?と、首をかしげる。





「はぁ~?!また”それ”か!!

ったく、あいつら…そんなに俺をバカにして楽しいか!!」



(あいつらって…やっぱハナ隊長と、サクヤ隊長…かな。)



そう思って、少し笑ってしまいそうになりながらも




「大先生が…ブラックアビス”最強”…。」


数メートル先の…

大きなたくましい背中を見つめて、そう、つぶやいた。
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