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第三章:来たる日に備えて
想いのチカラ
しおりを挟む「…!シオンっ!?」
こじんまりとした家の、広い庭
その向こう、大きな木のあたりから
シオンの、”らしくない”、大きな叫び声が聞こえて
つい、俺は、心配になって、
そっちに視線を向けて、声をかけていた。
そんな俺を見て
目の前に向き合ったレンは、面白くなさそうに言う。
「俺様が目の前にいるっていうのに…余裕だな。
いい加減、言い訳のような嘘を並べるのはやめて、戦おうぜ。」
そう、俺たちは
あれから二手に分かれても、ずっと話し合いをしていた。
まあ、話し合いって言っても
俺が、一方的に、【黒の再来】の時に起こった真実を
レンに話していただけ、なんだけど。
「戦うのは…やだ。
レンが信じてくれるまで、俺、ずっと説明するから!」
シオンも心配だけど、
目の前のレンを放っておくこともできず、また、説得を試みる。
そんな俺の態度に、レンのイライラは増すばかりで
「いい加減、しつこいんだよ!
約束の場所に行ったら、ブレイズ隊長が…叔父さんを殺してたって?
ホワイトノーブルが…黒の悪魔を復活させようとしてる?
ヨウとアオ君のカラーズが混ざって、たまたま黒のチカラが発現した?
どれもこれも…ヨウに都合が良すぎるだろ?!
証拠もないのに、適当な嘘言うな!
俺とヒマリが見たのは…
ヨウのチカラに焼かれる、叔父さんだけなんだから…!」
レンはイライラと、
俺が話した内容を、まくし立てるように否定した。
でも…
(ちゃんと、話…聞いてくれてる。
まだ、信じたい気持ちは、残ってる、はず…!)
さっき、ちらっとみた、レンの付箋を思い出す。
『【ヨウを、信じたい、のに…!】』
今の俺にできること
それは、もちろん…
(チカラを、使うんだ…!)
さっき、二手に分かれる時、シオンも
『ヨウのチカラなら…レンを、説得できる。』
って、言ってくれていた。
俺のチカラについて、付箋で読んだんだろう。
読んで、あの賢いシオンが、
”できる”って言ってくれたんだから…
(チカラは、使いようだ。絶対、できる…!)
そうして
俺が、1つしかないチカラを
どうやって活用しようか、改めて考えはじめた時…
「証拠…。
そうだ、アオ君…。」
レンが、ポツリとつぶやいた。
俺は、その言葉を、聞き逃さなかった。
「それだっ!
アオ兄にも、説明してもらおう!」
俺は、すっかり忘れていた。
(そうだ、アオ兄こそ、
俺の体内に残る”証拠”じゃん…!)
「…アオ君は…
ホワイトノーブルの報告では、
お前が山を吹き飛ばした時に、一緒に…
叔父さんの遺体と一緒に、消し飛んだ、って…。」
レンは、悲しそうな顔でつぶやいて
「本当に、お前の中に…融合、してるのか?」
俺を、まっすぐ見つめ返して、問いかける。
その瞳は、俺に
『信じさせてくれ』って、言っているみたいで。
「もちろんっ!アオ兄は、俺の中に、意識がある。
アオ兄は、光が当たる場所で、
勝手に、俺のオーバーに意識を乗せて、出てくるんだ!」
俺は、元気よく自分の胸を叩いて。
自信満々に、そう言った。
けど…
「でも、アオ兄は、いつも…
俺の中で、”寝てる”みたいな状態らしいんだ。
目が覚めたら、勝手に出てくるって言ってた。
アオ兄の発現は…俺にはまだ、制御できていない。
だから正直…
どうやって発現させたらいいのか、分からない…。
おーい!アオ兄!!
レンだよ!レンが、呼んでるんだ!!!
寝てるの?ねぇ!出てきてよ!!!」
俺は、右腕の服の袖を、思いっきりまくりあげて、
太陽光に当たった二の腕に向かって、叫ぶように呼びかけた。
少しの、静寂。
「…。出てこない、な。」
レンは、さっきよりも
悲しそうな声で、ポツリとつぶやいた。
「ちょっと待てって!
まだ、寝てるだけなんだ、きっと!今に起きるから!
アオ兄!起きてよ!ねぇってば!!!」
俺は、自分の腕に向かって必死に呼びかけて。
腕を叩いたり、つねったりしながら、反応を待つ。
でも…
「出ない、な…。」
レンは、ため息をつくように、
そう、言葉を吐き出して
「…俺、まだまだ甘いな。
ヒマリと一緒に、ホワイトノーブルに入るって決めた時…。
もう、覚悟したはずだったのに。
お前の姿をした”悪魔”に、騙されないって。
ヒマリを、お前から守ってやれるのは、俺だけだって。」
「違うって!レン…!」
「そうだ、お前には、ちゃんと…
俺のチカラ、見せたことなかったな。
アオ君と、修行したチカラだ。
アオ君は、お前が”悪魔”だったってこと、
知らなかったなら、いいな。
アオ君まで…嫌いに、なりたくないし…。」
レンはそう言って、真っ白の隊服をまくりあげ
右腕を、前に突き出した。
「レン!やめろ!!!」
「お前は…俺の知ってる、ヨウじゃない。
ヒマリの…敵(かたき)だ。
俺様のチカラで…跡形もなく消してやる。
勅令するーーウィンディ、焦がし滅せよ。」
レンを、レンのカラーズと同じ
赤みがかった黄色…赤橙色のモヤが包み込む。
「くそっ!!」
俺は、一旦距離をとって、
モヤの外、視界の良い場所で、周囲を警戒する。
その時、モヤの中心から
一匹の…赤橙色の、ドラゴンが飛び出した。
「ドラゴン…アオ兄と、同じ?」
俺は、アオ兄のオーバー
深緑色の、リュウマを思い出す。
「なんで、レンも…?」
距離的に
俺のつぶやきが聞こえたとは思えないけど。
レンが、俺の問いに答えるように、
ゆっくりと話しはじめた。
「俺のオーバー…ドラゴンそっくりだろ?
シードラゴンっていう、魚なんだ。
アオ君が、教えてくれた。」
モヤで、レンの表情は見えないけど。
その声は穏やかで、落ち着いていた。
「オーバーってさ、
まだまだ解明されてない事が多いけど
遺伝の影響が大きいって言うだろ?
カラーズとか、オーバーとか、親に似るって。
でも俺、遺伝より…
想いの強さの方が、ずっと影響するって思うんだよ。
俺は両親とも、発現者じゃない。
俺の、このチカラは、きっと…
ずっと、身近で、憧れてた…アオ君の、影響だ。
アオ君みたいになりたくて…俺が作り出した、チカラだ。」
「アオ兄の、影響…。」
「だから、アオ君も生きてたら…
絶対、お前を止めたと思うから。
もしかしたら、止めたから…
お前に、殺されたのかな…。
いや、それはもういい。
俺は、ただ
ヒマリと、世界を守るために。お前を消すだけだ。」
レンがそう言って、右腕を振り上げる。
『バゥゥ~!』
どこか、リュウマに似た鳴き声が響いて。
その鳴き声の主、
レンのオーバーのウィンディから、
これも、リュウマの炎に似た
赤橙色の、鮮やかな炎が
俺目がけて、吐き出された。
ーーシュッ!
「レンっ!やめろって!」
そこまで、スピードは速くなかったから。
距離をとっていたお陰で、
俺は、危なげなくかわすことができた。
でも…
ーーージュゥゥゥゥウ!!!!
「なっ!!!」
俺がよけた炎は、そのまま、地面に当たり…
…地面を、一瞬で。ドロドロに、溶かしていった。
「こんなの…当たったら…!」
「言っただろ?お前を、跡形もなく消すって。」
レンはそう言って、
俺との距離を詰めるように、近付いてきた。
「次は…外さない。」
俺は、覚悟を決めた親友の顔を、じっと見つめ返した。
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