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第三章:来たる日に備えて
初めての勅令
しおりを挟む「くそっ!俺も…覚悟、決めないと…!」
ひとまず、近付いてくるレンから距離をとるため
庭に面した道のそばに建てられた
大きな、板のようなモノの後ろに回り込む。
その板は、
俺がすっぽり隠れられるほど大きくて。
回り込んで、道側から見てみると
この村の案内板…要するに、周辺の地図が書かれていた。
そんな案内板に、身を隠しながら
(俺のチカラで…
まずはあの炎を、何とかしなきゃ…!)
俺は、必死に頭を回転させて、作戦を練る。
(何か…何かないか?……あっ!)
目の前に広がる…この村の、地図。
そこに書かれた、”あるもの”を見て…
「これなら…いけるっ!」
俺が、そうつぶやいた時。
「それで、隠れたつもりか?
もう、俺は手加減しない…ウィンディ!」
すぐ近くまで迫っていたレンが、
また、オーバーのウィンディに声をかけて
そのレンの呼びかけで、
発現したままだった、シードラゴンのウィンディから
『バウゥゥウ!』
さっきと同じ、赤橙色の炎か吐き出された。
その攻撃と、ほぼ同時
「ど~こ狙ってるんだ?
レン、俺はこっちだよ!」
俺は勢いよく、
炎で焼け溶けていく案内板から飛び出した。
そして、すぐ目の前の
ウィンディを従えたままのレンに向かって
「追いかけっこしようぜ!
リビ山では、俺に勝てなかったレン様も…
平地なら、俺に勝てるかもなっ!」
煽るように吐き捨てて。
そのまま、レンの返事は聞かずに
地図で見つけた、”あるもの”を目指して、一目散に駆け出した。
「ふざけんなっ!
リビ山でも…たまには俺様が勝ってただろ!!」
レンは悪態をつきながら、
狙い通り、俺のすぐ後ろを追いかけてきた。
(よし!ついてきた!
地図で見た感じ、そんなに遠くないはず…!)
背後からの攻撃に注意しながら、
地図で覚えた道順を頼りに、目的地まで駆け抜ける。
何人か、村人とすれ違ったけど、
「子どもは朝っぱらから元気だね~。」
そんな声が、聞こえてきた。
(そっか、俺たち…まだまだ子どもじゃん!)
そんな、当たり前のことを考えながら…
「はぁっ…着いたっ!!俺のっ…勝ちだっ!!」
やっと、目的の場所…
”湖”に面した、空き地に到着した。
「お前の方がっ
先に、スタートしたんだからっ…!
勝つのは、当たり前だろっ!!!」
俺もレンも、息を整えながら、対峙する。
「レン、それは違うな…。
俺は…この戦い自体が、
もう、俺の勝ちだって言ったんだ!」
「…っはぁ?なんだ、それ…。」
レンは改めて、周りの様子を確認して
「これ…湖か。
まさかこれで、俺の炎を防ぐつもりか?
水への対策だって、訓練したんだ。
こんな水、かけた位で、俺様の炎は消えねぇよ。」
レンは、ニヤリと笑って、右腕を突き出した。
「いや、ちゃんと消してみせるよ。
湖の水と…俺のチカラで、なっ!」
俺も、レンと同じように、右腕を前に突き出し
直立したレンとは対照的に…
その場に、しゃがみこんで。
湖に、左手を浸ける。
そうして、俺たちは同時に
大きく、息を吸い込んで、
吐き出す空気を、声に換えた。
「勅令するーーウィンディ、焦がし滅せよ。」
「勅令するーーカルラ、繋ぎ与えよ。」
2人の勅令が、ピッタリ重なって、
俺たち以外、誰もいない湖に、響き渡る。
『バゥウウ~!!』
まず、ウィンディが、
今までで1番大きな、赤橙色の炎を、口から吐き出した。
「大きくて遅い分…威力は段違いだ。
防御にも、攻撃にも使えるぜ。
お前の、黒のチカラに対抗して…
…って、あれ?お前、勅令したよな?」
レンが周囲を警戒しながら見回して、
最後は俺に、不思議そうな顔を向ける。
それも…仕方がない。
なぜなら、レンの見つめる先、
俺の周りを、いくら見たって…
発現時に出るモヤも、オーバーも、
何一つ、レンの目には、映ることがないのだから。
(いくら特訓しても、これが限界なんだよ…!)
ここ2ヶ月間の…
ノヴァン大先生との、特訓の日々を思い出す。
『いくら特訓しても…
ヨウのカラーズ、全っ然濃くならないな!
モヤ薄っ!ほんとに出てんのか?ぶはっ!』
『ちょっとっ!笑い事じゃないって!』
『ははっ!はぁ~笑った笑った~。
ま、カラーズやチカラのことなんて
分かってない部分の方が多いんだからさ。
色が薄いから何だってんだ!胸張って発現してけ!』
『発現してけ!って…。
モヤはまだ、百歩譲って出てるから良いけど。
オーバーなんて、薄いどころか…出てないよ?いいの?』
『なぁ~に、オーバーが出なくても
チカラが使えてりゃ、問題なっしんぐーだよ!
俺の勅令放棄だって、
オーバーが出なくても、チカラ、使えてるだろ?』
『た、確かに…。
じゃあ、なんでオーバーってあるんだろ?』
『オーバーは…
たぶん、俺たちをサポートしてくれてんだ。
勅令して、オーバーと一緒に使うチカラと
勅令放棄して、1人で使うチカラと、じゃ
比べた時、チカラの威力が全っ然違うんだよ。
勅令放棄は、オーバーが出ない分、
相手に悟られにくいが…威力は、かなり劣るんだよな~。
ま、勅令放棄は高度な技だから、
俺みたいな天才じゃないと、そもそも使えないけどぉ~。』
『オーバーと一緒の方が、威力が増す…。』
『…冷たいなぁ、ヨウ。先生泣いちゃう…。
まぁ、そーいうことだからっ!
勅令してオーバーが出なくても、
今のヨウは、充分チカラが使えてるし!
ひとまずは、問題無いだろってこと。』
『そっか…。
でも、いつかは俺も…オーバーと一緒に、戦えるかな?』
『んなこと心配すんなって~。
勅令で、名前まで分かってんだろ?
今はまだ、
アオバの方がカラーズの扱いが上だから、
主導権、握られてるけど。
ちゃんとチカラを使っていけば、大丈夫だよ。
誰のものでもない、
お前自身の、カラーズなんだから。
自信満々に、どんどん勅令していけ!なっ?』
あの時の、まさに
”自信が服を着てる”大先生の笑顔を思い出して…。
(そうだ…俺自身のカラーズで、チカラを使うんだ!)
「レン!
何度も言うけど…俺は、黒の悪魔じゃない!
黒のチカラなんて、使えないんだ。
俺のカラーズは…見えない位に薄い、”禁色”の深紅だっ!」
そう言って、湖に浸けた左腕と、
突き出した右腕に、再度、意識を集中させる。
「お前が…”禁色”だって?
黒の悪魔が、そんなわけっ…!」
「驚いてる間に…
その炎、消させてもらうなっ!」
俺がそう言うのと同時に、
レンから俺に向けて、
ゆっくりと放たれていた赤橙色の炎は
ーーージュウゥゥウ!
空気中で大きな音を立てて、蒸発していった。
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