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第三章:来たる日に備えて
師弟と兄弟の絆
しおりを挟む「…ってわけなんだ。
あっちで、シオンも戦ってる。
急いで戻らないと…
いくら、レンがここにいるからって、
決着がついたら、
派手男だけで、シオンを連れて行くかもしれない。」
俺は、久しぶりに出てきたアオ兄に、
今の状況を、簡単に説明して。
黙って聞いていたアオ兄は、
俺の話が終わるのと同時に、
とまっていた俺の肩から、空中に飛び出した。
『んじゃ、サクッと…
レンに、ヨウの記憶をプレゼントして
誤解の解けた俺達みんなで、
”禁色”のシオンを、助けに行くか!』
空中を羽ばたくアオ兄が、
元気よく、俺たちに提案をして
「記憶…。
でも俺、アオ君に会えたし、もう…。」
レンは、アオ兄の提案を
首を振って、やんわりと断った。
『レン…お前が
ヨウを信じてくれたのは嬉しいよ。
でもなぁ、俺
そんなお前のこと、ちょぴーっと心配だなぁ。』
「心配…?」
『そー!
だって、お前、俺の存在だけで
ヨウのことも丸ごと、信じるって言ってんだろ?』
アオ兄は、空中から舞い降りて
レンの肩にとまって、話し続ける。
『”信じられる人を信じる”のは、良いことだ。
でもな、信じる”だけ”じゃ、ダメなんだよ。
レンはあの日、
信じられる人、ブレイズのことを信じて
今日まで、
ヨウが黒の悪魔だって、疑わなかったんだろ?
誰かを信じる”だけ”でいるのは、
自分で考えなくていいから…気楽、だよな。
でもそれって、すごーく危ないことなんだよ。』
「自分で、考えなくていい…。
確かに俺、あの日から、自分では、何も…
何も、考えたくなかったのかもしれない。」
レンは、肩にとまるアオ兄を見つめて
ポツリとつぶやいた。
『だからさ、今ここで、
ただ俺を信じる”だけ”じゃ、あの日の、繰り返しなんだ。
これからの人生
大事な選択を迫られる時が…たぶん、レンにもくる。
そんな時、ただ、誰かを信じる”だけ”じゃなくて
自分で見て、考えて、答えを出せる人間になってほしいんだよ。
自分の答えに、自信持ってさ!
胸張って行動できるやつに…レン様なら、なれるよ。』
「アオ兄…。」
アオ兄の言うことは、
近くで聞いていた俺にも、そのまま突き刺さった。
(誰かの意見に流されるんじゃなくて、自分で…。)
「アオ君の…言う通りだな!
分かった!俺に記憶、飛ばしてくれよ。
自分の目で見て、
あの日のこと…しっかり、受け止めるから。」
『おうっ!
それでこそ、俺の一番弟子だなっ!』
アオ兄は、まるで頭を撫でるように
レンの頭の上を、クルクルと旋回した。
「へへっ!」
レンも、飛び回るアオ兄を見上げて、
嬉しそうに笑った。
「…。チカラ使うの、俺だけどな!」
師弟関係の、アオ兄とレン。
その2人だけの絆が、少し羨ましくて
俺は、ちょっと割り込むような感じで声をかけた。
「はいはい、ヨウのチカラヨウのチカラ。
それじゃあ、よろしく~。」
レンに、
手をヒラヒラしながら、軽めに言われて
「レン…急に俺様キャラに戻ったな。」
俺は、何にかは分からないけど、
負けるもんかと、言い返した。
そんな俺のムスッとした態度に、
レンも、つられたみたいに不機嫌になっていく。
「はぁ?
ずっとこんな感じだっただろ!」
「…さっきまで
泣きそうな顔してたくせに…っ。」
「おい、何かボソボソ聞こえてきたんだけど?
ったく、お前は相変わらず根暗だなぁ、ヨウ。
無理して”俺”とか使って…頑張っちゃってサ。」
「無理も頑張ってもないっ!!!」
『はいはいっ!
久しぶりの痴話喧嘩はその辺にして~。
シオンのとこ、急いで行くんだろ?』
「はっ!!そうだ、シオン!!」
俺は、さっき庭で聞いた、
シオンの、らしくない大きな声を思い出す。
「急ごう!
じゃあ、レン…記憶、飛ばすよ。」
俺は、改めてレンに向き合って。
(やったこと、ないけど…いける、よな…。)
少し、緊張してるらしい
張り詰めた自分の身体に、意識を向ける。
そんな時
『大丈夫。
兄ちゃんと、一緒にやるんだ。
絶対に、上手くいくよ。』
肩に戻ってきたアオ兄に、
耳元で、そっと声をかけられて。
身体が、フッと楽になっていくのを感じた。
「うん、アオ兄と一緒なら…!
勅令するーーカルラ、繋ぎ与えよ。」
左手を胸に当てて
右手は、
大きく広げた手のひらを
レンに向けて、まっすぐに突き出す。
アオ兄は、俺の右肩にとまったまま、動かない。
(あの日、見て感じたこと…その、一部を…。)
自分の中で、飛ばしたい場面を…
ゆっくりと、イメージして…
(それを、左手から、右手に…)
そうやって
右手から、レンに向けて
記憶を放つイメージをした、その瞬間
ーーバサァ。
いつも出ている
薄深紅色の球体ではなくて…
…球体の代わりみたいに、アオ兄が。
翼を大きく広げて
レンへ向かって、飛んでいった。
「アオ兄、いけぇっ!」
俺が声をかけて、
それに、応えるみたいに。
アオ兄が、レンの肩へ
フワリと着地し、その肩に、触れる瞬間…
ーードサッ!!!
『イッテっ!!!』
アオ兄は、
横から飛んできた”何か”に叩き落とされ、
そのまま、痛がるように地面に転がった。
「アオ兄っ!?」
「アオ君っ!!」
俺もレンも、
目の前で突然起きた出来事に驚いて
それ以上、言葉が出ないでいた、その時…
「おいおい。
俺の可愛い部下をイジメるなんて…
いくら子どもとはいえ、感心しないな。」
そう言って、遠くから歩いてくる男…
大柄で…歳は、30代後半くらいか?
茶色の髪とヒゲを無造作に生やしていて、それに…
(真っ白の、隊服…!まさか…!)
俺が状況を理解しようとした、まさにその時
「ガイ・ニジィール隊長…っ!!」
レンが、
少しずつ大きくなっていく、
こちらに向かってくる男の名前を
大きな声で叫んだ。
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