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第三章:来たる日に備えて
正々堂々とは
しおりを挟む「お~、やっと出てきたな。
感心感心っと。」
派手男は軽く拍手をして
目の前に立つ俺に、ニヤリと笑いかけた。
「さぁーて
さっさと決着つけようぜ。
ダラダラすんの、嫌いなんだわ、俺。」
俺は冷静に、派手男の付箋を読む。
【こいつを連れて、早く本部へ】
【新人のやつ、どこで戦ってんだ?】
【こいつ、他にもチカラが…?】
「いや...
お前はもう、チカラ、出し切ってるよな?」
俺が付箋を読んでいることは
俺の視線から、
派手男にはお見通しだったらしく。
心の声でも、俺に話しかけてくる。
【あるなら、とっくに使ってるはずだし】
【さっきの消えたチカラ、初めて使っただろ?】
「発現者ってだけでも珍しーんだ。
その発現者の中で、
チカラを複数持てるヤツは、稀(まれ)だ。
こんな田舎の村のガキが、
2つチカラを持ってるってだけでありえねー。
3つ目なんて、絶対ねーよな?」
【ま、これで、お互いチカラは見せ合った】
【あとは...正々堂々、だろ?】
派手男が話すのと同時に、
降り積もるように舞う、薄紫色の付箋たち。
派手男は、心の声までおしゃべりだ。
「そうだ。
実体ごと消えるチカラ...
俺はさっき、初めて発現させた。」
俺はおもむろに、左腕を前に突き出す。
「勅令自体が、初めてだった。
今までは、勅令ナシで、
透明にしか、なったことがなかった。
それで、お前の言う通り…
チカラも、
”心を読む”、”消える”、この2つだけだ。」
俺は、突き出した左腕を見つめながら
派手男に、説明をするようでいて、
状況を声に出し、
自分自身、もう一度整理して、よく考える。
(ただし…”消える”チカラは、
もっと、使い道がある…はず。)
「おー、なんかやけに素直だな。
なーに企んでんだ?」
派手男は笑いながら、
ニヤニヤと、俺に疑いの視線を向ける。
俺は、その視線をまっすぐ受け止めて、
意を決して、ハッキリと言った。
「正々堂々、決着をつけよう。」
「いーねぇ!
お前も持久戦より、
サクッと決まる方が好みか。」
派手男は嬉しそうに話を続ける。
「んじゃ、
どっからでもかかってこい。
俺はもちろん、
見えないほど細い紐で、周囲を囲っている。
お前は、どうせ消えんだろ?
消えて、俺にギリギリまで近付いて…
まー、それしかチカラが無いらしいし?
でも!
俺に攻撃するには、
チカラを解いて、実体を戻す必要がある。
つまり!勝負は一瞬!
お前が、俺を気絶させるのが先か。
俺が、紐で拘束するのが先か。
正々堂々、スピード勝負といこーぜ。」
【俺の紐の感度・スピードは完璧だ】
【どこから来ようが、
お前に実体が戻った瞬間、拘束できる】
【それに…チカラも無い生身で、
俺を一瞬で気絶させるなんて、不可能だ】
【もたついてる間に、縛り上げて気絶させる】
表情も、付箋も
派手男は、自信で溢れているみたいだった。
(派手男の言う通り…
普通にやったら、確実に負ける。
一か八か…やるしかない。)
俺は、表情を変えずに応える。
「正々堂々、な。」
(付箋に隠し事はできない。
派手男は、隠れて作戦を練ってない。
…俺、みたいに。)
「勅令するーールナ、忍び漂え。」
「勅令するーーナナ、滑り寄れ。」
俺たちは、同時に、勅令した。
周囲を、
お互い身体から出たモヤと、静寂が包み込む。
「さーて…どっから来る?
やっぱ定番の、死角からかー?」
俺の姿が見えなくなった派手男は
周囲を見渡しながら、大きな声で話しかけていた。
そんな声を、遠くに聞きながら…
(たぶん、この辺に…。)
俺は、庭の隅、
小さな物置の中に、
消えた状態で、滑り込んでいた。
(よし、あった…!)
そこに置いてあった
”目的のモノ”に、手を伸ばす。
ーーすかっ。
(やっぱり…触れない、か。)
俺は今、実体がないから、
もちろん、触れることは、できない。
(でも、俺の考えが…正しければ…。)
俺は、ゆっくりと深呼吸をして
もう一度、置いてある”モノ”に、手を伸ばす。
ーーがしっ。
(よし!触れた!!
やっぱり、俺の考えは正しかった!)
そう、俺の考えた作戦は…
俺自身だけじゃなく、”モノ”も、消すこと。
勅令もさっきが初めてで、
モノが消せるのか、
もちろん、やったことはなかったけど。
俺には、勝算があった。
なぜなら…
(俺の服だって、靴だって、消えてるんだから。)
そう、俺の身につけているモノは、
俺自身と同じように消えているから。
この物置にある、”目的のモノ”も、
触れて、(俺の一部だ)って思えば…
服や靴のように、消せるって思ったんだ。
(でも、この感じ…
実体が消える、というより、
俺もモノも、現実に存在するけど
すべてが、透過していく感じだ。)
俺が、触れることができるようになった
”目的のモノ”は
俺が触れた代わりに、
置いてあった木の箱をすり抜けて、
”1番下の部分”は、地面に滑り落ちた。
(あとは…
”これ”を使って、一か八か…。
…正々堂々、罠をはろう。)
「くっそ!
持久戦が嫌だからって言ったのに、
ふざけてんのか?
いい加減来いよ!
俺がイライラして
集中途切れるの待ってんならさー…
もう充分成功してるっつーの!」
物置を出て、庭に戻った時
派手男は、
実際は近くにはいない俺に向かって
イライラと、まくし立てるように話をしていた。
(うん、いい感じに怒ってるな。)
俺は、実体の消えたまま
素早く、物置から取ってきた”モノ”を
これも、もちろん消したまま、
慎重に、作戦通りにセッティングをする。
(完璧だ。これなら、いける…!)
「おい!聞いてんだろ!?
まさか、家族を置いて、逃げてねーよな?
おっさんの息の根、止めてやってもいーんだぞ!」
派手男のイライラも、限界まできているようで。
(叔父さんは…俺が守る!)
俺は、覚悟を決めて。
消えるチカラを、解いた。
作戦通り…
…派手男から、少し離れた場所で…。
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