黒の悪魔が死ぬまで。

曖 みいあ

文字の大きさ
66 / 72
第三章:来たる日に備えて

決着と開戦

しおりを挟む




チカラを解除した瞬間、俺は




「そぉれっ!!!」



”いつも使ってる時の掛け声”と共に



思いっきり、

掴んでいた”あるモノ”を、

できる限り上へと、引っ張り上げた。




ーーヒュン!!!



チカラを解いたので、

俺と同じく
いきなり実体があらわれた”あるモノ”。



派手男は、
たぶん予想だにしていなかっただろう。



”あるモノ”は、

ヤツの足元から、一気にその身体に迫り…




「来たなっ…うぐぅ!!」



派手男を、一気に拘束して。



地面に転がった派手男は、

変なうめき声をあげた。






(成功したっ…!)



「っ…なん、だ。これ…っ!」



派手男は恨めしそうに

自分を締め付ける”あるモノ”を睨みつける。



「お前、自分自身だけじゃなくて…

”モノ”まで、消せんのかよっ!!」




そう、

派手男に睨まれている”あるモノ”とは…


…俺が愛用している、”魚を捕る投網”で。






今回の作戦は、こうだった。



まず俺は、小屋で

愛用の、川魚を捕る投網を触る。



普段愛用してるから、
何とか、(自分の一部)だと思って

服や靴のように、消すことが出来た。



そして実体のなくなった俺と投網は


派手男に近づき、
実体を消したまま、投網を


派手男の足元…

つまり、地面に。広げてセッティングした。




この投網は、

持ち手の紐を引っ張れば、
その網の口が閉まり、魚が逃げられなくなる…


そんな、魚を追い詰めて

捕獲するタイプのもので。



「絡まって、動けねーっ!」



今まさに、俺が引っ張ることで

投網の出口は閉まり、


派手男は、成人男性には窮屈な

その狭い投網の中で、もがいていた。





(このまま、締め上げる…!)



俺は、

地面に転がった派手男を睨みながら


手の力を緩めず、
さらにキツく引っ張り上げた。




「イテテ!ったく…!」


派手男は、相変わらず

変なうめき声をあげている。



あげてはいる、けど…


(気絶までは…程遠い、かっ!)




派手男をよく見ると…


その瞳は、黄色く

派手に、輝いたままで。



「いくら足元に、
いきなり出てきたからって…


こっちだって警戒して

ナナの紐、張り巡らせてたんだぜ?


実体が戻った瞬間…

俺のナナの紐に、触れた瞬間


この網にも反応して、
ちゃんと絡まってんだよ。」



派手男の言う通り…


よく見ると、派手男を守るように


ヤツの身体には、黄色の紐が、

身体と網との間に、
ガードするように、割って入っていて。




黄色の紐は
俺が投網を締め上げるごとに、



網に抵抗し、派手男を守るため

太く、柔らかく変化しているようだった。





「それに、防御だけじゃねー…

この距離なら、お前にも、届くぜっ!」





ーーヒュン!!



「ぐっ!!」


俺は、勢いよく飛んできた

1本の黄色の紐に絡め取られて。




派手男のすぐ近くで

ヤツと同じように、地面に転がった。




「んじゃー

さっさと気絶しろっ!!

消えんじゃねーぞっ!!」



派手男は、

また、俺に消えられる前に
一気に絞め落とすつもりなんだろう。


黄色の紐が、容赦なく、
ギリギリと、身体に食い込んでいく。




「くっ…!」



苦しくて、無意識に

喉から、悲痛な音が出た。



(またっ…消える、か…?

でも、同じ手は、もう使えない…っ!)



苦しくて、
冷静に考えるのが、難しくなってきた。



でも、俺は…


(消えたら、この網も、掴めなくなる。

この網だけは…離したく、ない…!)



俺は、握りしめる投網を

できる限りの力で、引っ張り上げた。





「ぐえっ!

まだこんな力が残ってんのか…


じゃ、何で消えねーんだ?

やっぱこいつ、無口だし、意味分かんねー。


まっ、俺は助かるから良いけど。

ほーら、いい加減、諦めろっ…!」




派手男の、高揚した声と同時に

黄色の紐の圧が、さらに強まっていく。





(っ…ここまで、か…。


叔父さん、ごめんなさい…。)



俺は、薄れていく意識の中で、



最後にもう一度だけ、
掴んだ網に、力をこめた。



網全体を締め上げる力は、
もちろん、残っていなかったけど。




(気絶しても…この網だけは…。

ギリギリまで、俺、諦めたくない…。)






そんな時…




「その状態で、手を離さないなんて…

アナタは、強い人ですネ。」




すぐ近くで、

聞いたことのない声が、聞こえた。





ーードカァ!!



「…!」


「ぐはぁっ!!」



一瞬の出来事で、


俺は、目の前で起こった事を

すぐには、理解できなかった。




だた、目の前で…

俺の網に絡まっていた派手男が


若い男…俺より、少し歳上だろうか?



その男に、
空高く、蹴り上げられたのは、分かった。







蹴り上げられたのと同時に、

俺に絡まっていた、黄色の紐が解除されて



「大丈夫ですカ?

アナタが拘束してくれていたおかげで、

とても上手に蹴りを入れられマシタ!」



突然現れた若い男は、

横たわる俺に近付き、
満面の笑みで、声をかけてきた。



「ゲホゲホっ!

はぁはぁ…あなたは、一体…?」



俺は、苦しかった呼吸を整えながら


初めてみる男の顔を、改めて、
下から覗き込んむように見つめて


頭に浮かんだ疑問を、そのまま口にしていた。





そこに…



「なーに、

お得意のチカラで、”読めば”いいんだよっ。」




次は、聞いたことのある声…




「…。」


「…あれっ!?俺は無視なのっ!?」



背後から現れたのは、

昨日の夜、突然家に入ってきた…


自称、近所に引っ越してきた人。




もちろんあの時、俺は

怪しい、自称隣人の付箋を、しっかり読んでいた。


本当は、知っている。この人は…




「ブラックアビスの、隊長…。」



「ピンポーン!

やっぱ”読んで”分かってたか。

優秀優秀~!」



彼は、楽しそうにそう言って、



まだ地面にお尻をついたまま

動けないでいる俺の、隣に立って



「よく頑張ったな。


あとは…

あいつに、バトンタッチだ。」



嬉しそうに、

俺の頭を、ガシガシと撫でできた。




「あいつ…。」


「そ。まぁ”読みながら”応援してやってよ。


お前と同じ…

”禁色”のカラーズ持ち、だからさ。」




(俺と、同じ…?)





蹴り上げられた派手男が、

網から抜け出し、ゆっくりと立ち上がる。




その前に立ちはだかる、若い男。



「さっきは、不意打ちで失礼しましタ!


次は、正々堂々、いきまショウ!」


若い男は、礼儀正しくお辞儀をして

笑顔のまま、派手男に向かって、声をかけた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...