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第三章:来たる日に備えて
派手男vsシオンとヤマト、決着
しおりを挟む「いい加減、決着といこーぜ。」
離れた所にいた派手男も、
俺たちの本気の空気を感じたのか
こちらを見て、笑いながら近付いてくる。
笑いながらでも…その目は、本気だった。
「さっきの攻撃でも
まだ、本気ではなかったんですネ…!
でも、こちらも
今度こそ2人で、本気でいきますヨっ!」
そう言って
ヤマトは俺に、背中を向けて
「さあ!シオン、
一緒に、叔父さんを守りまショウ。」
膝をついて、俺に乗るように促した。
「…うん。一緒に…!」
俺はまた、
ヤマトにおんぶしてもらい。
そして、背中から
小声で、早口で話しかける。
「確認だけど、
俺は、手のひらから、
ヤマトに、チカラを伝え続けるから。
それで常に、ヤマトにも付箋が見えるはず。
そして、消えるチカラは2種類。
まず1つ目は、消えても、実体はあるチカラ。
これは、勅令がいらないから、相手の不意をつける。
ヤマトのタイミングで、使いたい時は…
じゃあ…俺の腕を叩いてくれたらいい。
そして2つ目の、
さっき使った、実体ごと消えるチカラ。
これには勅令がいるから…相手の不意は、つけない。
俺が勅令した瞬間、
派手男はすぐに、身を守ると思う。
でも、実体も気配も消えるから、
どうしても避けきれない攻撃が来た時は、有効かも。
使いたい時は、俺の足を叩いてほしい。
こんな感じで…いいかな?」
俺は、一気に話し続けて
最後に、心配になってヤマトに確認した。
「ハイっ!よく分かりマシタ!
武術家の僕と、発現者のシオン
2人で戦えば、必ず勝てますヨ!
シオンは頭も良いデス。
客観的に見て、
チカラを使ったほうが良いと思ったら
僕の合図が無くても
積極的に、チカラ、使ってくださいネ。」
そう言って、ヤマトは俺に笑いかけた後
「では…行きますヨっ!」
勢いよく、派手男に向かって駆け出した。
「またおんぶか?ったく、つまんねーな。
お前らの相手も飽きてきたから
そろそろ本気で終わらせるわ。
勅令するーーナナ、滑り寄れ!」
ーードンッ!!
派手男の言葉通り、
本気の勅令で
今までにない、爆発のような音が。
それと同時に
今まで以上に激しく動き回る、黄色の紐が5本
ものすごい勢いで、俺たちに向かって突っ込んできた。
【全方向から、一気に決めてやる。】
派手男の考えは、ちゃんと付箋で読めたから。
「全方向から!」
俺は一応、目に入ってきた文字を読み上げる。
でも
「ヤアッ!」
俺の言葉より速く。
ヤマトの身体は、
5本の紐を避けるために動いていて。
(よし…!
付箋、ヤマトも読めてる…!)
ヤマトは、俺の指示などなくても
ちゃんと派手男の考えを読んでいるようで
向かってくる紐を避けるために、
少し遠くに
生えていた大きな木の枝を掴んで、
思いっきり、空中へ飛び上がった。
ーーグシャ!!
ギリギリで回避した5本の紐は、
空中で、お互いが綺麗にぶつかった。
「相変わらず…いい動きだなっ!」
【シオンが、付箋で読んでんだろーな…。】
【それにしても、さっきより…動きが良い。】
【ま…背中のシオンから狙うか。】
「ヤ、ヤマトっ!」
俺は、派手男の付箋に少し焦って
ヤマトに声をかけたが
「心配しないで。大丈夫デスっ!」
自信ありげなヤマトに、すぐに遮られた。
掴まっていた木から降りたヤマトは
そのまま一直線に、派手男の方に突進する。
そして
ーポンっ。
俺の腕が、軽く叩かれた。
(合図だ!
付箋から…消えるチカラに、チェンジ!)
俺は、軽く目を閉じて
チカラの入れ替えに、集中した。
「ちっ!消えた…!
こいつ、
勅令放棄でも消えるんだったな…っ!」
派手男はそう言うと
俺たちの近くに居た紐を
急いで自分の周りに戻し。
戻ってきた紐たちの間に
身を隠すように潜り込み、その中心で警戒態勢をとる。
(くそっ!
さすがに…
消えることへの対応が、速い…!)
5本の紐は、
ものすごいスピードで
派手男の周りに戻り、クネクネと動き回る。
俺の目には、鉄壁の守りに思えた。
でも…
(いや…ヤマトの方が、速いっ!!)
消えるチカラを使っているから
紐の動きは、予測できないはずなのに。
ヤマトはまるで、動きを読んでいるかのように
暴れまわる5本の紐の隙間を、
正確に、紐に当たることなくすり抜けていく。
派手男の周りを、紐が、完全に覆う前に
(間に合う…!)
ーードゴッ!!
「入っタ!」
「ぐぁっ!!!」
派手男の顎に、一撃。
ヤマトの蹴り上げた右足が
見事に入って。
派手男は、
思いっきり後ろに吹き飛んだ。
「ヤマト、ナイスっ!」
「ハイっ!」
俺の歓声に
ヤマトは、嬉しそうに返事をして。
「シオンのチカラのお陰で、
落ち着いて近づけマシタ!
ではシオン、
次は心の声を読むチカラにしまショウ。」
最後は冷静に、
俺にチカラの変更を告げた。
「あ、うんっ。」
(さすが、ヤマトは戦い慣れてる…!)
「付箋のチカラに、チェンジ…。」
そうつぶやきながら、チカラの変更に集中する。
(まだ、戦闘中だったのに…。)
気を抜いてしまった自分が、恥ずかしかった。
【シオンが恥ずかしがることなんて、無いヨ。】
チカラを変更したから、ヤマトの付箋が読めた。
ヤマトは何も言わず
派手男を警戒しつつも、笑顔で俺を振り返った。
(やっぱり…
付箋を読まれるのって、慣れないな。)
そんな感じで、
お互いの付箋が読めることを確認して。
吹き飛んで倒れている派手男に
警戒しながら、近付いていく。
「気絶…していますネ。
付箋、出てきませんヨ。」
「…そうみたい。」
心の声は、嘘はつけないから。
付箋が出ていないということは、
派手男は、思考していないってことになる。
「やりましタ!
2人で、勝ちましたネ!」
ヤマトは俺を背中から降ろし
やっと警戒を解いた様子で
明るくハイタッチを求めてきた。
「うん、勝ったね。」
俺は、人生で初めて、ハイタッチを返す。
(勝った…。
でも、何かが…引っかかる。)
俺は一人、考える。
付箋が出ないのだから、
確実に、派手男は意識を失っている。
(だけど…。)
そんな俺のモヤモヤをよそに
「今のうちに、縛っておきましょうカ!」
ヤマトは、
倒れている派手男に近付いていく。
その背中を見て…
(あっ!もしかしたら…!)
ーーガシッ!!
「わァっ!シ、シオン?!」
スタスタと歩いていくヤマトに
急いで駆け寄って、腕を掴み
「勅令するーールナ、忍び漂え!」
勢いよく、勅令した。
まさに、その瞬間。
手が届きそうなほどの距離まで
いつの間にか近付いていた、派手男の周りから
ーービュンビュン!!!
黄色の紐が飛び出し、無差別に暴れまわった。
「うわァ!」
「やっぱり!!」
俺たちの透けた身体を
黄色の紐が、勢いよく通り抜ける。
そして、数秒後。
黄色の紐は、
周りの地面をズタズタにして
ゆっくりと、消えていった。
「間に合って、良かった…。」
俺はホッとして、その場にへたり込む。
そのすぐ横で
ヤマトは興奮を隠さずに、俺に問いかけた。
「シオンにも紐にも、ビックリですヨ!
一体何が起きたんですカ?」
俺は、チカラを解除して
付箋が見えるチカラにチェンジして。
派手男を警戒しながら、ヤマトの質問に答える。
「派手男は…頭の良いやつだから。
俺の消えるチカラに対して…
何か、不意打ちを食らった時のために
策や罠をしかけてるんじゃないかって、思ったんだ。
じゃあそれが…どんな策かって、考えた時
さっき戦った時の、時間差攻撃を思い出した。
1回の勅令で
巨大な紐と、時間差の細い紐の攻撃を仕掛けてた。
だから今回も、もしかしたら…
今は気絶してるけど、
時間差攻撃を、すでに仕込んでるかもって。」
「時間差攻撃…確かに!
さすがシオンですネ!
やっぱり、頭が良いデス!」
ヤマトは目をキラキラさせて、俺を褒めてくれた。
「ずっとヤマトに守られてたから…
最後は俺もヤマトを守れて、本当に良かった。」
「ふふっ。
本当に”2人で”、勝ちましたネ!」
「そうだね。」
俺たちは、自然と笑い合って。
”2人”の勝利を祝うように
改めて、小さくハイタッチを交わした。
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