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21.出陣
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「ユウく~ん! テレビ見た?」
「え? 見てないけど何かあった?」
俺たちが情報を公開した翌日、サリナが俺の家に来た。
最近、ほとんど毎日のように来ている気がするが、俺としてもサリナと一緒にいると楽しいことばかりなので嬉しい。
それにしても、そんなに慌ててどうしたんだろう。
俺はリモコンを手に取り、テレビの電源をつける。
すると、そこでは昨日の俺たちの公開した動画がニュース番組に取り上げられていた。
「凄くない?!」
「まさかテレビでも取り上げてもらえるなんてな。ネットニュースに取り上げてもらえたらいいなぁくらいにしか思ってなかったのに」
「私も今日テレビつけたら昨日の動画が取り上げられてて腰抜かしそうになったよ」
これは、深層のバケモノの討伐に多くの人が参加してくれそうだ。
俺とサリナも気合入れなきゃな。
「そういえば、明後日だよね? あの魔物の討伐に行くのって」
「そうだよ。俺の予想だけど、テレビにも取り上げてもらえたお陰で多くの人が集まってくれるはずだよ」
「だよね。私たちも頑張ろうね。絶対に倒して生き残ろうね」
「ああ、絶対にな」
サリナも俺と同じで気合十分のようだ。
そういえば、深層のバケモノの討伐に行く時は、配信をした方がいいのだろうか。
配信をしていれば倒しきれなくて後退した際に、対策が立てやすくなるはずだ。
俺が悩んでいると、サリナが不思議そうな表情で俺の顔を覗き込んでくる。
「どうしたのユウくん?」
「明後日深層に行く時って配信しながらの方がいいのかな? と思ってさ」
「あー、たしかに配信していた方が情報は取りやすいよね」
「そうなんだよね。サリナはどっちがいいと思う?」
「私は配信したいなぁ。視聴者の人たちも私たちが配信するのを待ってるかもしれないからね!」
「そうだよな。それじゃあ、明後日は配信しようか」
「うんっ! ありがとう!」
俺とサリナは明後日の深層に行く際に配信をしながら行くことを決めた。
よく考えてみれば、俺たちはダンジョン配信者なのだから配信をしないでどうするんだって話だよな。サリナの言う通り俺たちには配信を楽しみに待ってくれている視聴者の人たちもいるんだ。
配信をやらないわけにはいかないだろう。
それに、深層のバケモノに挑む配信は視聴者たちからすれば、心配と同時に高揚感も高まることだろう。
*****
二日後の午前八時五十分。
俺とサリナはダンジョンの前に立っていた。
……いや、俺たちだけではない。
大勢の冒険者やダンジョン配信者たちが真剣な表情でその時を待っていた。
空気が重い。
当り前だ。これから行く場所は何が起きてもおかしくない場所だ。それに、元々深層に生息していた魔物たちが逃げ出すほどのバケモノがそこにはいるのだ。
命がかかる場面も出てくるかもしれない。
そんな中、談笑していられるはずもない。
ここに集まっているのは覚悟を決めた勇気のある者たちだけだ。
「もうすぐだな」
「そうだね。ユウくんは大丈夫?」
「ああ、俺は大丈夫だよ。サリナは?」
「ユウくんと一緒なら何も怖くないよ」
「俺もサリナと一緒なら何とかなるような気がする」
九時になると、ダンジョンの前で一人の男が大きな声を上げる。
『みんな! 準備はいいかぁぁああああ!』
『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』』』
その声に合わせて周りも雄叫びを上げる。
皆、気合十分のようだ。
大きな声を上げていた男が先頭に立ち、ダンジョンに足を踏み入れる。
それに続くようにして俺たちや他の人たちも足を進める。
俺たちも配信を開始させ、他の人たちに続いて行く。
いよいよ、始まるのだ。
俺たちの戦いが!
『うおりゃぁあああああ!』
『くらえぇぇっ!』
『クキャァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
ダンジョンの中をすすで行くと前の方から魔物と戦う音と、魔物の叫び声が聞こえてくるが、聞こえてくる感じからしてこちら側が圧倒しているようだ。
やはり、人数が多いとそれだけで大きな戦力になるな。
前を歩く人たちが先に魔物と戦い、少し疲れてきたら後ろに下がり体力を休める。
そうすることで俺たちは皆、力を残した状態でダンジョンの深くへと進んでいくことができる。
こうして俺たちは次々と現れる魔物を倒していった。
深層から逃げてきたであろう魔物を倒すのは少し時間を要したが、それでもこの人数のお陰で負傷者を出すことなく進むことができた。
「みんなで協力するとすんなりと進めるね」
「そうだな。それに、強い人が多いみたいだからね」
「私たちも役に立ててるかな?」
「ああ、もちろんだよ」
俺とサリナは多くの人が集まってくれて本当に良かったと改めて感じた。
あの情報を公開した意味があったのだと再確認することができた。
その後も次々と魔物を倒していたのだが、急に魔物が現れなくなり始めた。
「これって……」
「もう、着くな」
そう。急に魔物が現れなくなったのは、ここが深層のすぐ近くだからだ。
先頭を進む人たちもそれに気づいたようで、先ほどよりもさらに空気がひりつく。
『さあ、もうすぐ深層だ! あのバケモノがいるとされる場所だ! ここからは、今までの比ではないくらいに大変な戦いになる! それでも戦う意思のあるやつは俺に続けぇぇぇええええええええええええ!!!』
『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』』』
俺たちは一斉に深層へと足を踏み入れた。
「え? 見てないけど何かあった?」
俺たちが情報を公開した翌日、サリナが俺の家に来た。
最近、ほとんど毎日のように来ている気がするが、俺としてもサリナと一緒にいると楽しいことばかりなので嬉しい。
それにしても、そんなに慌ててどうしたんだろう。
俺はリモコンを手に取り、テレビの電源をつける。
すると、そこでは昨日の俺たちの公開した動画がニュース番組に取り上げられていた。
「凄くない?!」
「まさかテレビでも取り上げてもらえるなんてな。ネットニュースに取り上げてもらえたらいいなぁくらいにしか思ってなかったのに」
「私も今日テレビつけたら昨日の動画が取り上げられてて腰抜かしそうになったよ」
これは、深層のバケモノの討伐に多くの人が参加してくれそうだ。
俺とサリナも気合入れなきゃな。
「そういえば、明後日だよね? あの魔物の討伐に行くのって」
「そうだよ。俺の予想だけど、テレビにも取り上げてもらえたお陰で多くの人が集まってくれるはずだよ」
「だよね。私たちも頑張ろうね。絶対に倒して生き残ろうね」
「ああ、絶対にな」
サリナも俺と同じで気合十分のようだ。
そういえば、深層のバケモノの討伐に行く時は、配信をした方がいいのだろうか。
配信をしていれば倒しきれなくて後退した際に、対策が立てやすくなるはずだ。
俺が悩んでいると、サリナが不思議そうな表情で俺の顔を覗き込んでくる。
「どうしたのユウくん?」
「明後日深層に行く時って配信しながらの方がいいのかな? と思ってさ」
「あー、たしかに配信していた方が情報は取りやすいよね」
「そうなんだよね。サリナはどっちがいいと思う?」
「私は配信したいなぁ。視聴者の人たちも私たちが配信するのを待ってるかもしれないからね!」
「そうだよな。それじゃあ、明後日は配信しようか」
「うんっ! ありがとう!」
俺とサリナは明後日の深層に行く際に配信をしながら行くことを決めた。
よく考えてみれば、俺たちはダンジョン配信者なのだから配信をしないでどうするんだって話だよな。サリナの言う通り俺たちには配信を楽しみに待ってくれている視聴者の人たちもいるんだ。
配信をやらないわけにはいかないだろう。
それに、深層のバケモノに挑む配信は視聴者たちからすれば、心配と同時に高揚感も高まることだろう。
*****
二日後の午前八時五十分。
俺とサリナはダンジョンの前に立っていた。
……いや、俺たちだけではない。
大勢の冒険者やダンジョン配信者たちが真剣な表情でその時を待っていた。
空気が重い。
当り前だ。これから行く場所は何が起きてもおかしくない場所だ。それに、元々深層に生息していた魔物たちが逃げ出すほどのバケモノがそこにはいるのだ。
命がかかる場面も出てくるかもしれない。
そんな中、談笑していられるはずもない。
ここに集まっているのは覚悟を決めた勇気のある者たちだけだ。
「もうすぐだな」
「そうだね。ユウくんは大丈夫?」
「ああ、俺は大丈夫だよ。サリナは?」
「ユウくんと一緒なら何も怖くないよ」
「俺もサリナと一緒なら何とかなるような気がする」
九時になると、ダンジョンの前で一人の男が大きな声を上げる。
『みんな! 準備はいいかぁぁああああ!』
『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』』』
その声に合わせて周りも雄叫びを上げる。
皆、気合十分のようだ。
大きな声を上げていた男が先頭に立ち、ダンジョンに足を踏み入れる。
それに続くようにして俺たちや他の人たちも足を進める。
俺たちも配信を開始させ、他の人たちに続いて行く。
いよいよ、始まるのだ。
俺たちの戦いが!
『うおりゃぁあああああ!』
『くらえぇぇっ!』
『クキャァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
ダンジョンの中をすすで行くと前の方から魔物と戦う音と、魔物の叫び声が聞こえてくるが、聞こえてくる感じからしてこちら側が圧倒しているようだ。
やはり、人数が多いとそれだけで大きな戦力になるな。
前を歩く人たちが先に魔物と戦い、少し疲れてきたら後ろに下がり体力を休める。
そうすることで俺たちは皆、力を残した状態でダンジョンの深くへと進んでいくことができる。
こうして俺たちは次々と現れる魔物を倒していった。
深層から逃げてきたであろう魔物を倒すのは少し時間を要したが、それでもこの人数のお陰で負傷者を出すことなく進むことができた。
「みんなで協力するとすんなりと進めるね」
「そうだな。それに、強い人が多いみたいだからね」
「私たちも役に立ててるかな?」
「ああ、もちろんだよ」
俺とサリナは多くの人が集まってくれて本当に良かったと改めて感じた。
あの情報を公開した意味があったのだと再確認することができた。
その後も次々と魔物を倒していたのだが、急に魔物が現れなくなり始めた。
「これって……」
「もう、着くな」
そう。急に魔物が現れなくなったのは、ここが深層のすぐ近くだからだ。
先頭を進む人たちもそれに気づいたようで、先ほどよりもさらに空気がひりつく。
『さあ、もうすぐ深層だ! あのバケモノがいるとされる場所だ! ここからは、今までの比ではないくらいに大変な戦いになる! それでも戦う意思のあるやつは俺に続けぇぇぇええええええええええええ!!!』
『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』』』
俺たちは一斉に深層へと足を踏み入れた。
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