ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ

文字の大きさ
27 / 47

27.溶ける

しおりを挟む
「よし、うまくいったな」
「ちょっと待って! 何かしようとしてる!」

 地面に落ちたバケモノは俺たちの【重力】によって身動きが取れなくなっているが、口を大きく開き俺たちの方を向いている。
 段々と口元に炎の球体が作り出されていく。

「魔法だな。一旦避けて【重力】をかけ続けたまま背後に回るぞ」
「わかった」

 俺たちは背後に回る。
 バケモノは炎の球体を放つがもう目の前に俺たちはいない。そのため、炎の球体は壁に衝突するだけだった。

 壁に当たった炎の球体はドゴン! と、大きな音を立てた。
 周りに落ちていた木の枝は燃えているようだった。やはり、かなりの威力があるな。
 身動きが取れなくても威力の高い攻撃をつかえるんだな。

 どんな状況でも安心できなさそうだ。

「いくぞ」
「うん!」

 俺とサリナは身動きが取れないバケモノに攻撃を仕掛ける準備を開始する。

 バケモノはずっとジタバタしていて、俺たちの【重力】もどこまで続くか分からない状態だ。もし、【重力】がきれた時に再び飛ばれたら面倒だ。
 翼を切り落としておいた方が良いかもしれないな。

「翼を切り落とすぞ!」
「飛べなくさせるんだね! 分かった!」

 サリナと俺は魔力を武器に流し込み、魔法を唱える。

「【風の銃弾ウィンド・バレット】」
「【風の斬撃ウィンド・スラッシュ】」

 俺はこの魔物は風の魔法を使った方が効果があると思い、使用したがサリナも同じ考えだったようで、風系の魔法を使用した。

 俺の放った銃弾は周りに強風を発生させながらバケモノに直撃する。
 この銃弾はただ撃つのとは違い、銃弾の周りの風は触れれば切れる仕組みになっている。人間が受けたなら確実に腕などが切り落とされるレベルだ。

 そして、サリナの放った斬撃も風を纏いながらバケモノに直撃する。

 俺とサリナ二人の攻撃が当たった瞬間、バケモノの翼から大量の血が噴き出し、翼が切り落とされる。が、同時にバケモノが先ほど以上に暴れだしたので【重力】を使い続けられなくなり、【重力】の魔法は解けてしまう。

『グォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!』

 痛みのせいでバケモノは叫び、飛ぼうとするが片翼を切り落とされているので飛ぶことができないでいた。【重力】は解けてしまったが飛ばないようにするという俺たちの作戦は上手くいったようだ。

「上手くいってる」
「そうだね。でも、油断は禁物だよ」
「ああ、でも空に飛べなくなったから俺たちの攻撃の幅は広がりそうだな」
「そうだね! もう少しだから頑張ろうね!」
「ああ!」

 俺たちの勝利が確実に近づいてきている。
 だが、サリナの言う通り油断は禁物だ。こいつが何をしてくるか分からない。
 予想外の攻撃を仕掛けてくる可能性だって少なくない。

「ん……?」

 先ほどまで叫んでいたバケモノが突然、辺りを見回し始めた。
 何かを探しているのか?

『グォォオ……』

 バケモノが笑った……ようにみえた。
 気のせいだと信じたかったが、バケモノは何か攻撃を仕掛けようとしているようだ。実際に笑っていたのかもしれない。

 辺りを見回したのは、俺たちが他に魔法を仕掛けていないか確認していたのだろう。
 それで、ないことを確信したということだろうな。

 バケモノは二度、ドン、ドン、と地面を足で叩いた。

「何だ……?」
「何をしようとしているんだろう?」
「攻撃を仕掛けてこようとしているのは間違いない」
「気を付けないとね」

 俺たちは攻撃が来ると予想して武器を構えながら敵から視線を逸らさないようにしていたが、次の瞬間驚くべき光景を目にすることとなった。
 俺たちが切り落とした刃でできた翼がどういう原理か分からないが突然溶け始めたのだ。まるで水銀のように。

 恐らく二度地面を叩いたことで魔法を発動させたのだろう。

 溶けた後は何が起こるんだ?

 俺たちは困惑していた。

「少し下がろう」
「うん、どんな攻撃をするか分からないもんね」
「ああ、翼が溶けるなんて思いもしなかった」

 一度、バケモノから距離をとる。
 溶けた翼がモゾモゾと動き出す。

「「!?!?!?」」

 その翼は巨大な棘のような形に変形し、俺たちに向かって飛んでくる。
 俺は慌てて左手で短剣を取り出し、その棘を弾き返す。

 今、短剣を取り出せていなかったら、どうなっていた……?

 考えたくもないな。

 この溶けた翼は棘に変形するのか。
 それとも、どんな形にも変形できるのか。ここにきて、こんな攻撃手段まで隠し持っているとはな。

『グゥァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 棘は再びモゾモゾと動き、次は無数の小さな鳥の形に変形した。
 この鳥の形、見覚えがある。

「危なっ!」
「ユウくんこれって……」
「この鳥の形、クイックバードをモデルにしたものだろう」
「だから早いんだね。でも、今の私たちなら大丈夫だよね」
「もちろんだ」

 俺たちは翼を切り落とす前のバケモノの速さにも対応できていたのだ。
 つまり、今はクイックバードの速さくらいなら軽々と反撃することができるはずだ。

 俺とサリナはどの方向から攻撃が来ても大丈夫なようにお互いの背中をくっ付けた。
 これぞ相棒という感じがする。

「それじゃあ、いくぞ!」
「うんっ!」

 俺たちは武器を構えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...