41 / 47
41.自信に満ち溢れている犯人
しおりを挟む
「おまえ、名前も年齢も答えるとか、怖くないのか?」
爆破事件の犯人であるリックに自分の情報を答えることに恐怖は感じないのか聞いてみた。
リックはニヤリと再び笑みを浮かべて、俺の問いに答える。
「怖い? なんで? 個人情報がバレたところで誰かが俺を倒せなければ意味ないんだし、怖がる必要なんてないじゃん」
「まるで、俺たちじゃお前に勝てないって言ってるように聞こえるな」
「あははっ! そう言ってるんだよ! でも、少しくらいは楽しませてほしいけどね」
こいつはどこまで俺たちを嘲笑っているつもりだ。
どんだけ自分の力に自信があるんだ。
名前も年齢も答えたのは、やはり誰にも自分を止めることができないと確信しているからだったな。
だが、その油断を後悔させる。それが、ここにいる俺たちの役目だ。
それにしても、本当によく笑うやつだな。
「さあ、牢屋に入る準備はできたか?」
「何言ってんの? さっきも言ったでしょ。誰も俺を倒せないって」
「倒すさ」
「誰が?」
「俺たちが」
よし、集中しろ。
ここからは一瞬でも油断したら殺されると思って戦うんだ。
「ジョン! サリナ! いくぞ!」
俺たちは武器を構えて三人同時に走り出す。
走りながら俺は自分とジョンとサリナに魔法をかける。
通常の反応速度じゃ恐らく、攻撃を避けることすら難しいからな。
「【反応速度上昇】」
俺たちは同時にリックに攻撃を仕掛ける。
「「「な……ッ!?」」」
だが、俺たちが攻撃を放った時にはもう、リックは目の前にはいなかった。
ちゃんと狙ったはずなのに。
「一体、どこを狙ってるの? 俺はここだよ」
いつの間に移動したのか分からないが、目の前にいたはずのリックは俺たちの後ろまで移動していた。
そういうことだ。
俺は【反応速度上昇】の魔法をかけたはずだ。
それでも気づかないほどの速さで移動したって言うのか?
これは中々厳しい戦いになりそうな気がする。
だが、リックが規格外の速さ、もしくは瞬間移動を使えるということが分かったのはだいぶ大きい。
俺は他の二人がパニックにならないように、あえて余裕の表情を見せた。
「まあ、そのくらいの速さはあると思っていたよ」
「本当かい?」
「当り前だ。自信に満ち溢れているようなやつがそれくらいできないとむしろ恥ずかしいだろ」
「あははっ、確かにそうかもね! それじゃあ、次はもっと本気出しちゃおっかな?」
「出せるなら出してみろ」
俺は余裕の表情を見せ続けていたが、心の中では鼓動が異常に早くなっている。
それでも、俺は余裕の表情を崩さない。俺がパニックに陥ってしまえば、他の二人にもそれが伝わってしまい、状況は悪い方向へと向かってしまうからな。
大丈夫だ、と心の中で自分に言い聞かせる。
だが、不安が残っているのも事実。
リックはあの速さを見せても、まだ本気を出していないようだ。より一層集中して相手の動きを見極めるんだ。場合によっては、予測も必要になってくるかもしれない。
「それじゃあ、いっくよー!」
リックはそう言うと、再び姿を消した。
いや、消したんじゃない。またあり得ない速度を出しながら移動しているんだ。
全く見えない。
でも、風を感じる。もの凄い速さで移動しているから風が発生しているのだろう。
「なんだ!?」
ジョンが急に何かに驚いた声を出した。
急に木の枝が大きな音を立てて折れたのだ。
「そこか」
俺は理解した。
リックが今、その木の枝を足場にして移動したのだ。
そろそろ、攻撃してくるだろう。
リックの速度を目で追えているわけではないが、俺は木の枝が折れた木の方を向き、大剣を振り下ろした。
ドーンと砂埃と共に大きな音を立てた。
「あっぶね」
俺の予測は当たった。
振り下ろすタイミングでリックはちょうど俺に突っ込んできていたらしく、間一髪で避けることに成功はしたみたいだが、服の一部が少し破れていた。俺の振り下ろした大剣にかすったのだろう。
リックの顔に先ほどまでの笑みはなく、俺の攻撃に驚いているようだった。
「おまえ……見えていたのか……」
「当り前だ」
俺は一つ、嘘をついた。
リックは自分の動きが俺には見えていたと勘違いしているようだったが、本当は全く見えていない。ただの予測に過ぎない。
勘違いしてくれているのなら好都合だ。
そのまま勘違いしていてくれた方が俺たちとしては戦いやすい。
「本当に見えてたの?」
サリナが俺の傍に寄ってきて小さな声でそう聞いてきた。
俺は首を横に振った。
この場でサリナだけが俺がリックに嘘を言っているということに気が付いていたみたいだ。
サリナにはどんな嘘でも見破られてしまいそうだ。
「お前の速さくらいなら見える。さあ、次はどうするんだ?」
「ふっ、俺が速さだけに特化したやつだとは思っていないだろうな?」
「魔法か?」
「ああ! そうだよ! なんなら魔法の方が得意だよ! 速さなんておまけみたいなものさ!」
「そうか」
リックは自分の速さが通用しなかったことがかなり悔しかったようで、魔法の方が得意だと言い張った。
まあ、本当は速さも通用しているんだけどな。
俺としては、魔法よりも速さで押される方が嫌だったので、助かった。
爆破事件の犯人であるリックに自分の情報を答えることに恐怖は感じないのか聞いてみた。
リックはニヤリと再び笑みを浮かべて、俺の問いに答える。
「怖い? なんで? 個人情報がバレたところで誰かが俺を倒せなければ意味ないんだし、怖がる必要なんてないじゃん」
「まるで、俺たちじゃお前に勝てないって言ってるように聞こえるな」
「あははっ! そう言ってるんだよ! でも、少しくらいは楽しませてほしいけどね」
こいつはどこまで俺たちを嘲笑っているつもりだ。
どんだけ自分の力に自信があるんだ。
名前も年齢も答えたのは、やはり誰にも自分を止めることができないと確信しているからだったな。
だが、その油断を後悔させる。それが、ここにいる俺たちの役目だ。
それにしても、本当によく笑うやつだな。
「さあ、牢屋に入る準備はできたか?」
「何言ってんの? さっきも言ったでしょ。誰も俺を倒せないって」
「倒すさ」
「誰が?」
「俺たちが」
よし、集中しろ。
ここからは一瞬でも油断したら殺されると思って戦うんだ。
「ジョン! サリナ! いくぞ!」
俺たちは武器を構えて三人同時に走り出す。
走りながら俺は自分とジョンとサリナに魔法をかける。
通常の反応速度じゃ恐らく、攻撃を避けることすら難しいからな。
「【反応速度上昇】」
俺たちは同時にリックに攻撃を仕掛ける。
「「「な……ッ!?」」」
だが、俺たちが攻撃を放った時にはもう、リックは目の前にはいなかった。
ちゃんと狙ったはずなのに。
「一体、どこを狙ってるの? 俺はここだよ」
いつの間に移動したのか分からないが、目の前にいたはずのリックは俺たちの後ろまで移動していた。
そういうことだ。
俺は【反応速度上昇】の魔法をかけたはずだ。
それでも気づかないほどの速さで移動したって言うのか?
これは中々厳しい戦いになりそうな気がする。
だが、リックが規格外の速さ、もしくは瞬間移動を使えるということが分かったのはだいぶ大きい。
俺は他の二人がパニックにならないように、あえて余裕の表情を見せた。
「まあ、そのくらいの速さはあると思っていたよ」
「本当かい?」
「当り前だ。自信に満ち溢れているようなやつがそれくらいできないとむしろ恥ずかしいだろ」
「あははっ、確かにそうかもね! それじゃあ、次はもっと本気出しちゃおっかな?」
「出せるなら出してみろ」
俺は余裕の表情を見せ続けていたが、心の中では鼓動が異常に早くなっている。
それでも、俺は余裕の表情を崩さない。俺がパニックに陥ってしまえば、他の二人にもそれが伝わってしまい、状況は悪い方向へと向かってしまうからな。
大丈夫だ、と心の中で自分に言い聞かせる。
だが、不安が残っているのも事実。
リックはあの速さを見せても、まだ本気を出していないようだ。より一層集中して相手の動きを見極めるんだ。場合によっては、予測も必要になってくるかもしれない。
「それじゃあ、いっくよー!」
リックはそう言うと、再び姿を消した。
いや、消したんじゃない。またあり得ない速度を出しながら移動しているんだ。
全く見えない。
でも、風を感じる。もの凄い速さで移動しているから風が発生しているのだろう。
「なんだ!?」
ジョンが急に何かに驚いた声を出した。
急に木の枝が大きな音を立てて折れたのだ。
「そこか」
俺は理解した。
リックが今、その木の枝を足場にして移動したのだ。
そろそろ、攻撃してくるだろう。
リックの速度を目で追えているわけではないが、俺は木の枝が折れた木の方を向き、大剣を振り下ろした。
ドーンと砂埃と共に大きな音を立てた。
「あっぶね」
俺の予測は当たった。
振り下ろすタイミングでリックはちょうど俺に突っ込んできていたらしく、間一髪で避けることに成功はしたみたいだが、服の一部が少し破れていた。俺の振り下ろした大剣にかすったのだろう。
リックの顔に先ほどまでの笑みはなく、俺の攻撃に驚いているようだった。
「おまえ……見えていたのか……」
「当り前だ」
俺は一つ、嘘をついた。
リックは自分の動きが俺には見えていたと勘違いしているようだったが、本当は全く見えていない。ただの予測に過ぎない。
勘違いしてくれているのなら好都合だ。
そのまま勘違いしていてくれた方が俺たちとしては戦いやすい。
「本当に見えてたの?」
サリナが俺の傍に寄ってきて小さな声でそう聞いてきた。
俺は首を横に振った。
この場でサリナだけが俺がリックに嘘を言っているということに気が付いていたみたいだ。
サリナにはどんな嘘でも見破られてしまいそうだ。
「お前の速さくらいなら見える。さあ、次はどうするんだ?」
「ふっ、俺が速さだけに特化したやつだとは思っていないだろうな?」
「魔法か?」
「ああ! そうだよ! なんなら魔法の方が得意だよ! 速さなんておまけみたいなものさ!」
「そうか」
リックは自分の速さが通用しなかったことがかなり悔しかったようで、魔法の方が得意だと言い張った。
まあ、本当は速さも通用しているんだけどな。
俺としては、魔法よりも速さで押される方が嫌だったので、助かった。
33
あなたにおすすめの小説
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる