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14章 均されゆく荒野の先に集う者たちは運命を嗅ぎ取りて、次なる火種を孕む
第31話
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アルトは一度、畑の配置そのものを見直した。
「えっと……確か同じ場所に、同じ作物を植えたらいけないんだっけかな」
同じ畑(場所)に同じ作物を植え続ければ、土が疲れ、作物が育たない。つまりは連作障害を起こす。
ここぞとばかりに前世で知っていた知識を基に、ジャガイモの新しい種芋の植え付けは、少し離れた別の区画へ。
新たに耕す場所の土は固いが、ゴーレムの腕が振り下ろされると、土はあっさりと砕かれ、均され、畝を築いていく。
続いて、人参と玉ねぎ用の畑も開墾していく。
岩と石のゴーレムは細かい作業が出来ないので、種蒔きは人の手で行う必要があった。そこでステラとセリカに種蒔きを任せることにした。
ステラとセリカは並んで腰を落とし、耕されたばかりの柔らかな土へと指を伸ばす。
「いいですか、ステラ」
セリカは声を落とし、まるで授業の続きをするかのように語りかける。
「種を植える時は深すぎると芽が出ませんから、こうやって軽く、指一本分くらいの深さで入れればよろしいですのよ」
セリカは、つい先ほどまで頁を繰っていた農学の入門書の記述を思い返しながら、その知識をさっそく実地で試してみせる。
「うん、わかった!」
ステラは弾むように返事をし、すぐさま隣で同じ動きをなぞる。
ぎこちないながらも真剣な表情で、土と向き合い、セリカの仕草を一つひとつ確かめるように種を植えていく。ついでに牧草の種は周囲に適当にばら撒く。
作業が一段落したところで、アルトは額の汗を拭い、小さく息を吐いた。
「……よし。あとは、土と時間に任せるだけだな」
そう呟いては、アルトは次の仕事へと視線を向ける。
畑の先、辺境の拠点から外界へと伸びる一本の道――いや、正確には“道と呼ぶには心許ない荒れ地”だった。
近隣の村へ続くその道は、岩と石が無造作に転がり、雨が降れば水溜まりができ、乾けば土煙が舞う、まるでこの地そのものが外の世界との接触を拒んでいるかのような有様だった。
それでも、あの行商人ラパンは馬車を引いてここまで辿り着いたのだと思うと、アルトは思わず苦笑する。
「……よくまあ、馬車で来たもんだ」
感心と呆れが半々に混じった声を漏らしながら、アルトはゴーレムに命令を下した。
「よし、まずは岩や石を道に端にどかせていけ。そして、地団駄を踏むように、道を均していってくれ」
ゴーレムは、岩を掴み、持ち上げ、脇へ退かす。
石を砕き、土と混ぜ、踏み均す。
その一連の動きには無駄がなく、感情もなく、ただ命じられた通りに荒れ道を舗装していく。
本来であれば、何十人もの人手と、何日あるいは何週間もの時間が必要な作業だ。
だが今は、ゴーレムが数体いるだけで、それらすべてが黙々と肩代わりされている。
しかも、必要なのはこの辺境にいくらでも転がっている土と岩、それに動力となる魔石だけ。
魔石は魔獣を倒して入手する必要はあるが、金銭的な負担はほとんどない。
「やっぱり人手不足を解決するのは、ロボットが救世主になるんだな~」
誰に聞かせるでもなく、アルトは独り言のように呟いた。
魔石の力が尽きるまで、ゴーレムは彼の命令通りに働き続ける。人の気配がまったくないここでずっと見張っている必要もない。
アルトは整備されつつある道を少しだけ目を細めた。
まだ荒削りではあるが、確かに“行き来できる未来”が、そこに形を取り始めている。
「魔石の力が尽きたら、勝手に止まるから、ここは放おっておいてもいいかな」
自動操縦されるゴーレムに任せて、作業音を背に、静かに踵を返したのだった。
「えっと……確か同じ場所に、同じ作物を植えたらいけないんだっけかな」
同じ畑(場所)に同じ作物を植え続ければ、土が疲れ、作物が育たない。つまりは連作障害を起こす。
ここぞとばかりに前世で知っていた知識を基に、ジャガイモの新しい種芋の植え付けは、少し離れた別の区画へ。
新たに耕す場所の土は固いが、ゴーレムの腕が振り下ろされると、土はあっさりと砕かれ、均され、畝を築いていく。
続いて、人参と玉ねぎ用の畑も開墾していく。
岩と石のゴーレムは細かい作業が出来ないので、種蒔きは人の手で行う必要があった。そこでステラとセリカに種蒔きを任せることにした。
ステラとセリカは並んで腰を落とし、耕されたばかりの柔らかな土へと指を伸ばす。
「いいですか、ステラ」
セリカは声を落とし、まるで授業の続きをするかのように語りかける。
「種を植える時は深すぎると芽が出ませんから、こうやって軽く、指一本分くらいの深さで入れればよろしいですのよ」
セリカは、つい先ほどまで頁を繰っていた農学の入門書の記述を思い返しながら、その知識をさっそく実地で試してみせる。
「うん、わかった!」
ステラは弾むように返事をし、すぐさま隣で同じ動きをなぞる。
ぎこちないながらも真剣な表情で、土と向き合い、セリカの仕草を一つひとつ確かめるように種を植えていく。ついでに牧草の種は周囲に適当にばら撒く。
作業が一段落したところで、アルトは額の汗を拭い、小さく息を吐いた。
「……よし。あとは、土と時間に任せるだけだな」
そう呟いては、アルトは次の仕事へと視線を向ける。
畑の先、辺境の拠点から外界へと伸びる一本の道――いや、正確には“道と呼ぶには心許ない荒れ地”だった。
近隣の村へ続くその道は、岩と石が無造作に転がり、雨が降れば水溜まりができ、乾けば土煙が舞う、まるでこの地そのものが外の世界との接触を拒んでいるかのような有様だった。
それでも、あの行商人ラパンは馬車を引いてここまで辿り着いたのだと思うと、アルトは思わず苦笑する。
「……よくまあ、馬車で来たもんだ」
感心と呆れが半々に混じった声を漏らしながら、アルトはゴーレムに命令を下した。
「よし、まずは岩や石を道に端にどかせていけ。そして、地団駄を踏むように、道を均していってくれ」
ゴーレムは、岩を掴み、持ち上げ、脇へ退かす。
石を砕き、土と混ぜ、踏み均す。
その一連の動きには無駄がなく、感情もなく、ただ命じられた通りに荒れ道を舗装していく。
本来であれば、何十人もの人手と、何日あるいは何週間もの時間が必要な作業だ。
だが今は、ゴーレムが数体いるだけで、それらすべてが黙々と肩代わりされている。
しかも、必要なのはこの辺境にいくらでも転がっている土と岩、それに動力となる魔石だけ。
魔石は魔獣を倒して入手する必要はあるが、金銭的な負担はほとんどない。
「やっぱり人手不足を解決するのは、ロボットが救世主になるんだな~」
誰に聞かせるでもなく、アルトは独り言のように呟いた。
魔石の力が尽きるまで、ゴーレムは彼の命令通りに働き続ける。人の気配がまったくないここでずっと見張っている必要もない。
アルトは整備されつつある道を少しだけ目を細めた。
まだ荒削りではあるが、確かに“行き来できる未来”が、そこに形を取り始めている。
「魔石の力が尽きたら、勝手に止まるから、ここは放おっておいてもいいかな」
自動操縦されるゴーレムに任せて、作業音を背に、静かに踵を返したのだった。
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