悪党の食卓。 --王妃の実家は、たぶん黒幕説。--

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優雅で雅な恐怖お茶会。  ☆公爵夫人視点☆

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計画実行1日目・第二王子派閥邸宅
お茶会参加・午後
ベルトハイド公爵夫人視点


「皆様、ご機嫌よう」

「まぁ、ベルトハイド公爵夫人。今日もお美しいですわぁ」
「ご一緒出来て、光栄ですわぁ」
「こちらにお座りくださいませ」

 優雅で美しいご婦人たちが、次々に会話の花を咲かせる。


「皆様ありがとうございます。けれど、おやめくださいませ?照れてしまいますわぁ」
 と、艶やかに微笑む。


 穏やかな雰囲気の中、女達のお茶会は幕を開ける。


「今日は夫人からご報告があると伺って、みんな気になって、楽しみにしておりましたのよ?」

「ええ。最近は色んな事が起こっておりますもの。気にならない人など1人も居りませんわ」

「そうですわ!今日が楽しみで、眠れませんでしたもの!」


「フフフ、そうでしたの?でも、ごめんなさいね。本当に私事の発表なの。皆様に期待させてしまったのなら、なんだか申し訳ないわ」


「もう!早く教えてくださいませ!」
「そうですわぁ!意地悪しないでくださいませ!」
「気になって仕方がないのですわっ!」

 そう言って集まった夫人達が、可愛い小鳥の様に囀った。

 ベルトハイド公爵夫人は、穏やかに微笑んで口を開く。



「…実は、我が家のアリスがこの度、ジーク殿下の婚約者候補に、名乗りを挙げる事が決まりましたの。

 今日は皆様にその事を、お伝えしたかったのですわ。

 つまらない私事のご報告で、ごめんあそばせ?」


 

「…まぁ」

「…でも、それは、」

「…そんな…」


 公爵夫人の言葉を受けて、会場が騒めく。


「…まぁ。喜んでは頂けませんの?」
 公爵夫人は小首を傾け、不思議そうに問う。


「…お、お言葉ですが夫人。そ、それはされないお約束では…御座いませんでしたか?」

「そ、そうですわ!アリス嬢が婚約者候補になんて…聞いておりませんわ」

 何人かが、意を決して不満を口にする。



「ええ。そうだと思いますわ。
 今、初めてお伝えしましたもの…。
 知らなくて当然ですわ。

 約束に関しては、交わした覚えは御座いませんけれど…。

 もしも、ご不満がお有りなら、書面にて正式に、ご抗議くださいませ。…真摯にお答えさせて頂きますわ」

 公爵夫人は飄々と答える。



「…けれど納得出来ませんわ!
 確かに夫人は仰いましたわ!

【アリス嬢を、殿下に嫁がせるつもりは無い】と!

 皆様も覚えておりますよね!?」



 何人かが頷き、何人かが目を逸らす。




「…ええ。確かにそのように、過去にはお伝えしましたわ。
 本当にそう考えておりましたもの…当然ですわね?

 けれど…、

    ジーク殿下が王位に就けないような、あり得ない事態に陥るのなら、……話は別ですわ」 


 公爵夫人は言葉を切り、フッと笑顔を消し去り、静かに再度口を開く。



「今まで、ジーク殿下の婚約者に関しては、候補を挙げていない我が家は、不干渉を貫いて参りました。

 その結果が、どうでしょう?

 今現在、呆れてものも言えないくらい、不甲斐ない状況になっている事を……ここに居る皆様の中で、ご存知無い方は…おりませんわよねぇ?」



 綺麗な笑みに乗せた言葉は、鋭利にその場に突き付けられる。



「「「「「「………」」」」」」
 一同が顔色を悪くし、押し黙る。背筋には嫌な汗が伝う。



 逆らう様な意見を述べて来た者も、一様に戦意を喪失した様子で、顔を青く染めている。




 参加した貴族達は、強烈な叱責を受けたような気持ちになっていた。



 けれど、当の公爵夫人は、ただの本心を語っただけに過ぎなかった。



 ベルトハイド公爵家にとって、本当にジーク殿下の婚約者は、余程の問題がない限り、婚約者候補者であれば誰でも良かった。

 婚約者候補に選ばれている時点で、ある程度の基準は、満たしている。将来的に誰が選ばれるにしても、優秀な人材であれば、"家格や身分が低い"という問題があったとしても、養子縁組を駆使して嫁がせれば良いと、至極楽観的であった。

 けれど、今回、数いる婚約者候補者達を抑えて、ジーク殿下に選ばれてしまったのは、派閥に所属しても居ない、平民と大差のない…たかが男爵家の小娘であった。


 しかも、頭の中でお花畑が咲き乱れるような、可笑しな子。とあれば、許容など出来るはずも無かった。



 そんな女に一国の王妃は、とてもでは無いが務まらない。



 結果的に、その女のせいで、ジーク殿下が取れるはずだった王位は、永遠に手が届かない物になってしまう。



 そんな結末は、絶対に許されない。




▼△▼




 公爵夫人の言葉のせいで、会場では誰もが口を開く事が出来ず、静かになってしまっていた。



 そんな空気が気に入らなくて、公爵夫人は再び口を開く。



「…皆様、何だか元気が無くなってしまったわね?
 私事のご報告をしただけですのに…もしかしたら、気分を害してしまったのかしら?」


 と、更に圧をかける。



 公爵夫人の言葉の裏に、"早くこの茶会を盛り上げろ"という秘められた指示を察した貴族達が、重い口を次々に開く。



「い、いえ、その様なことは…驚いてしまっただけですわ…」

「そ、そうですわ。戸惑ってしまっただけで、アリス嬢も同じ派閥ですもの…何の問題も御座いませんわ」

「きょ、今日は新しくオープンしたカフェのケーキを仕入れましたの。…よろしければ、皆様お召し上がりくださいませ…」



 皆が空気を読み、話題を変えて、空気を変えようと試みる。


 しかし、残念ながら、お茶会は重たい空気のまま続いてゆく。



 この場を盛り上げる事が出来なければ、それは公爵夫人が茶会の空気を台無しにしたと、認める事になる。


 現実の状況は、全くもってその通りだなのだが、その動かぬ事実を貴族達が認め、空気を変えられなかった時には、公爵夫人が空気を盛り下げた事を自らで肯定し、公爵夫人を暗に批判してしまう。


 そんな事は許されない。


 だから貴族達は、何が何でも空気を変えなければならなかった。


 けれど、事態は言うほど簡単ではない。


 場の空気感を制御し、作り出し、醸し出すのは、いつだって1番発言力を持つ人間だ。


 つまり公爵夫人自身なのだ。


 だから、公爵夫人が空気を変えなければ、場の空気が変わる事はない。




 公爵夫人は、綺麗な笑みを浮かべている。




 その笑顔は、綺麗な笑顔の筈なのに、周囲の者達を不安で、落ち着かない気持ちにさせた。





 お茶会は、まだ始まったばかり。

 


 王位奪取計画・第一段階 準備
・アリスがジーク殿下の婚約者候補になる事を、派閥の人々に周知する。

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