【完結】クズ男と決別した私の未来は輝いている。

カシスサワー

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第6話【圭吾の怒声】

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 高瀬テクノロジー……

  先進的な技術開発と洗練された経営手腕で知られる中堅企業。 

 社交界では、御曹司の家系らしい華やかさと知性を兼ね備えた企業として、一目置かれている。 

 実際のところ、黒田ホールディングス傘下のIT・テクノロジー企業 NexSeed黒田 とは、
 共同開発やシステム提供を通じて密接なパートナーシップを築いている。

 双方の経営陣にとって、この提携は単なるビジネス上の取り決めにとどまらず、
 社交界における信頼と影響力を高める意味も持つ。

 いろんな意味で、NexSeed黒田にとって高瀬テクノロジーは“最高のパートナー”といえる存在だ。

 その最高のパートナーのお嬢様と、圭吾の関係は……
  
 そんなことをぼんやりと考えていたそのときだった。

「おい、西村! 聞いてるのか!」

 圭吾の怒声が、部屋の中に響き渡る。

 幸はハッとして、慌てて顔を上げた。

「えっ……あっ……す、すみません、社長!」

「聞いてるなら、返事くらいしろ!」

 圭吾の鋭い視線が、幸を射抜く。

 怒気を含んだ圭吾の瞳に戸惑っていると、

「圭吾さん、そんなに叱らないであげて。西村さん、びっくりしてるじゃないですか」

 柔らかな声が、幸をかばうように響いた。

 その言葉に反応して、圭吾の表情が一瞬で和らぐ。

「由紀さん、ごめん。驚かせてしまったね」

 声音までもが優しい。

「私は大丈夫よ。それより、西村さん。次からは、ちゃんと返事をしてね。
 そうすれば、圭吾さんも苛立ったりしないから」

 由紀の口調は、穏やかで優しかった。
 表面だけ見れば、まるで幸を気遣い、諭してくれているようにも思える。

 けれど――幸には分かってしまった。
 その微笑みの奥に潜むものを。

 彼女は、幸を見下している。

 優しい声も、思いやりのある言葉も、すべては圭吾の前で“完璧な女性”を演じるためのもの。

 彼女の言葉に、どれほど傷つけられても――誰も気づかない。

 なぜなら、誰の目にも由紀は“完璧で優しいお嬢様”そのものだから。

 幸は静かに息を吐いた。
 胸の奥が、痛みと悔しさでいっぱいになる。

 けれど、それを表情には出せない。

 NexSeed黒田と強固なパートナー関係を築く、高瀬テクノロジーのお嬢様に逆らうことなど、
 NexSeed黒田の一社員にすぎない幸に、できるはずもなかった。

 今の幸にできることは――

「……はい。これからは気をつけます」

 小さく頭を下げることだけ。

 掠れた声でそう言うと、圭吾はすぐに幸から視線を外した。

 その視線は、再び由紀へと向けられる。

 穏やかな眼差し。
 柔らかな表情。

 圭吾が由紀にどんな思いを抱いているのか――幸は、考えたくもなかった。

 トレイを持つ手が、わずかに震える。

 心の中で、何度も自分を叱咤する。
 “仕事中でしょ、泣くな。泣いたら、惨めになるだけ”

 目の前で笑い合う二人の姿が、霞んで見えた。

 幸は軽く頭を下げ、トレイを片手に持ち直すと、その場をそっと離れた。

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