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第77話【不思議な縁】
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空港を出た車は、都心へ向けて走り出す。
車内では、自然と会話が弾んだ。
「幸、婚約したんだってな」
「えっ? どうして知ってるの?」
「母さんから時々電話が来るから、そのたびに、幸のこともいろいろ聞かされてるよ」
「えっ!? お母さんが電話するなんて、びっくり……」
綾乃と俊一が、こまめに連絡を取り合っていることを知り、幸は驚いた。
「父さんが亡くなってから、電話が来るようになったんだ。……寂しかったんだろ」
兄・俊一は、昔から落ち着いていて、幸にとっても頼りになる存在だ。
だから、母・綾乃が、夫を亡くして心細い時期に、俊一を頼りたくなった気持ちが、幸にはなんとなく理解できた。
車内に、ほんの少しだけ、しんみりとした空気が流れる。
しばしの沈黙のあと、幸がふと思い出したように口を開いた。
「そういえば、お兄ちゃん、どうして急に帰ってくることになったの?」
忙しくてなかなか帰国できなかった兄の、突然の帰国理由を尋ねた。
「匠に、俺の知り合いの社長を紹介してほしいって頼まれたんだ」
「えっ? お兄ちゃんと匠さんって知り合いなの?」
「ああ。仕事を通じて知り合ったんだけど、付き合いはけっこう長いな」
「そうなんだ……」
兄・俊一と匠が知り合いだったことを知り、幸は胸の奥がふっと温かくなるのを感じた。
匠との縁は、やはり偶然ではなく、運命だったのかもしれない――そんな思いがよぎる。
「あ、そういえば……」
幸は、以前から抱いていた疑問を口にした。
「お兄ちゃんは、どうして西園寺家に入ろうと思ったの?」
俊一は、少しだけ視線を前に向けたまま、静かに口を開く。
「俺が尊敬してた先輩が、ゲームソフトの開発をしてたんだ。ようやく新作が完成したっていうときに、その会社の社長の息子に横取りされた」
幸は、息をのむ。
「そいつが”自分のアイデアだ”と言い張ってな……それに対して”自分が開発した”と主張した先輩は、あっさりクビにされたんだ」
俊一は淡々と語っていたが、その声には、拭いきれない悔しさが滲んでいた。
「為す術もなく、途方に暮れていたときだった。そのとき、母さんが俺に聞いてきたんだ。『自由と権力――どちらか一つしか選べないとしたら、どっちを選ぶ?』って」
俊一は、そこで小さく息を吐いた。
「俺は、迷わず――権力を選んだよ。大事な人を守るにも、理不尽を正すにも……力がなければ、何もできない。きれいごとだけじゃ、誰も救えないんだ」
その声には、後悔も迷いもなかった。
それが、俊一が辿り着いた、ただ一つの答えだった。
「自分が大切に思う人を助け、守るには――権力が必要だと悟った。だから俺は、
西園寺家に入る道を選んだ」
そんな事情があったのだと、幸は初めて知った。
「それで、その先輩はどうなったの?」
権力を手にした後が、幸は気になった。
「西園寺家が後ろ盾についたことで、裁判は先輩の勝利に終わったよ。そして、先輩を切り捨てたその会社は、ほどなくして倒産した。ただ――先輩がすぐに新しい会社を立ち上げたから、元の会社で働いていた従業員たちは路頭に迷うことなく、今も先輩の会社で働いている」
「よかった……結局は、その社長親子だけが、追い出されたってことだよね?」
「そういうことだ。でっ、その会社の社長・俺の先輩を、匠に紹介する為に、俺は帰国したってこと」
「えっ!?そうなの」
幸は、思わず声を上げた。
――なんていう巡り合わせ。
偶然とは思えない、運命のような繋がり。
不思議な縁に、幸は静かに感動していた。
二人を乗せた車は、都心へと入り、
やがて【水沢イノベーションズ】の地下駐車場へと、静かに滑り込んでいった。
車内では、自然と会話が弾んだ。
「幸、婚約したんだってな」
「えっ? どうして知ってるの?」
「母さんから時々電話が来るから、そのたびに、幸のこともいろいろ聞かされてるよ」
「えっ!? お母さんが電話するなんて、びっくり……」
綾乃と俊一が、こまめに連絡を取り合っていることを知り、幸は驚いた。
「父さんが亡くなってから、電話が来るようになったんだ。……寂しかったんだろ」
兄・俊一は、昔から落ち着いていて、幸にとっても頼りになる存在だ。
だから、母・綾乃が、夫を亡くして心細い時期に、俊一を頼りたくなった気持ちが、幸にはなんとなく理解できた。
車内に、ほんの少しだけ、しんみりとした空気が流れる。
しばしの沈黙のあと、幸がふと思い出したように口を開いた。
「そういえば、お兄ちゃん、どうして急に帰ってくることになったの?」
忙しくてなかなか帰国できなかった兄の、突然の帰国理由を尋ねた。
「匠に、俺の知り合いの社長を紹介してほしいって頼まれたんだ」
「えっ? お兄ちゃんと匠さんって知り合いなの?」
「ああ。仕事を通じて知り合ったんだけど、付き合いはけっこう長いな」
「そうなんだ……」
兄・俊一と匠が知り合いだったことを知り、幸は胸の奥がふっと温かくなるのを感じた。
匠との縁は、やはり偶然ではなく、運命だったのかもしれない――そんな思いがよぎる。
「あ、そういえば……」
幸は、以前から抱いていた疑問を口にした。
「お兄ちゃんは、どうして西園寺家に入ろうと思ったの?」
俊一は、少しだけ視線を前に向けたまま、静かに口を開く。
「俺が尊敬してた先輩が、ゲームソフトの開発をしてたんだ。ようやく新作が完成したっていうときに、その会社の社長の息子に横取りされた」
幸は、息をのむ。
「そいつが”自分のアイデアだ”と言い張ってな……それに対して”自分が開発した”と主張した先輩は、あっさりクビにされたんだ」
俊一は淡々と語っていたが、その声には、拭いきれない悔しさが滲んでいた。
「為す術もなく、途方に暮れていたときだった。そのとき、母さんが俺に聞いてきたんだ。『自由と権力――どちらか一つしか選べないとしたら、どっちを選ぶ?』って」
俊一は、そこで小さく息を吐いた。
「俺は、迷わず――権力を選んだよ。大事な人を守るにも、理不尽を正すにも……力がなければ、何もできない。きれいごとだけじゃ、誰も救えないんだ」
その声には、後悔も迷いもなかった。
それが、俊一が辿り着いた、ただ一つの答えだった。
「自分が大切に思う人を助け、守るには――権力が必要だと悟った。だから俺は、
西園寺家に入る道を選んだ」
そんな事情があったのだと、幸は初めて知った。
「それで、その先輩はどうなったの?」
権力を手にした後が、幸は気になった。
「西園寺家が後ろ盾についたことで、裁判は先輩の勝利に終わったよ。そして、先輩を切り捨てたその会社は、ほどなくして倒産した。ただ――先輩がすぐに新しい会社を立ち上げたから、元の会社で働いていた従業員たちは路頭に迷うことなく、今も先輩の会社で働いている」
「よかった……結局は、その社長親子だけが、追い出されたってことだよね?」
「そういうことだ。でっ、その会社の社長・俺の先輩を、匠に紹介する為に、俺は帰国したってこと」
「えっ!?そうなの」
幸は、思わず声を上げた。
――なんていう巡り合わせ。
偶然とは思えない、運命のような繋がり。
不思議な縁に、幸は静かに感動していた。
二人を乗せた車は、都心へと入り、
やがて【水沢イノベーションズ】の地下駐車場へと、静かに滑り込んでいった。
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