転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

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第1巻第3章 ハーフエルフを探せ

オークの村

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「相変わらずマヤさんは無茶苦茶ですね」

「全くだ。少しは考えて動いてほしんだがな……」

「ははは……」

 村長の屋敷からの帰り道、マッシュとオリガはそんなことを話しながら苦笑していた。

 文句を言ってはいるが、本気で怒っているわけではないのだろう。

「えー、考えて動いてるつもりなんだけどなあ? 今回だって依頼をもらえたわけじゃん?」

「依頼をもらった、というより、無理やり依頼させた、という感じだったが」

「まあいいじゃん、結果としては同じでしょ?」

「そうかもしれんが、もう少しやり方というものをだな」

「あーあーあー、聞こえない聞こえない」

「おいこら! 私の話を聞かんか! おい!」

 パタパタと逃げマヤをマッシュは怒鳴りながら追いかける。

 オリガはそんな二人を遠巻きに眺めながら、ゆっくりとその後をついていくのだった。

***

 森の中を歩いていると、先頭を歩くオリガの向こうに開けた場所が見えてきた。

「あれがオークの村なの?」

「そのはずです」

 村長から依頼を受けた翌日、マヤ達はオークの村の近くに来ていた。

「なんというか、ずいぶん質素な感じなんだね?」

「そうですね。エルフと違ってオークは知能が低いですから」

「そうなんだ?」

 やはりオークというのは知性が低く欲望に忠実な野蛮な種族なのか、とマヤは納得しそうになったが、マッシュから指摘があった。

「いやオリガ、それは偏見というものだぞ?」

「そうなんですか?」

「そうだ。まあ会えばわかるだろう」

「会っていいのかな?」

 マヤは村長から渡された依頼書を確認する。

 大きく「隣接するオークの村への偵察、場合によってはその討伐」と書かれている下に、細かな注意事項が書いてあり、よく見ると「オークと話さないこと」と書かれてた。

「オークと話しちゃ駄目らしいけど?」

「ふむ、どういうことだ?」

「さあ? エルフの間ではオークは知能の低い蛮族だと言われていますから、話しても無駄だからそう書いてあるとか、そんな感じじゃないでしょうか?」

「マッシュ、オークって普通に話はできるんだよね?」

「ああ。万が一襲われても彼らは力は強いが魔力はない。オリガの敵ではないだろう」

「じゃあとりあえず話してみようか。そのほうがオークのこともよくわかるはずだしね」

「わかりました。マヤさんがそう言うなら、オークの村に入りましょう。マヤさん、昨日渡しておいたブレスレットはつけていますか?」

「うん、ほら」

 マヤは左手首に輝く魔石のブレスレットをオリガに見せる。

「良かった。それならもしものことがあっても大丈夫ですね」

 マヤがブレスレットをつけているのを見て、オリガがほっと胸をなでおろす。

「?」

 マヤはそれがどういう意味かさっぱりわからなかったが、とりあえず気にしないことにした。

 そういうわけで、マヤたちは依頼書に書かれた注意事項を見なかったことにしてオークの村に入ることにしたのだった。

***

「こんにちは~」

 村を取り囲む柵のまわりを、ぐるっと回って、入り口らしきところ発見したマヤたちは、閉まっている門の扉に向かって、大きな声で挨拶した。

 慌ただしい足音の後、門の上の見張り台に人影が現れた。

「何者だ!」

 マヤが見上げると、そこにはモスグリーンの肌をした筋骨隆々の青年が立っていた。

 腰みの一丁なので、下から見るとアレが見えてしまいそうで、マヤは少しドキドキした。

 女の子から見た露出の多い男の姿というのはこういう感じなのか、とどうでもいいことに感心しているマヤをよそに、マッシュがオークの青年に応える。

「我々は近くのエルフの村から来た者だ」

「エルフの村から来ただと!? よくもそんなことを平然と言えたものだな!」

 マッシュの言葉に激高したオークの青年は、振り返るとそこに設置してあった鐘を打ち鳴らす。

 状況が読めずにいるうちに、マヤたちはオークたちによって囲まれていた。

「ねえマッシュ?」

「何だ、マヤ」

「オークと話してわかることって、これ?」

 マヤは違うとわかっていてわざと質問する。

 それでも確認しておかねばなるまい、なぜなら突然襲われているのだから。

「そんなわけないだろう。しかしおかしいな、私の知ってるオークはこんなに好戦的ではなかったのだが」

「マッシュの知ってるオークが特別大人しかった説はない?」

「その説は否定できないが」

 オークに囲まれたままのんきに話しているマヤとマッシュに、しびれを切らしたオークの1人が襲いかかってくる。

「仲間の恨み、お前らで晴らさせてもらう!」

 筋骨隆々なオークの男がマヤとの距離を詰めると、マヤの身長ほどもある大剣を振り下ろした。

「……っ」

 マヤが反応できないでいるうちに、大剣の刃はマヤのすぐ上まで迫っていた。

 今更どうすることもできないマヤは、ギュッと目をつむる。

 これでマッシュもオリガも間に合わなければ、まあその時は諦めて死ぬしかないだろう。

 しかし、直後にマヤが聞いたのは意外な声だった。

「わふっ、ぐるるるるるるるっ」

 目を開けたマヤの目の前にいたのは大きな白い狼、マヤお気に入りの魔物のシロちゃんだった。

 オークの大剣を額の白くなった魔石で受け止め、弾き返し、オークたちを唸り声で威嚇している。

「シロちゃん? どうしてここに……」

 シロちゃんを含めたすべての魔物はオリガの魔法、運籠キャリーの中にしまってあるため、オリガに出してもらわないとマヤは魔物を使えないはずなのだが、これは一体どういうことだろう。

「上手く機能したみたいですね」

 いつの間にか防御魔法を展開してオークたちを遠ざけていたオリガが、マヤのブレスレットを見ていた。

「なに、このブレスレットの効果なの?」

「はい、それがあればマヤさんは私の運籠キャリーから魔物を好きなように呼び出せます」

「なにそれすごいじゃん! なんで教えてくれなかったのさ」

「いえ、本当に思いつきで作ってみたのでうまくいくか自信がなくて……」

「思いつきでこんなもの作れるなんて、オリガってやっぱりすごいね。よーしこれならっ!―――って、あれ?」

 自由に魔物を呼び出せるブレスレットを貰い、ワクワクしてきたマヤがいざオークたちと戦おうとすると、そこには何故かひざまずいてマヤに頭を垂れるオークたちの姿があった。

 突然の態度の変化に、シロちゃんも戸惑っているのか、マヤを振り返ったりオークたちに視線を戻したりとキョロキョロしている。

 戸惑うマヤたちに、一人のオークはマヤとシロちゃんの前に進み出た。

「先ほどは貴方様方が予言の聖女様方とは気が付かず、大変失礼致しました」

 そう言って、マヤとシロちゃんのすぐ目の前で再びひざまずき、頭を垂れる。

「えーっと、どゆこと?」

「わふううぅ?」

 マヤとシロちゃんは、わけがわからず顔を向けあって首を傾げるのだった。
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