転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

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第1巻第4章 亜人国建国

憧れのハーレム?

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「こんにちはー」

 マヤがオーク村にたどり着いて挨拶すると、すぐに見張り台に乗っていたオークの青年が下に指示を出して門を開けさせた。

「聖女様! どうされたのですか突然」

「いやね、ちょっとお願いしたいことがあってさ。長老呼んできてくれるかな」

 マヤの言葉に、門を開けてくれたオークの青年が村長の家を走り出そうとするが、マヤの隣にいたカーサがそれを手でとどめた。

「マヤさん、長老、実は、足、悪い」

「え、そうなの? じゃあ私達が長老の家まで行ってあげたほうがいいね」

「うん。マヤさんなら、そう言ってくれると、思った。こっち」

「ちょ、ちょっと、カーサさん! 聖女様に出向いていただくなんて」

 カーサは青年の声を無視して、村の中を進んでいく。

「いいのいいの、気にしないで。マッシュはそこで待っててくれる?」

「聖女様がそうおっしゃるなら」

「了解だ。帰るときに起こしてくれ」

 マヤの言葉に、オークの青年は渋々引き下がり、マッシュは道脇の草むらで丸くなって眠り始める。

「へえ、これがオークの村ですか~」

「で、結局オークの村までついてきちゃってるけど、大丈夫なの、シャリルさん?」

「大丈夫ですよ、案内役の私一人いないくらいどうってことないですって」

「いやそういうことじゃなくて……」

 呆れるマヤに、シェリルはスッと距離を詰めると、マヤに耳打ちする。

「玉座の前には私の幻影と私と同じ返答をする音声魔法術式をおいてきたのでルーシェのことなら大丈夫です」

「才能の無駄遣いすぎる……」

「有効活用と言ってほしいですねー」

 シェリルはひらひらと手を振ると、マヤから離れてオリガのそばに戻った。

 シャリルが魔王ルーシェだとわかった最初の頃は、緊張でうまく話せなくなっていたオリガだが、今ではすっかり仲良しで楽しそうに訳のわからない魔法の話でも盛り上がっている。

「おお、聖女様、わざわざ申し訳ない……」

「長老、久しぶり」

「お久しぶりです。それで、本日はなんの御用でしょう」

「うん、ちょっとね」

 マヤは魔王ルーシェのことは伏せながら、亜人の国を作ろうと思っているということを長老に説明した。

 ちなみに、魔王ルーシェの名前を出さなかったのは、そのほうが上手くいくはずだとルーシェから聞いていたからだ。

 当の本人は今まさにこの瞬間も、後ろでオリガと楽しくおしゃべりしているわけだが、果たしてバレないものなんだろうか。

「なるほど、聖女様が亜人の国を……」

 そこで長老は少し考えを巡らせるように宙を眺めた。

「どう? やっぱり人間が亜人の国を作るのって変かな?」

「いえ、私は大賛成でございます。聖女様なら素晴らしい国をお作りになるでしょう!」

 その信頼はどこから来るのかと思わなくもないが、そう言われ悪い気はしない。

「そう言ってもらえると嬉しいな。じゃあ、この村を私が作る国の領土にしたいんだけど、いい?」

「ええ、もちろんです! と言いたいところですが、1つだけ確認させてください」

「なにかな」

「我が村を聖女様の国の領土にしても、私達はここに住み続けてよいということでしょうか」

「それはもちろん。新しい国を作るわけだから、道作ったり、水路作ったりする時に移動してもらうことはあるかもしれないけど」

「そういうことなら問題ございません。我が村は聖女様の国に加入します」

「ありがとうね。それじゃあ色々決まったらまたくるから」

「はい、お待ちしております」

 マヤは立ち去ろうとして、実は最初来た時から気になっていたことを聞いてみることにした。

「あのさ長老」

「はい、何でございましょう」

「その、長老の家ってなんでこんなにおばあちゃんがいるの?」

 そうマヤは気になっていたのは、長老の家にいる十数人の年老いた女のオークのことだった。

 その上、オークの美的感覚が今ひとつわからないマヤでもなんとなくわかるくらいに、みんながみんな昔は美人だったであろうオークたちなのだ。

「ああ、これはすべて私の妻です」

「全員!? 夫に先立たれた未亡人を面倒見てあげてるとかじゃなくて?」

「ええ、全員が私の妻ですが?」

 驚くマヤに、長老は何を驚いているんだろう、という表情をしていた。

「マヤさん、オークは一夫多妻、なの。一番、お嫁さん多いオークが、村の長に、なるの」

「なにそれ、ハーレムじゃん」

 かつてのマヤが夢みたハーレムが、そこにはあった。

 もう全員おばあちゃんだが。

「そう、ハーレム。それを作るのが、オークの男の、目標」

「くう、羨ましいなあ、まったく!」

 もしもオークも男に転生できていれば、と思わずそんなことを考えてもしまったマヤだが、今更そんなことを言っても仕方ないだろう。

 まあそもそも、寝て起きたら転生していたマヤに転生先の選択肢などなかったのだが。

「聖女様がお望みなら―――おい」

 マヤが唸っていると、長老は近くのオークを呼んで、何事か指示を出した。

 しばらくすると、長老の家に引き締まった細身の美形オークから、筋骨隆々でたくましい野性味あふれる男前のオークまで、村のイケメンオークが十人以上やってきた。

「えーっと、長老、これは一体……」

 マヤは、不覚にもその男たちに見惚れてしまいそうになるが、どうにかして目をそらそうとする。

(なにこれ!? 頭の中ではただの男だってわかってるのに、体が勝手に!?)

 違う反応を示す意識と体に悩まされながら、マヤが長老に向き直ると、長老は自慢げだった。

「さあさあ、聖女様、村中のいい男を集めましたから、どうぞハーレムを作ってください」

 長老の言葉に、マヤはうつむいて背中を震わせる。

「ちっ、ちっっっがーう! 私がしたかったハーレムはこういうことじゃないんだからーーーー!」

 これ以上ここにいたら乙女ゲームみたいな逆ハーレムになってしまう、そう感じたマヤは、叫んだ勢いそのままに長老の家を出ると、シロちゃんを呼び出して跳び乗りオークの村から出ていった。

「お、おい! マヤ! どうしたのだ一体!?」

 突然シロちゃんに乗って逃げるようにオークの村を出ていったマヤに、入口近くで待っていたマッシュが慌てて声をかけるが、マヤが止まることはなかった。

 走り去るマヤは、耳まで真っ赤になっていた。

 何より、イケメンオークにときめいてしまったことが悔しいマヤなのだった。
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