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第1巻第4章 亜人国建国
第一回亜人国会議
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「それでは、第一回亜人国会議を始めます」
マヤがジョセフから亜人国加入を約束を取り付けてから2週間後、司会進行を務めるオリガの言葉で、第一回亜人国会議が始まった。
場所は魔王ルーシェの城の中にある大広間である。
場所こそルーシェの城の中だが、主催者は亜人国の初代国王のマヤであり、ルーシェはあくまで見届け人だ。
「それでははじめに、初代国王のマヤ様からご挨拶いただきます」
「こほん。えー、本日は皆さん、よくお集まりいただきました―――って、やめやめ。やっぱりこういう堅苦しいのは私には向いてないや。普通に喋らせてもらうね」
「そもそもマヤさんは王なのですから、別に我々にかしこまる必要はないのではないですか?」
「そうですね。ジョセフ殿の言う通りです。どうぞ聖女様が話したいように話してください」
「たしかに。なんとなく王様だからちゃんとしないとって思ってたけど、王様だから好きにしていいのか」
「いや、ある程度威厳はあったほうがいいと思うが……」
「マッシュさんの意見も一理あるかと思いますが、マヤさんは自然体のほうがいいんじゃないですか?」
「マヤさんは、そのままが、いい」
「よしっ、みんながそう言ってくれるならこれからはかしこまったのはなしで。それじゃあ早速今回の会議で決めることだけど―――オリガ」
「はい。投影」
オリガが呪文を唱えると、壁に文字が投影される。
「見ての通り、今回決めないといけないのは、国の名前と建国を広める方法、それから、今後どうやって他の亜人を取り込むか、ってことの3つだね。まあまずは名前からかな」
マヤが言い終わるかというところで、早速ジョセフが手を上げた。
「それではマヤ王国というのはどうでしょうか?」
「ジョセフさん、それは流石に安直すぎない?」
「しかし、先日我が村を襲撃したジョン王子の国はヘンダーソン王国ですよ?」
「うーん、たしかにそう言われるとありなような気もするけど」
「ジョセフ殿の案でもよいのですが、亜人の国、ということですから、王国ではなく亜人国にしたほうがよいかと」
「それはたしかにそうだね」
「そうなると、マヤ亜人王国、ですか」
「いやー、でもマヤってのはなあ……しかも下の名前だしなあ」
流石に自分の名前が入っているのは何ともこそばゆい感じがする。
それに、ヘンダーソンのように名字ならまだしも、マヤは下の名前である。
「では聖女様の名字プラス亜人王国で良いのではないですか? そういえば、聖女様の名字は何というのです?」
「へ? えーっと……」
転生してから名字を使った記憶のないマヤは、名字など考えていなかった。
(如月ってそのままだとだめだろうし―――ん? いやまあ大丈夫か、女の子になってるし、下の名前変えてるし)
「ごめんごめん、私の名字はキサラギだよ」
「ではキサラギ亜人王国でよいのではないすか」
長老の言葉に、ジョセフもうんうんとうなずいている。
「そうですね、私もそれで良いと思います」
「ええー、2人ともこれでオーケーなの? ねえマッシュ、オリガ、カーサ、キサラギ亜人王国って流石にダサくない?」
「どうしてだ? たしかにかっこよくはないかもしれんが、国の名前などそんなものだろう」
「いいと思いますよ、キサラギ亜人王国。ヤマさんの名前が入ってるのが特にいいです」
「私は、かっこいいと、思う、キサラギ亜人王国」
どうやら満場一致でキサラギ亜人王国推しらしい。
マヤはしかたなく諦めることにした。
「はあ、わかったよ。それでじゃあ国の名前はキサラギ亜人王国で決定ってことで」
マヤはせっかくなので、アルヴァン云々とか、スヴェルト云々とか、そういうかっこいい名前にしたかったのだが、意外と保守的というか、亜人なのに人間の慣習を大事にする亜人たちによって、亜人国の名前は極めて無難なものに落ち着いたのだった。
***
「はああああ、おわったああああ……」
マヤはようやく第一回会議を終えて、机に突っ伏した。
「お疲れさまです、マヤさん」
「オリガもね。でもまあ、頑張ったおかげで色々決まったし良かったかな」
「そうですね」
国名を決めた後も話し合いは続いていき、建国したことを広める方法と、他の亜人たちを取り込む方法がとりあえず決まった。
「にしてもまさか、ジョン王子がそんなにすごい人だったとはね」
「まあジョン王子が、というよりはヘンダーソン家がすごいって話なんでしょうけど」
「たしかに」
建国したことを広める方法として第一候補として提案されたのが、ジョン王子に頼む方法だった。
なんでも、ヘンダーソン家というのはヘンダーソン王国の王家であると当時に、この世界有数の大商人らしく、世界中に商人のネットワークを持っているらしいのだ。
その商人のネットワークを使って、キサラギ亜人王国の建国を広めるもらうのが一番はやく広く伝わるだろうとのことだった。
「でも、そうなるとジョン王子に頼み事をするわけですよね?」
「まあそうなるね。だから、問題はエメリンさんをどうするか、か」
どうしてここでエメリンが問題になるかといえば、ジョン王子とエメリンの娘でオリガの妹のクロエが付き合っていて、それをよく思っていないエメリンからジョン王子は虫けら扱いされているからである。
「お母さんもいい加減認めてあげてもいいと思うんですけど……」
「ジョン王子とクロエさんがエメリンさんのところに来たのって前回で何回目だっけ?」
「6回目です。1週間に1回位は来てる感じじゃないですか?」
「王子様、相当クロエさんに惚れてるんだね~」
ヘンダーソン王国からエルフの村までは普通に移動すれば1ヶ月はかかる。
1週間に1回来ているということは近くに別荘でもあるのかもしれない。
「クロエの方も、ジョン王子と結婚したい、って気もちは強いみたいですからね」
「だよねえ、相思相愛ってやつだよねえ。いーなー。でもそれでも認めないエメリンさんもなかなか頑固だね」
「頑固なだけではないと思いますよ。たぶん、寿命のこととかが引っかかってるんでしょうね」
以前聞いた話だと、クロエの両親は母親がエルフ、父親が人間だったらしいのだが、父親が人間の寿命で亡くなったとき、エルフとしてまだ数百年生きられた母親も後を追うように自ら命を絶ったのだそうだ。
「その気持ちもわかるけど、あれだけ好きあってるんだから認めてあげてもねえ?」
「そうですね」
「まあ、これはまた村に戻ってから考えるとして。亜人王国に誘うのはまずはエルフの森の他のエルフ、そして近くに住んでいるオーク、ってことでいいんだっけ?」
「そうですね。エルフの森エルフたちはある程度交流がありますし、オークも近くに3つほど村があるらしいですから、まずはそこからということですね」
「じゃあそれはジョセフと長老に任せて私達はエメリンさんの説得、か。次にジョン王子が村に来るのは?」
「たしかに4日後ですね」
「よし、それならちょうどいいね。さっさと村に戻って作戦を考えよう」
こうして、第一回亜人国会議は終わったのだった。
マヤがジョセフから亜人国加入を約束を取り付けてから2週間後、司会進行を務めるオリガの言葉で、第一回亜人国会議が始まった。
場所は魔王ルーシェの城の中にある大広間である。
場所こそルーシェの城の中だが、主催者は亜人国の初代国王のマヤであり、ルーシェはあくまで見届け人だ。
「それでははじめに、初代国王のマヤ様からご挨拶いただきます」
「こほん。えー、本日は皆さん、よくお集まりいただきました―――って、やめやめ。やっぱりこういう堅苦しいのは私には向いてないや。普通に喋らせてもらうね」
「そもそもマヤさんは王なのですから、別に我々にかしこまる必要はないのではないですか?」
「そうですね。ジョセフ殿の言う通りです。どうぞ聖女様が話したいように話してください」
「たしかに。なんとなく王様だからちゃんとしないとって思ってたけど、王様だから好きにしていいのか」
「いや、ある程度威厳はあったほうがいいと思うが……」
「マッシュさんの意見も一理あるかと思いますが、マヤさんは自然体のほうがいいんじゃないですか?」
「マヤさんは、そのままが、いい」
「よしっ、みんながそう言ってくれるならこれからはかしこまったのはなしで。それじゃあ早速今回の会議で決めることだけど―――オリガ」
「はい。投影」
オリガが呪文を唱えると、壁に文字が投影される。
「見ての通り、今回決めないといけないのは、国の名前と建国を広める方法、それから、今後どうやって他の亜人を取り込むか、ってことの3つだね。まあまずは名前からかな」
マヤが言い終わるかというところで、早速ジョセフが手を上げた。
「それではマヤ王国というのはどうでしょうか?」
「ジョセフさん、それは流石に安直すぎない?」
「しかし、先日我が村を襲撃したジョン王子の国はヘンダーソン王国ですよ?」
「うーん、たしかにそう言われるとありなような気もするけど」
「ジョセフ殿の案でもよいのですが、亜人の国、ということですから、王国ではなく亜人国にしたほうがよいかと」
「それはたしかにそうだね」
「そうなると、マヤ亜人王国、ですか」
「いやー、でもマヤってのはなあ……しかも下の名前だしなあ」
流石に自分の名前が入っているのは何ともこそばゆい感じがする。
それに、ヘンダーソンのように名字ならまだしも、マヤは下の名前である。
「では聖女様の名字プラス亜人王国で良いのではないですか? そういえば、聖女様の名字は何というのです?」
「へ? えーっと……」
転生してから名字を使った記憶のないマヤは、名字など考えていなかった。
(如月ってそのままだとだめだろうし―――ん? いやまあ大丈夫か、女の子になってるし、下の名前変えてるし)
「ごめんごめん、私の名字はキサラギだよ」
「ではキサラギ亜人王国でよいのではないすか」
長老の言葉に、ジョセフもうんうんとうなずいている。
「そうですね、私もそれで良いと思います」
「ええー、2人ともこれでオーケーなの? ねえマッシュ、オリガ、カーサ、キサラギ亜人王国って流石にダサくない?」
「どうしてだ? たしかにかっこよくはないかもしれんが、国の名前などそんなものだろう」
「いいと思いますよ、キサラギ亜人王国。ヤマさんの名前が入ってるのが特にいいです」
「私は、かっこいいと、思う、キサラギ亜人王国」
どうやら満場一致でキサラギ亜人王国推しらしい。
マヤはしかたなく諦めることにした。
「はあ、わかったよ。それでじゃあ国の名前はキサラギ亜人王国で決定ってことで」
マヤはせっかくなので、アルヴァン云々とか、スヴェルト云々とか、そういうかっこいい名前にしたかったのだが、意外と保守的というか、亜人なのに人間の慣習を大事にする亜人たちによって、亜人国の名前は極めて無難なものに落ち着いたのだった。
***
「はああああ、おわったああああ……」
マヤはようやく第一回会議を終えて、机に突っ伏した。
「お疲れさまです、マヤさん」
「オリガもね。でもまあ、頑張ったおかげで色々決まったし良かったかな」
「そうですね」
国名を決めた後も話し合いは続いていき、建国したことを広める方法と、他の亜人たちを取り込む方法がとりあえず決まった。
「にしてもまさか、ジョン王子がそんなにすごい人だったとはね」
「まあジョン王子が、というよりはヘンダーソン家がすごいって話なんでしょうけど」
「たしかに」
建国したことを広める方法として第一候補として提案されたのが、ジョン王子に頼む方法だった。
なんでも、ヘンダーソン家というのはヘンダーソン王国の王家であると当時に、この世界有数の大商人らしく、世界中に商人のネットワークを持っているらしいのだ。
その商人のネットワークを使って、キサラギ亜人王国の建国を広めるもらうのが一番はやく広く伝わるだろうとのことだった。
「でも、そうなるとジョン王子に頼み事をするわけですよね?」
「まあそうなるね。だから、問題はエメリンさんをどうするか、か」
どうしてここでエメリンが問題になるかといえば、ジョン王子とエメリンの娘でオリガの妹のクロエが付き合っていて、それをよく思っていないエメリンからジョン王子は虫けら扱いされているからである。
「お母さんもいい加減認めてあげてもいいと思うんですけど……」
「ジョン王子とクロエさんがエメリンさんのところに来たのって前回で何回目だっけ?」
「6回目です。1週間に1回位は来てる感じじゃないですか?」
「王子様、相当クロエさんに惚れてるんだね~」
ヘンダーソン王国からエルフの村までは普通に移動すれば1ヶ月はかかる。
1週間に1回来ているということは近くに別荘でもあるのかもしれない。
「クロエの方も、ジョン王子と結婚したい、って気もちは強いみたいですからね」
「だよねえ、相思相愛ってやつだよねえ。いーなー。でもそれでも認めないエメリンさんもなかなか頑固だね」
「頑固なだけではないと思いますよ。たぶん、寿命のこととかが引っかかってるんでしょうね」
以前聞いた話だと、クロエの両親は母親がエルフ、父親が人間だったらしいのだが、父親が人間の寿命で亡くなったとき、エルフとしてまだ数百年生きられた母親も後を追うように自ら命を絶ったのだそうだ。
「その気持ちもわかるけど、あれだけ好きあってるんだから認めてあげてもねえ?」
「そうですね」
「まあ、これはまた村に戻ってから考えるとして。亜人王国に誘うのはまずはエルフの森の他のエルフ、そして近くに住んでいるオーク、ってことでいいんだっけ?」
「そうですね。エルフの森エルフたちはある程度交流がありますし、オークも近くに3つほど村があるらしいですから、まずはそこからということですね」
「じゃあそれはジョセフと長老に任せて私達はエメリンさんの説得、か。次にジョン王子が村に来るのは?」
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