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第1巻第4章 亜人国建国
ジョン王子の魔人化
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「よし、これですべての準備は整った」
マッシュはジョン王子を囲む魔法陣の最後の一箇所から前足を離すと、ピョンと跳ねて魔法陣の外に出た。
「これで魔人化できるの?」
「ああ、そのはずだ」
「私がベルフェゴールに魔人化させられた時も同じような魔法陣だったので、間違いないと思います」
「させられたんじゃなくて、あなたは自分から魔人にしてもらったんでしょうか……」
「エメリン、相変わらず僕に手厳しくないかい……?」
「事実だからね」
「まあそのおかげで王子様の魔人化できるわけだし、結果オーライってことでいいんじゃない? それじゃあ王子様、覚悟はいい?」
「ああ、今更怖気づいたりしないさ」
「それではこれから、魔人化の儀式を開始する! マヤは私に、強化魔法を。クロエは魔石に魔力を流し込んでくれ。私がクロエの魔力と魔石の魔力をジョン王子まで導く」
「「了解」です」
マッシュの指示通り、マヤはマッシュに強化魔法をかけ、クロエは握っている魔石に魔力を注ぎ込んだ。
マヤの強化魔法の光に包まれるマッシュによって、クロエとクロエが握りしめた魔石から溢れた魔力がどんどんとジョン王子に吸い込まれていく。
「よし、順調だ。気分はどうだ、ジョン王子」
「なんともないが……本当にこれで魔人化できるのか?」
「ああ、時間はかかるがな」
それから30分後、ようやく魔力の流れが収まると、ジョン王子を囲んでいた魔法陣がジョン王子の足元から頭の上まで浮き上がり、空中でガラスが割れるような音を立てて砕け散った。
「何も変わっていないようだが?」
そう言って、ジョン王子が首を傾げていると、まもなくその体に変化が起こった。
「殿下! 肌が!」
「ん? うおっ!? なんだ? 肌がどんどんと黒く?」
変化が始まってからものの数秒で、ジョン王子の白い肌は、オリガと同じ褐色の肌に、青かった瞳は金色に変わっていた。
「うむ。成功したようだな」
「これが魔人化なのか……」
ジョン王子はしみじみと自分の手足を眺め、手を開いたり閉じたりしている。
「無事魔石も生成されているな」
「ホントだ。王子様の胸の中央に魔石があるみたいだね」
服の下から黒い靄が発生しているのを魔眼で見て、マヤはジョン王子胸に魔石ができていることを確認した。
(魔石があるってことはもしかして……)
マヤはあることに思い至り、悪い微笑みを浮かべると、そっとクロエの隣に移動し、その耳に囁きかける。
「ねえクロエ、今王子様には魔石があって、その魔石は、今クロエが持ってる魔石が元になってる魔石なわけじゃない?」
「? はい、そうですけど、それがどうかしましたか? それとなんで小声―――」
「魔石の制御は絶対、ってオリガも知ってるよね」
マヤの悪魔の囁きに、その意味を瞬時に理解したクロエはビクンッと大きく身震いして身を固くする。
「それは……つまり……」
「そうだよ、今なら……ううん、今だけじゃないよ? これからずーっと、王子様をクロエの好きにできるんだよ?」
「っっっ! でも私、そんなこと……」
「ふふふっ、いいのかな? 私が魔石の制御を上書きできるの、知ってるでしょ? 王子様かっこいいし、もらっちゃおうかなあ」
もちろんマヤにそんなことをするつもりはない。
冷静に考えれば、そんなことをすればクロエを敵に回し、そのままエメリンを敵に回すことになるのだから、マヤがそんなことをしないのはわかるはずなのだが、今のクロエは正常な判断ができる状態ではなかった。
「だめっ! ジョンちゃん!」
「うおっ! なんだ、体が勝手に!? ちょ、クロ姉!? 何したの!?」
マヤにそそのかされ魔石の力を使ったクロエによって、ジョン王子はまるで不可視の糸に引っ張られるようにクロエへと近づくと、そのままクロエをお姫様抱っこしていた。
「ジョンちゃんは渡さないんだから!」
クロエがマヤに向かってそう言うと、クロエを抱っこしたジョン王子が、驚くべきことにクロエを抱きかかえたまま、大きく跳躍してマヤたちの前から消えてしまう。
後には、あっけにとられる一同が残されていた。
「マヤさん、クロエに何を言ったんです?」
「マヤさん、クロエさんに、ジョン王子を、奪うって、言ってた」
「ちょ、カーサ聞こえてたの!? あっ……」
上手くすればごまかせたかもしれなかったが、マヤの反応は肯定したも同然だった。
「マヤ、流石に冗談でもそれは良くないぞ?」
「えへへ、面白いかなーって」
「まったくお前というやつは……」
「マヤさん、このことはお母さんに報告させて貰いますからね?」
ニッコリとほほえみながら全く目が笑っていないオリガに、マヤの背を冷や汗が流れた。
オリガの迫力に、やっぱりエメリンと親子だなあ、などと現実逃避していたマヤだが、現実からは逃れられず、この後オリガとエメリンの2人にこっぴどく怒られることになったが、兎にも角にも、ジョン王子の魔人化は無事完了したのだった。
マッシュはジョン王子を囲む魔法陣の最後の一箇所から前足を離すと、ピョンと跳ねて魔法陣の外に出た。
「これで魔人化できるの?」
「ああ、そのはずだ」
「私がベルフェゴールに魔人化させられた時も同じような魔法陣だったので、間違いないと思います」
「させられたんじゃなくて、あなたは自分から魔人にしてもらったんでしょうか……」
「エメリン、相変わらず僕に手厳しくないかい……?」
「事実だからね」
「まあそのおかげで王子様の魔人化できるわけだし、結果オーライってことでいいんじゃない? それじゃあ王子様、覚悟はいい?」
「ああ、今更怖気づいたりしないさ」
「それではこれから、魔人化の儀式を開始する! マヤは私に、強化魔法を。クロエは魔石に魔力を流し込んでくれ。私がクロエの魔力と魔石の魔力をジョン王子まで導く」
「「了解」です」
マッシュの指示通り、マヤはマッシュに強化魔法をかけ、クロエは握っている魔石に魔力を注ぎ込んだ。
マヤの強化魔法の光に包まれるマッシュによって、クロエとクロエが握りしめた魔石から溢れた魔力がどんどんとジョン王子に吸い込まれていく。
「よし、順調だ。気分はどうだ、ジョン王子」
「なんともないが……本当にこれで魔人化できるのか?」
「ああ、時間はかかるがな」
それから30分後、ようやく魔力の流れが収まると、ジョン王子を囲んでいた魔法陣がジョン王子の足元から頭の上まで浮き上がり、空中でガラスが割れるような音を立てて砕け散った。
「何も変わっていないようだが?」
そう言って、ジョン王子が首を傾げていると、まもなくその体に変化が起こった。
「殿下! 肌が!」
「ん? うおっ!? なんだ? 肌がどんどんと黒く?」
変化が始まってからものの数秒で、ジョン王子の白い肌は、オリガと同じ褐色の肌に、青かった瞳は金色に変わっていた。
「うむ。成功したようだな」
「これが魔人化なのか……」
ジョン王子はしみじみと自分の手足を眺め、手を開いたり閉じたりしている。
「無事魔石も生成されているな」
「ホントだ。王子様の胸の中央に魔石があるみたいだね」
服の下から黒い靄が発生しているのを魔眼で見て、マヤはジョン王子胸に魔石ができていることを確認した。
(魔石があるってことはもしかして……)
マヤはあることに思い至り、悪い微笑みを浮かべると、そっとクロエの隣に移動し、その耳に囁きかける。
「ねえクロエ、今王子様には魔石があって、その魔石は、今クロエが持ってる魔石が元になってる魔石なわけじゃない?」
「? はい、そうですけど、それがどうかしましたか? それとなんで小声―――」
「魔石の制御は絶対、ってオリガも知ってるよね」
マヤの悪魔の囁きに、その意味を瞬時に理解したクロエはビクンッと大きく身震いして身を固くする。
「それは……つまり……」
「そうだよ、今なら……ううん、今だけじゃないよ? これからずーっと、王子様をクロエの好きにできるんだよ?」
「っっっ! でも私、そんなこと……」
「ふふふっ、いいのかな? 私が魔石の制御を上書きできるの、知ってるでしょ? 王子様かっこいいし、もらっちゃおうかなあ」
もちろんマヤにそんなことをするつもりはない。
冷静に考えれば、そんなことをすればクロエを敵に回し、そのままエメリンを敵に回すことになるのだから、マヤがそんなことをしないのはわかるはずなのだが、今のクロエは正常な判断ができる状態ではなかった。
「だめっ! ジョンちゃん!」
「うおっ! なんだ、体が勝手に!? ちょ、クロ姉!? 何したの!?」
マヤにそそのかされ魔石の力を使ったクロエによって、ジョン王子はまるで不可視の糸に引っ張られるようにクロエへと近づくと、そのままクロエをお姫様抱っこしていた。
「ジョンちゃんは渡さないんだから!」
クロエがマヤに向かってそう言うと、クロエを抱っこしたジョン王子が、驚くべきことにクロエを抱きかかえたまま、大きく跳躍してマヤたちの前から消えてしまう。
後には、あっけにとられる一同が残されていた。
「マヤさん、クロエに何を言ったんです?」
「マヤさん、クロエさんに、ジョン王子を、奪うって、言ってた」
「ちょ、カーサ聞こえてたの!? あっ……」
上手くすればごまかせたかもしれなかったが、マヤの反応は肯定したも同然だった。
「マヤ、流石に冗談でもそれは良くないぞ?」
「えへへ、面白いかなーって」
「まったくお前というやつは……」
「マヤさん、このことはお母さんに報告させて貰いますからね?」
ニッコリとほほえみながら全く目が笑っていないオリガに、マヤの背を冷や汗が流れた。
オリガの迫力に、やっぱりエメリンと親子だなあ、などと現実逃避していたマヤだが、現実からは逃れられず、この後オリガとエメリンの2人にこっぴどく怒られることになったが、兎にも角にも、ジョン王子の魔人化は無事完了したのだった。
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