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第4巻第1章 魔王会議
魔王会議開始
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「ここが会場なんだね」
ルーシェから目隠しを外してもらったマヤは、目の前にそびえ立つ館を見上げて感嘆の声をあげる。
「それにしても、なぜ目隠しをせなばならんのだ? しかも前が見えないだけではなく耳も聞こえなければ匂いもわからなくなる目隠しまで用意してまで場所を隠すとは驚きだ」
マヤに抱っこされていたマッシュの目隠しをマヤが外してあげると、マッシュはルーシェに尋ねた。
「まあ一応まだみんなは部外者だからさ、これくらいしないと他の魔王に説明がつかないんだよね。呼び出しといてこんな扱いはどうなんだって私も思うんだけどさ」
ルーシェがばつが悪そうにしているところを見るに、どうやらルーシェとしては不本意だがそうするしかなかったといった感じなのだろう。
正直マヤとしては、そんなことまでして場所を隠さなくともルーシェのような化け物魔王が少なくともあと2人も参加している魔王会議に忍び込もうなどという命知らずはいないと思うのだが、用心深い魔王がいるのだろう。
あるいは新しい魔王として推薦されたマヤへの嫌がらせかもしれないが。
「私は気にしてませんよ。それよりこの目隠し本当にすごいですね! 思いつく限りの魔法で外の様子を探ろうとしましたが、全部無効化されてしまいました。もしかして魔法ごとに別の無効化魔法が起動してたりします?」
「そうなんだよ! そこに気がつくとは流石オリガちゃん! 実はこの目隠しにはねえ――」
オリガのマニアックな質問が嬉しかったのか、ルーシェはオリガの隣に一瞬で移動すると、わけがわからない魔法談議を始めてしまった。
どこの世界の人間も好きな話題になると早口になるのは同じなのか、早口すぎる上に聞き慣れない単語が多すぎて何を言っているのかさっぱりわからない2人の会話に、マヤは早々に聞くことをやめた。
ルーシェが案内してくれないと先に進めないんだけどなあ、とマヤがキョロキョロしていると、目の前の大きな館から2人のメイドが現れる。
2人のメイドはルーシェがオリガの隣に行ってしまったことで結果として先頭にいたマヤの前に来ると、恭しく頭を下げる。
「魔王ルーシェ様と今回招待されているマヤ様御一行でお間違いありませんか?」
「うん、そうだよ」
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
メイドは踵を返すと、そのまま館に向かって歩き出す。
マヤがそれについていくと、カーサもあとに続き、最後に未だ難しすぎる魔法の話をしているオリガとルーシェがついてきた。
ちなみにマッシュは下ろすタイミングを失ってしまったのでマヤが抱っこしたままだ。
「お姉さんたちはこの館のメイドさんなの?」
「いえ、私達は魔王セシリオ様の配下の者です」
「へえ、じゃあ2人は原初の魔王に仕えるメイドさんなんだ」
「そうなりますね」
「強いの?」
マヤのあまりにも直球な質問にも、メイドは嫌な顔ひとつせずに淡々と答えてくれる。
「それなりには。流石にマヤ様配下の悪魔の副官エメリン様には劣りますが」
「流石原初の魔王だね。こんなに綺麗で強いメイドさんがいるなんて」
「恐縮です」
メイドはマヤのお世辞にも淡々と返すと、そのまま廊下を進んでいく。
マヤは腕の中にマッシュがマヤの腕を小さく叩いていることに気がついた。
「わかるか、マヤ?」
「何が?」
緊張した様子のマッシュと対照的に、マヤはのんきに首を傾げる。
「前方から濃密な魔力が流れてきている。化け物クラスの魔力を持った奴らがこの先にいるのだ。本当にわからんのか?」
「うん、全く。カーサ、なにか感じる?」
相変わらず何も感じないマヤは、後ろを歩くカーサを振り返る。
マヤの言葉に、カーサは静かに頷いた。
「うん、魔力は、よく、わから、ない、けど。強者の、気配が、する」
「えっ、じゃあ私だけ何も感じてないの?」
マヤが慌ててルーシェとオリガを振り返ると、2人はまだ魔法談議に花を咲かせている。
ほら、あの二人も何も感じていないみたいだよ、とマッシュに顔を向けるマヤに、マッシュはやれやれとため息をつく。
「マヤ、あれはそもそも片方は正真正銘の化け物で、もう片方も魔力量だけなら化け物クラスだ……。いや、そういうことか」
「どうしたの?」
「おそらくだが、お前は魔力量が多すぎて何も感じないのだろう。ルーシェはともかくオリガまで何も感じていないことを見るに、そういうことなのだろう」
「なるほどねー。でもとりあえず気をつけたほうがいい奴らがこの先にいるってことはわかったよ」
マヤは自分に強化魔法をかけて、もしもの時に備えておく。
「この先で皆様がお待ちです」
「よしっ、それじゃあ入ろうか」
マヤは大きなドアに手をつくと、いつの間にやら隣に来ていたルーシェがマヤに耳打ちする。
「ここから先は、私もマヤを助けてあげられないことがあるかもしれないから、気をつけるんだよ?」
マヤはルーシェの言葉に小さくうなずいて、勢いよくドアを開けた。
ドアを開けた途端、濃密な魔力がマヤの身体を叩いた。
「うわっ! これがマッシュの言ってたやつか」
今度は魔力を感じたマヤは、思わず声を上げながらも、警戒は怠らず前を見据える。
「久しぶりだなルーシェ」
「お久しぶりですセシリオ。大きくなりましたね」
「バカいつの話をしてやがる、これだからババアは」
「ふふっ、私をババア呼ばわりできるのは世界広しといえどあなたくらいでしょうね」
ルーシェは一瞬で魔王としての話し方に切り替えると、そのままマヤの横を抜けて奥の空席に向かって歩き出す。
マヤが改めて部屋を見渡すと、すでに5人の魔王は席についており、手前に1つ空席があった。
「ここが私の席でいいのかな? まあ、良くなくても座っちゃうけど」
ルーシェが奥の席に座ったのとほぼ同時に、マヤも手前の空席に腰を下ろす。
ルーシェが座った位置と、原初の魔王の1人だと聞いているセシリオと呼ばれた中年の男性が座っている位置からして、奥の3人が原初の魔王なのだろう。
「さて、そろったようだな。始めさせてもらおうか」
原初の魔王の最後の一人、マルコスの言葉で魔王会議は幕を開けた。
ルーシェから目隠しを外してもらったマヤは、目の前にそびえ立つ館を見上げて感嘆の声をあげる。
「それにしても、なぜ目隠しをせなばならんのだ? しかも前が見えないだけではなく耳も聞こえなければ匂いもわからなくなる目隠しまで用意してまで場所を隠すとは驚きだ」
マヤに抱っこされていたマッシュの目隠しをマヤが外してあげると、マッシュはルーシェに尋ねた。
「まあ一応まだみんなは部外者だからさ、これくらいしないと他の魔王に説明がつかないんだよね。呼び出しといてこんな扱いはどうなんだって私も思うんだけどさ」
ルーシェがばつが悪そうにしているところを見るに、どうやらルーシェとしては不本意だがそうするしかなかったといった感じなのだろう。
正直マヤとしては、そんなことまでして場所を隠さなくともルーシェのような化け物魔王が少なくともあと2人も参加している魔王会議に忍び込もうなどという命知らずはいないと思うのだが、用心深い魔王がいるのだろう。
あるいは新しい魔王として推薦されたマヤへの嫌がらせかもしれないが。
「私は気にしてませんよ。それよりこの目隠し本当にすごいですね! 思いつく限りの魔法で外の様子を探ろうとしましたが、全部無効化されてしまいました。もしかして魔法ごとに別の無効化魔法が起動してたりします?」
「そうなんだよ! そこに気がつくとは流石オリガちゃん! 実はこの目隠しにはねえ――」
オリガのマニアックな質問が嬉しかったのか、ルーシェはオリガの隣に一瞬で移動すると、わけがわからない魔法談議を始めてしまった。
どこの世界の人間も好きな話題になると早口になるのは同じなのか、早口すぎる上に聞き慣れない単語が多すぎて何を言っているのかさっぱりわからない2人の会話に、マヤは早々に聞くことをやめた。
ルーシェが案内してくれないと先に進めないんだけどなあ、とマヤがキョロキョロしていると、目の前の大きな館から2人のメイドが現れる。
2人のメイドはルーシェがオリガの隣に行ってしまったことで結果として先頭にいたマヤの前に来ると、恭しく頭を下げる。
「魔王ルーシェ様と今回招待されているマヤ様御一行でお間違いありませんか?」
「うん、そうだよ」
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
メイドは踵を返すと、そのまま館に向かって歩き出す。
マヤがそれについていくと、カーサもあとに続き、最後に未だ難しすぎる魔法の話をしているオリガとルーシェがついてきた。
ちなみにマッシュは下ろすタイミングを失ってしまったのでマヤが抱っこしたままだ。
「お姉さんたちはこの館のメイドさんなの?」
「いえ、私達は魔王セシリオ様の配下の者です」
「へえ、じゃあ2人は原初の魔王に仕えるメイドさんなんだ」
「そうなりますね」
「強いの?」
マヤのあまりにも直球な質問にも、メイドは嫌な顔ひとつせずに淡々と答えてくれる。
「それなりには。流石にマヤ様配下の悪魔の副官エメリン様には劣りますが」
「流石原初の魔王だね。こんなに綺麗で強いメイドさんがいるなんて」
「恐縮です」
メイドはマヤのお世辞にも淡々と返すと、そのまま廊下を進んでいく。
マヤは腕の中にマッシュがマヤの腕を小さく叩いていることに気がついた。
「わかるか、マヤ?」
「何が?」
緊張した様子のマッシュと対照的に、マヤはのんきに首を傾げる。
「前方から濃密な魔力が流れてきている。化け物クラスの魔力を持った奴らがこの先にいるのだ。本当にわからんのか?」
「うん、全く。カーサ、なにか感じる?」
相変わらず何も感じないマヤは、後ろを歩くカーサを振り返る。
マヤの言葉に、カーサは静かに頷いた。
「うん、魔力は、よく、わから、ない、けど。強者の、気配が、する」
「えっ、じゃあ私だけ何も感じてないの?」
マヤが慌ててルーシェとオリガを振り返ると、2人はまだ魔法談議に花を咲かせている。
ほら、あの二人も何も感じていないみたいだよ、とマッシュに顔を向けるマヤに、マッシュはやれやれとため息をつく。
「マヤ、あれはそもそも片方は正真正銘の化け物で、もう片方も魔力量だけなら化け物クラスだ……。いや、そういうことか」
「どうしたの?」
「おそらくだが、お前は魔力量が多すぎて何も感じないのだろう。ルーシェはともかくオリガまで何も感じていないことを見るに、そういうことなのだろう」
「なるほどねー。でもとりあえず気をつけたほうがいい奴らがこの先にいるってことはわかったよ」
マヤは自分に強化魔法をかけて、もしもの時に備えておく。
「この先で皆様がお待ちです」
「よしっ、それじゃあ入ろうか」
マヤは大きなドアに手をつくと、いつの間にやら隣に来ていたルーシェがマヤに耳打ちする。
「ここから先は、私もマヤを助けてあげられないことがあるかもしれないから、気をつけるんだよ?」
マヤはルーシェの言葉に小さくうなずいて、勢いよくドアを開けた。
ドアを開けた途端、濃密な魔力がマヤの身体を叩いた。
「うわっ! これがマッシュの言ってたやつか」
今度は魔力を感じたマヤは、思わず声を上げながらも、警戒は怠らず前を見据える。
「久しぶりだなルーシェ」
「お久しぶりですセシリオ。大きくなりましたね」
「バカいつの話をしてやがる、これだからババアは」
「ふふっ、私をババア呼ばわりできるのは世界広しといえどあなたくらいでしょうね」
ルーシェは一瞬で魔王としての話し方に切り替えると、そのままマヤの横を抜けて奥の空席に向かって歩き出す。
マヤが改めて部屋を見渡すと、すでに5人の魔王は席についており、手前に1つ空席があった。
「ここが私の席でいいのかな? まあ、良くなくても座っちゃうけど」
ルーシェが奥の席に座ったのとほぼ同時に、マヤも手前の空席に腰を下ろす。
ルーシェが座った位置と、原初の魔王の1人だと聞いているセシリオと呼ばれた中年の男性が座っている位置からして、奥の3人が原初の魔王なのだろう。
「さて、そろったようだな。始めさせてもらおうか」
原初の魔王の最後の一人、マルコスの言葉で魔王会議は幕を開けた。
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