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序章 死神
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死神・・・死を司る者。死の告知人。
死が間近に迫った者の前に現れ、死の宣告をおこなう者。
そこは街角にある小さな喫茶店。
コーヒーの香りが漂いゆっくりとした時間が流れていた。
「この前、新人が入ったそうね」
幼い感じの残る少女の声。
大きなソファの端にちょこんと座る彼女の名はヒミコ。死神だ。
「ああ、つい先日仲間になった」
ヒミコの隣に立つ大柄でがっしりとした獣人の男が手元の手帳をのぞきこみながら答える。そこには小さな文字でびっしりと書かれたメモ。
彼の名はシン。ヒミコの従者だ。
「それで、実績は?」
「今のところゼロだ」
「はぁ?どういうこと?成りたてで仕事をこなしていない?」
「・・・違う」
「失敗ばかり続いている?」
「それも・・・違う」
どこか歯切れが悪い。
「彼女はこれまでにそれなりの仕事をしている。しかし、納魂数はゼロだ」
「はぁ?」
死神は死の宣告を行うと共に死後の魂の回収も行う。魂を輪廻へと戻し新たな命としての「生」へと導く。
納魂は魂を輪廻へと導く死神にとって重要な仕事だ。
それがゼロということは。
「何なのそいつは」
「イレギュラーな新人といったところか・・・」
「それにしても異常よ。彼女の担当区域は?」
ヒミコと同じ区域であれば、いずれ顔を合わせるかもしれない。
面倒くさいことはゴメンだとその瞳が訴えていた。
「分からない・・・今のところ情報が少ない」
シンは言葉をにごす。言わなかった。否、言えなかったというところが正解だ。
(まさか、全域を担当しているとはとても言えん)
情報を見た時、シンですら我が目をうたがった。
そんな話は聞いたことがない。
それが本当であれば、その新人は現世だけでなく現在過去未来、異界ですら活動領域とすることになる。
規格外もいいところだ。
「彼女は人間だ」
「人間?」
そんなバカな。
人間から死神になるなどありえない。
過去に例がなかったわけではない。
しかし、死神はなりたくてなるものではない。ましてやなりたいとしてもなれるものでもない。
「・・・面白いじゃない」
不敵な笑み。
「楽しそうだな」
「ええ、ワクワクする」
死神は忌み嫌われる存在。
皆が恐れ、すぐに忘れ去られる存在。
なぜなら、死神に出会った者は数日のうちに命を落とすのだから・・・
「見届けようじゃない。その人間の死神を!」
ヒミコはシンを見つめる。
ヒミコはポンと手を打った。
「さて、仕事の話しは終わりよ」
「・・・そうだな」
「座って」
「分かった」
「違う!そこに座るんじゃなくてココに座って!」
ヒミコは体をずらし、自分の隣をバンバンと叩く。
「ヒミコ」
「なに?」
「オレはお前の従者だ」
「それが?」
そっぽを向きソワソワとコーヒーを口に運ぶ。
「やっぱり・・にがい」
落ち着きのない態度にシンは小さくため息をついた。
ご主人の機嫌をなだめるのも従者の役目だ。
「分かった」
シンが座る。柔らかいソファにぐっと沈む。
当然のことながらヒミコがシンにもたれかかった。
「・・・なでて」
「・・・・?」
「私をなでなさい!ずっと頑張っているんだから!」
またかとシンは小さくため息をつく。
この少女が死神界のナンバーワンなのだから、この世界も案外せまいのかもしれない。
「お前はずっと頑張っているな」
なでなで。
「知ってる」
「お前は世界一の死神だ」
なでなで。
「知ってる」
ヒミコはニンマリとなり腕にからみつく。
(・・・いつまでこうしていればいいんだ)
シンは隣で満足そうにしがみつく主を見ながら小さくため息をついた。
死が間近に迫った者の前に現れ、死の宣告をおこなう者。
そこは街角にある小さな喫茶店。
コーヒーの香りが漂いゆっくりとした時間が流れていた。
「この前、新人が入ったそうね」
幼い感じの残る少女の声。
大きなソファの端にちょこんと座る彼女の名はヒミコ。死神だ。
「ああ、つい先日仲間になった」
ヒミコの隣に立つ大柄でがっしりとした獣人の男が手元の手帳をのぞきこみながら答える。そこには小さな文字でびっしりと書かれたメモ。
彼の名はシン。ヒミコの従者だ。
「それで、実績は?」
「今のところゼロだ」
「はぁ?どういうこと?成りたてで仕事をこなしていない?」
「・・・違う」
「失敗ばかり続いている?」
「それも・・・違う」
どこか歯切れが悪い。
「彼女はこれまでにそれなりの仕事をしている。しかし、納魂数はゼロだ」
「はぁ?」
死神は死の宣告を行うと共に死後の魂の回収も行う。魂を輪廻へと戻し新たな命としての「生」へと導く。
納魂は魂を輪廻へと導く死神にとって重要な仕事だ。
それがゼロということは。
「何なのそいつは」
「イレギュラーな新人といったところか・・・」
「それにしても異常よ。彼女の担当区域は?」
ヒミコと同じ区域であれば、いずれ顔を合わせるかもしれない。
面倒くさいことはゴメンだとその瞳が訴えていた。
「分からない・・・今のところ情報が少ない」
シンは言葉をにごす。言わなかった。否、言えなかったというところが正解だ。
(まさか、全域を担当しているとはとても言えん)
情報を見た時、シンですら我が目をうたがった。
そんな話は聞いたことがない。
それが本当であれば、その新人は現世だけでなく現在過去未来、異界ですら活動領域とすることになる。
規格外もいいところだ。
「彼女は人間だ」
「人間?」
そんなバカな。
人間から死神になるなどありえない。
過去に例がなかったわけではない。
しかし、死神はなりたくてなるものではない。ましてやなりたいとしてもなれるものでもない。
「・・・面白いじゃない」
不敵な笑み。
「楽しそうだな」
「ええ、ワクワクする」
死神は忌み嫌われる存在。
皆が恐れ、すぐに忘れ去られる存在。
なぜなら、死神に出会った者は数日のうちに命を落とすのだから・・・
「見届けようじゃない。その人間の死神を!」
ヒミコはシンを見つめる。
ヒミコはポンと手を打った。
「さて、仕事の話しは終わりよ」
「・・・そうだな」
「座って」
「分かった」
「違う!そこに座るんじゃなくてココに座って!」
ヒミコは体をずらし、自分の隣をバンバンと叩く。
「ヒミコ」
「なに?」
「オレはお前の従者だ」
「それが?」
そっぽを向きソワソワとコーヒーを口に運ぶ。
「やっぱり・・にがい」
落ち着きのない態度にシンは小さくため息をついた。
ご主人の機嫌をなだめるのも従者の役目だ。
「分かった」
シンが座る。柔らかいソファにぐっと沈む。
当然のことながらヒミコがシンにもたれかかった。
「・・・なでて」
「・・・・?」
「私をなでなさい!ずっと頑張っているんだから!」
またかとシンは小さくため息をつく。
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「お前はずっと頑張っているな」
なでなで。
「知ってる」
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なでなで。
「知ってる」
ヒミコはニンマリとなり腕にからみつく。
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シンは隣で満足そうにしがみつく主を見ながら小さくため息をついた。
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