兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち

文字の大きさ
30 / 31

23.お茶を用意してくれる友がいるので

しおりを挟む
「シャル?」

 困惑した顔の兄の顔を見つめながら私は息を大きく吸う。
 
「あんな怪我なんで隠したの! なんで、悪化するまで放っておくの! ……なんで、話してくれなかったの?」
「ごめん」
 
 しょんぼりと謝罪を口にする兄。今はまだ謝罪を受け入れるときじゃない。
 
 「質問に答えて!」
 
 そう畳みかけると、兄は口をつぐむ。何かを考えるように目をつむった。
 
「……心配かけたくなかった。シャルが、悲しむ顔を、見たくなかったんだ」
「私、大泣きしたのよ。意識のない兄さまの横で」
「私の身勝手だ。……シャルを悲しませてしまった」
「そう、身勝手! 兄さまは私を優先しすぎるの! 怪我をしたときくらい私を一番にするのやめて!」
「いや、でも。私はシャルが一番、それは変えられないよ……」
 
「違う! 兄さまが私を大事なのと同じくらい、私も兄さまが大事なの! 私が怪我隠してたらどう思う!?」
 
 そこまで言い切ると、兄の目が大きく見開かれた。
 少し考えているようで、だんだんと目が潤み始めている。

「……それは、とても悲しい」
「でしょ? 私の気持ちわかった?」

 何度も頷く兄を見て私はやっと椅子に腰かけた。

「シャーロット。本当に、すまなかった。もうこういうことはしない」
「えぇ。絶対にしないでね」

 私の気持ちを吐き出したら、謝罪はすんなり受け入れることができた。
 後ろに控えてくれていたレイが隣に来て肩に手を置く。

「言いたいこと全部言えたか?」

 レイを先に行かせて残ったこととか、まだいろいろ言いたいことはあるがきりがない。
 それは言わなくていいかと思っていると、兄がでも、と口を開く。

「シャルも、襲撃者に睡眠薬のませるみたいなのは危なすぎるから、やめてほしい」
「兄さまもレイを先に行かせて残ったじゃない。あれは危ないことじゃないの?」
「それとこれとは話が」
「同じでしょ?」

 これに関しては譲れない。私が唇を尖らせると、兄は困ったように眉を八の字にする。
 互いに譲れないらしい。
 
 膠着状態になった私たちの横でレイがケーキを準備し始めた。

「それ、喧嘩が終わったらって言ってなかった?」

 そう聞くと、レイは今がちょうどいい、と言いながら紅茶をカップに注いだ。

「お互い様で終わらせたほうがいいこともあるだろ」
 
 レイは怪訝な顔を作って話を続ける。
 
「このままだと、オレにとばっちりが来る」

 兄と二人、顔を見合わせる。
 兄を置いて、一人で先に屋敷へ走ったレイも十分危ないことをしていた。
 だから、私はこれが終わったらレイにも文句を言おうと思っていたのだ。

 見透かされていたようで面白くない。

 どうやらそれは兄も同じようだった。
 向かいに座る兄のいたずらがバレたと言いたそうな顔を見て、思わず笑った。

「……デイビットもシャーロットもはそういうところあるよな」
 
 兄妹なんだよ。結局。レイがそう言ってため息をついている。
 
 どういうところだろう。そう思っているとレイがまたため息をつく。

「まったく同じ顔してる」

 その言葉に、兄がこちらを見て、すぐに文句のありそうな顔をしてレイのほうを向く。

「シャルのほうがかわいいだろう!」
「当たり前のことを言うな!」

 兄がレイに、当たり前のことでも言葉にしなくては、だとか、お前は言葉にしなさすぎる、だとか言っている。
 正直、同じことを兄にも言ってやりたいなと思いながら、兄とレイが楽しそうに言い争っているのを見ながら紅茶を飲んだ。

 レイは紅茶をいれるのもとても上手だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】契約結婚のはずが、冷酷な公爵の独占欲が強すぎる!?

22時完結
恋愛
失われた信頼を取り戻し、心の壁を崩していく二人の関係。彼の過去に迫る秘密と、激しく交錯する感情の中で、愛を信じられなくなった彼は、徐々にエリーナに心を開いていく。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

処理中です...