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第4話 ジン(1)
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あの時、もうこの人生はダメかと思った。
自暴自棄になって、滅茶苦茶な人生にしてしまうんだと思った。
17年やそこら生きてきただけで。
***
高2の年明け、体調が優れず起きられなかった。
身体全体が怠く重い。
どこか腫れぼったいようで、どこかでずっと鈍痛が続いていた。
最初は風邪のひき始めかと思っていたが、あまりに続くのでかかりつけの病院に行った。
あれこれ検査を受けたが、どこも異常はなかった。
俺の症状を聞いて医者は「もしかしたら、ということがあるかもしれないので」とゼン先生を紹介してくれた。
先生は俺から話を聞くとセックステストを受けるように言った。
なぜかと問うと、
「ジンの症状は、未熟なオメガの初めての発情期の前の症状に似ているから」
と、さらりと言った。
俺は「まさか」と思った。
ずっとアルファとして生きてきた。
両親ともアルファだ。
自分がベータや、ましてやオメガだなんて考えられなかった。
俺はゼン先生を笑い飛ばしてやろうと思い、テストを受けた。
結果はオメガだった。
信じられなくて結果を強引に見せてもらうと、くっきりとオメガのところに試薬の反応が出ていた。
冗談だと思った。
不安定になった俺を気遣って、ゼン先生は両親を呼んでくれた。
でも、その時の俺はそれさえもイラつかせるだけだった。
まさか。
俺がオメガ…?
ゼン先生は月に一回の受診を勧め、親に説明をしていた。
俺はそんなもの、聞いていられなかった。
俺が?
オメガ?
まさか?
そればかりが渦巻いていた。
それからの一か月はこれまでと変わらなく過ごした。
学校ではそのままアルファとして振る舞った。
いつ俺がオメガだとバレるかと思うと気が気ではなかった。
しかし、体調が戻るとそれまでと同じようになんでもできたので、俺はゼン先生の診断を「誤診」と思うことにした。
一か月後、母親にまた無理矢理病院に連れてこられた。
そのとき、何かの香りに気づいた。
が、それは正体を確かめる間もなくすぐに消えてしまった。
その日、診察の後ゼン先生は俺には無用の知識だった「オメガとして必要な知識と行動」についてのアリガタイご講義をご教授してくださった。
必要あるものか。
俺は話半分に聞いていた。
それよりも今つるんでいるやつらの家で、今度大きな集まりがある。
俺も招待を受けていて、なにを着ていくかを考えていた。
こういったイベントで顔見知りになった人とのつながりが、大学や卒業後、大きくものを言うことが多い。
できれば、見た目も中身もいい女にも出会いたい。
それが、だ。
3年に進級して間もなくのことだった。
放課後、愛用しているノートを買おうと出かけたところ、自分の身体の内側からひどい衝撃を受けた。
一体、自分になにが起こっているのかわからなかった。
カッと体温が上昇し、立っていられないくらい呼吸が激しくなった。
身体が切なかった。
なにかを求めてしまう。
肌にふれる服の摩擦でさえ、強い刺激になる。
欲しかった。
そこまできて、俺は自分を否定した。
まさか、そんなもの俺が欲しがるはずがない。
しかし、その衝動は激しさを増す。
欲しい。
欲しい。
突き入れ、動かし、腰を揺らし、奥に放ってほしい。
自分が欲しているものを想像するとカーーーーッと顔が赤く熱くなるのがわかった。
なにを考えているんだ、俺。
それは「考える」ものではなかった。
身体の奥底から抗いようもない欲望が這い上がる。
ヒートだ!
認めたくはなかったが、俺のアルファとしての知識でも、これはどうやってもヒートの症状としか考えられなかった。
くらりとめまいがする。
息が上がる。
思い出すゼン先生の言葉。
どうしてあのとき、もっときちんと聞いていなかったんだろう。
未熟なオメガはヒートに身体が慣れていないため、失神することもある。
失神したオメガをアルファが犯すこともある。
いつヒートが来てもいいように、発情期抑制剤と避妊薬を常時携帯するように。
望まない番関係を持たないようにネック・プロテクターを装着するのを勧める。
俺には全部、関係のないことだと思っていた。
それが、自分の身体に起こっている。
俺はビルとビルの間の狭い路地に入り込んだ。
せめてアルファからの強姦のリスクを少しでも低くしたかった。
火照る身体と激しい呼吸、そして乱れる欲望に翻弄され、だんだんめまいがひどくなり意識が遠のいてきた。
その中で思ったんだ。
俺はこの人生はもうダメだと思った。
アルファに犯されて、人生を滅茶苦茶にされ、それを悔いてずっと荒れた人生を送るのかもしれない、と思った。
耐えられなくて自殺するのかもしれない、とも考えた。
そう思いながら、俺は崩れ落ちたこともわからなくなっていった。
自暴自棄になって、滅茶苦茶な人生にしてしまうんだと思った。
17年やそこら生きてきただけで。
***
高2の年明け、体調が優れず起きられなかった。
身体全体が怠く重い。
どこか腫れぼったいようで、どこかでずっと鈍痛が続いていた。
最初は風邪のひき始めかと思っていたが、あまりに続くのでかかりつけの病院に行った。
あれこれ検査を受けたが、どこも異常はなかった。
俺の症状を聞いて医者は「もしかしたら、ということがあるかもしれないので」とゼン先生を紹介してくれた。
先生は俺から話を聞くとセックステストを受けるように言った。
なぜかと問うと、
「ジンの症状は、未熟なオメガの初めての発情期の前の症状に似ているから」
と、さらりと言った。
俺は「まさか」と思った。
ずっとアルファとして生きてきた。
両親ともアルファだ。
自分がベータや、ましてやオメガだなんて考えられなかった。
俺はゼン先生を笑い飛ばしてやろうと思い、テストを受けた。
結果はオメガだった。
信じられなくて結果を強引に見せてもらうと、くっきりとオメガのところに試薬の反応が出ていた。
冗談だと思った。
不安定になった俺を気遣って、ゼン先生は両親を呼んでくれた。
でも、その時の俺はそれさえもイラつかせるだけだった。
まさか。
俺がオメガ…?
ゼン先生は月に一回の受診を勧め、親に説明をしていた。
俺はそんなもの、聞いていられなかった。
俺が?
オメガ?
まさか?
そればかりが渦巻いていた。
それからの一か月はこれまでと変わらなく過ごした。
学校ではそのままアルファとして振る舞った。
いつ俺がオメガだとバレるかと思うと気が気ではなかった。
しかし、体調が戻るとそれまでと同じようになんでもできたので、俺はゼン先生の診断を「誤診」と思うことにした。
一か月後、母親にまた無理矢理病院に連れてこられた。
そのとき、何かの香りに気づいた。
が、それは正体を確かめる間もなくすぐに消えてしまった。
その日、診察の後ゼン先生は俺には無用の知識だった「オメガとして必要な知識と行動」についてのアリガタイご講義をご教授してくださった。
必要あるものか。
俺は話半分に聞いていた。
それよりも今つるんでいるやつらの家で、今度大きな集まりがある。
俺も招待を受けていて、なにを着ていくかを考えていた。
こういったイベントで顔見知りになった人とのつながりが、大学や卒業後、大きくものを言うことが多い。
できれば、見た目も中身もいい女にも出会いたい。
それが、だ。
3年に進級して間もなくのことだった。
放課後、愛用しているノートを買おうと出かけたところ、自分の身体の内側からひどい衝撃を受けた。
一体、自分になにが起こっているのかわからなかった。
カッと体温が上昇し、立っていられないくらい呼吸が激しくなった。
身体が切なかった。
なにかを求めてしまう。
肌にふれる服の摩擦でさえ、強い刺激になる。
欲しかった。
そこまできて、俺は自分を否定した。
まさか、そんなもの俺が欲しがるはずがない。
しかし、その衝動は激しさを増す。
欲しい。
欲しい。
突き入れ、動かし、腰を揺らし、奥に放ってほしい。
自分が欲しているものを想像するとカーーーーッと顔が赤く熱くなるのがわかった。
なにを考えているんだ、俺。
それは「考える」ものではなかった。
身体の奥底から抗いようもない欲望が這い上がる。
ヒートだ!
認めたくはなかったが、俺のアルファとしての知識でも、これはどうやってもヒートの症状としか考えられなかった。
くらりとめまいがする。
息が上がる。
思い出すゼン先生の言葉。
どうしてあのとき、もっときちんと聞いていなかったんだろう。
未熟なオメガはヒートに身体が慣れていないため、失神することもある。
失神したオメガをアルファが犯すこともある。
いつヒートが来てもいいように、発情期抑制剤と避妊薬を常時携帯するように。
望まない番関係を持たないようにネック・プロテクターを装着するのを勧める。
俺には全部、関係のないことだと思っていた。
それが、自分の身体に起こっている。
俺はビルとビルの間の狭い路地に入り込んだ。
せめてアルファからの強姦のリスクを少しでも低くしたかった。
火照る身体と激しい呼吸、そして乱れる欲望に翻弄され、だんだんめまいがひどくなり意識が遠のいてきた。
その中で思ったんだ。
俺はこの人生はもうダメだと思った。
アルファに犯されて、人生を滅茶苦茶にされ、それを悔いてずっと荒れた人生を送るのかもしれない、と思った。
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そう思いながら、俺は崩れ落ちたこともわからなくなっていった。
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