高校生なのに娘ができちゃった！？

冒頭

『助けて、ヒーロー』
　かつて、その言葉を聞いたのは遠い昔。
　この言葉を聞いたら、俺はいつも助けていた。知り合いから、赤の他人まで。
　その時俺は憧れていたのだ。ヒーローというものに。
　ヒーローとは、物語の主人公であり、英雄。どんな局面でもめげず、どんな困難でも立ち向かい勝利する存在。
　俺はそれになりたかった。子供の時からずっとなれると信じてなろうと努力した。
　でも、俺はただの人間。漫画やアニメのような能力もない。
　だから、俺は守れなかった。一人の少女を。
　そこから、俺の夢は砕け散った。いや、夢というよりもあれは理想に過ぎなかったのだ。
　子供が夢見る愚かな理想。それがヒーローだった。
　やがてヒーローは俺の中から薄れていって――俺はヒーローからはほど遠い不良というものに成れ果ててしまった。
　不良と言われるようになった原因は、この嫌でも目立つ銀色の髪にあるのだろうが、やはり一番の原因となったのは俺の素行の悪さだろう。
　まぁ、それからはいつも怠惰な日常を過ごしている。
　今じゃヒーローなんてもんになろうとしていた自分がいつだったのかも覚えてはいない。
　いや、もう忘れたままでいい。俺はずっとこのまま、この状態を維持し続ければいい。
　進んでいる道に、未来はない。――俺はもう疲れた。
　これでもういい。新しい道を開拓する気力もなくなった。
　出来ることならこの体を幽霊か何かにあげてやりたい。きっとそいつらの方が上手くこの体を使ってくれるだろうから。
　しかし。
　高校二年生の十二月十日。そろそろ受験に向けて他の生徒たちが準備し始めるこの月に。
　異変が、起こった。
　それも普通じゃない。
　非科学的な、異変が。