高校生なのに娘ができちゃった!?

まったりさん

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永久の木

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「入るぞー」
 そう一言言ってから、俺はその部屋に入った。
 ここはあるビルの三階の突き当たりにある部屋だ。ビルにあるので単なる部屋というわけではない。ここは金貸しを主な生業とする会社のようなものだ。金貸し以外には情報などを提供したりしている。
 現在従業員は二人。俺とこの部屋の所有者だ。
「いっつも言ってる通りノックをしてくれると嬉しいんだけど?」
「ノックしても返事がねえのがお前だろうが」
 部屋は大体八畳程度。高そうな革製のソファーが対極に二つ鎮座しており、その間に長机が置かれている。そしてその奥には褐色の大きなデスクがあり、様々なものが溢れ返っていた。
「心外だね、僕はちゃんといつもいつもどうぞって言ってるよ? 心の中で」
「悪いが俺はテレパシーなんてもんは使えないんでね、お前のどうぞなんて全然聞こえやしねえんだよ」
 遠慮なくソファーに寝っ転がる俺。デスクの向こう側の椅子から呆れたようなため息が漏れた。
「本当に君は図々しいね」
「褒め言葉と受け取っておく」
 デスクの向こう側にある椅子には一人の男が腰かけていた。
 髪を金色に染め上げているそいつの名は雨水夜兎(うすいやと)。改造された学ランのボタンを全て外しており、サングラスを額にかけているいかにも怪しげな男だ。
 そんな夜兎は、俺の唯一無二の親友だ。一年前、こいつと出会い、なぜか馬が合い、気づいたらこいつの企業とやらに雇われていた。
「で、どうかしたの? 僕は退屈だから喋り相手がいるのは嬉しいけど、どうして学校をサボったんだい? 単位がヤバいとか言ってたじゃないか」
「あー、まぁ色々と厄介なことがあってな」
 俺は一通り変な転校生について説明した。こいつに隠しごとをする気はない。正直に言えば俺はこいつにかなりの信頼を寄せている。何でなのだろうか、その理由は自分でもわからなかった。
 話し終えると、夜兎は声に出して笑い始めた。
「あはははっ! 何だよそれ! 面白い、面白いよ! 柚季をパパだなんて、ハハッ、こりゃ傑作だ! ――面白い話をしてくれた礼だ、ほら百円」
「おう、サンキュー」
 投げられた百円を受け取る。
 今更だが、夜兎は異常なまでに変人だ。こいつはいつも退屈しているらしい。だからこそ珍しいことがあればすぐに聞き出す。どんな犠牲を払ってでもだ。
 世界でもここまで退屈にしている奴はお目にかかれないだろう。ある意味俺は幸運なのかもしれない。
「で、その子結局どうしたの?」
「うるせえ生徒会長に渡した。お前とは違って俺はそこまで退屈じゃねえんでな」
「でも面白いね。本当に彼女が柚季の娘だったら、彼女は未来からやってきた未来人ってことになる。あは、面白いことになりそうだ」
「馬鹿言え、非科学的だ」
「何言ってるんだ。非科学ならこの秋気島(しゅうきじま)にだってあるだろ。ほら、あの――」
「永久(とわ)の木だろ」
 俺たちの住むこの秋気島には非科学的な大木が島の中央にそびえている。
 通称『永久の木』。
 なぜそう命名されたのかというと、その木が一切変化しないことが理由だ。
 永久の木は、ずっと紅葉の葉をつけている。他の葉をつけたことが一切ないのだ。
 とある番組で老人たちに永久の木は昔も紅葉だったのかと聞くと、全員口を揃えて紅葉だったと答えている。
 秋気島、と名付けられたのはこの永久の木が原因だ。永久の木の葉が桜ならば春にちなんだ名前になったのだろうが永久の木の葉はいつまでも紅葉。
 紅葉と言えば秋だろうということから秋気島と名づけられたらしい。詳しいことは俺も知らない。ただ、秋気島にそんな非科学的な木があるから、観光客が多いらしい。
「あの謎、解けたら面白いとは思わない?」
「確かに面白いだろうが、色んな学者が調べても全て空振りだったんだ。素人同然の俺たちがしても意味はねえだろ」
「だよね。――じゃ、仕事でもして気でも紛らわせようか。今柚季は暇?」
「暇だが、まだ返さない奴がいるのか?」
 起き上がってから聞き返す。
 俺がこの仕事でやるのは金を返さない奴らのもとに向かい、金を返してもらうようにするのが仕事だ。無論俺たちはまだ高校生なので大人にはあまり貸してはいないが、高校生にはかなりの人数に貸している。
「うん、そうだね。名前は高橋順平。ここから十万借りて未だに返してないね。かれこれ数ヵ月。利子も入ってるから二十万ちょいだね。……というわけで裁きを加えてきてくれるかな? いつも通り。後、これが写真ね」
 放り投げられた写真をキャッチしつつ、俺は問い尋ねた。
「報酬は幾らだ」
「八万でどうかな?」
「八万……まぁいいか。そいつは今どこにいる」
「すぐ近くのゲーセンだね。高橋順平はいつも学校をサボってそこに行ってる。とにかくそいつボコして出来るならここに連れてきて」
「了解だ。んじゃ、一時間くらいで帰ってくる」
 手をひらひらと振りながら俺は部屋を出た。
 首をこきおきと鳴らしながら、俺は一人ごちる。
「まったく、俺は何してんだか」
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