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悪夢
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「――ッ!?」
最悪な目覚めだった。意識は覚醒したが体は重く起き上がることさえもだるいと感じる。
でもまさか、今更あんな夢を見るとは思わなかった。
約一ヵ月振りだ。あの悪夢を見るだなんて。
お陰で寝覚めは悪過ぎる。意識はあるが、瞼が重た過ぎて開けられない状況にもある。
そもそも今は何時なのだろうか。六時か、七時か、もしくは八時か。
まぁそんなこと押し入れから出て確かめればいいだけの話だ。
そう考えた俺は薄く目を開いた。そして視界に映ったのは、
こちらをにこにことしながら凝視する少女の姿だった。
――こいつは、ああ……彼方か。
というかこいつの顔が見えるってことは俺は寝ている最中に寝返りを打ったのだろう。自分じゃ気づかなかったがどうにも俺は寝相が少し悪いらしい。
「何してんのお前」
「パパの寝顔をずっと見てました」
「いつから」
「一時間ほど前ですかね」
よく目覚ましもなしにそんな時間に起きれるものだ。
「ずっとパパ、うなされてましたからね。その呻き声で思わず起きちゃったんですよ」
「うなされてる姿を見てお前はそうやってにこにこと見てたのか、変態を通り越して鬼畜だな」
「いえいえ、うなされている最中は本気で心配したんですよ? このままうなされ続けてたらどうしようって。今笑っているのはパパが起きたからですよ。起きて目の前にいる女が辛気臭い顔をしていたらせっかくの清々しい朝が台なしになってしまいますからね」
「毎日朝は憂鬱だ」
特に寝起きがいつも憂鬱である。
「今何時だ、彼方」
せっかくなので聞いてみた。
「わかりませんよそんなこと」
「仕方がねえ。眠たいが、起きなきゃな。こんな場面、遠江に見られたらシャレになんね」
ガチャ。
「あ?」
扉の開ける音のような、そんな音が部屋を木霊し、続いて甲高い少女の声が響いた。
「柚季ー。起きてる?」
「っ!?」
その聞き覚えのある声を聞いた瞬間、俺の額、首筋などから膨大な冷や汗が流れ出した。
「まさか、ママ――!? 本当に能天気にやってくるなんて」
「言っただろう、あいつは真面目そうに見えるが本質は阿呆なんだよ」
小声で会話しながら俺はひたすら思案する。
どうする。どうやってこの絶望的な状況を打破する。
このまま隠れるか? いや、駄目だ。居間には一式の布団があり、それが抜け殻と遠江が知ったら間違いなく――この押し入れの中に押し込んでくる。
結果見つかってバッドエンド。校内新聞で俺の不埒な写真が掲載され、蔑むような目で生徒たちが俺を見ることだろう。
だったら答えは一つに絞られている。ここから出るのだ。
しかし二人同時に出てはもちろん駄目だ。まず俺が出て、遠江が出て行った後彼方を押し入れから出させる。完璧だ。
余談だが、図々しい遠江は俺の家では朝ご飯を食べていかない。なぜなら、遠江は生徒会長で、こんな場所で油を売る時間などないからだ。だからいつも遠江は俺を起こしてはすぐに学校に行っている。
「――よし、行くか。彼方、お前は布団に包まって身を隠すんだ」
「りょ、りょーかいです」
「ミッションスタートだ……!」
小声で宣言し、俺はゆっくりと襖を開けて部屋の床に降り立った。そしてすぐに流れるような動作で襖を閉める。
「何でそんなとこで寝てんのよアンタは」
呆れ果てたような顔で遠江は呟く。
「いや、大して意味はねえよ。ただあの某猫型ロボットの寝床は気持ちよかったのかなと思ってな」
「気持ちよかったの」
「悪夢を見た」
「最悪じゃない」
やれやれとこめかみを押さえる遠江に対し、今更俺は己の犯した失態に気づいた。
――そういえば遠江は彼方がここに住んでるって知ってたんだった! マズい! 彼方ちゃんはどこにいるのって言われたらどう言い訳すればいい! 考えろ、考えろ!
表情には出さないが、心の中で尋常じゃないほど意識を集中させながら考えていると、突然遠江が背を向けた。
「んじゃね。学校行くわ。アンタもちゃんとくんのよ?」
と言って、ドアノブに手をかけ、捻り押し上げた。
「お、おう。わかった」
俺は少し呆然としながらも返答しその背中を見送った。
「あいつ、寝ぼけてたのか?」
静寂に包まれた部屋の中で俺は小首を傾げながら呟いた。
最悪な目覚めだった。意識は覚醒したが体は重く起き上がることさえもだるいと感じる。
でもまさか、今更あんな夢を見るとは思わなかった。
約一ヵ月振りだ。あの悪夢を見るだなんて。
お陰で寝覚めは悪過ぎる。意識はあるが、瞼が重た過ぎて開けられない状況にもある。
そもそも今は何時なのだろうか。六時か、七時か、もしくは八時か。
まぁそんなこと押し入れから出て確かめればいいだけの話だ。
そう考えた俺は薄く目を開いた。そして視界に映ったのは、
こちらをにこにことしながら凝視する少女の姿だった。
――こいつは、ああ……彼方か。
というかこいつの顔が見えるってことは俺は寝ている最中に寝返りを打ったのだろう。自分じゃ気づかなかったがどうにも俺は寝相が少し悪いらしい。
「何してんのお前」
「パパの寝顔をずっと見てました」
「いつから」
「一時間ほど前ですかね」
よく目覚ましもなしにそんな時間に起きれるものだ。
「ずっとパパ、うなされてましたからね。その呻き声で思わず起きちゃったんですよ」
「うなされてる姿を見てお前はそうやってにこにこと見てたのか、変態を通り越して鬼畜だな」
「いえいえ、うなされている最中は本気で心配したんですよ? このままうなされ続けてたらどうしようって。今笑っているのはパパが起きたからですよ。起きて目の前にいる女が辛気臭い顔をしていたらせっかくの清々しい朝が台なしになってしまいますからね」
「毎日朝は憂鬱だ」
特に寝起きがいつも憂鬱である。
「今何時だ、彼方」
せっかくなので聞いてみた。
「わかりませんよそんなこと」
「仕方がねえ。眠たいが、起きなきゃな。こんな場面、遠江に見られたらシャレになんね」
ガチャ。
「あ?」
扉の開ける音のような、そんな音が部屋を木霊し、続いて甲高い少女の声が響いた。
「柚季ー。起きてる?」
「っ!?」
その聞き覚えのある声を聞いた瞬間、俺の額、首筋などから膨大な冷や汗が流れ出した。
「まさか、ママ――!? 本当に能天気にやってくるなんて」
「言っただろう、あいつは真面目そうに見えるが本質は阿呆なんだよ」
小声で会話しながら俺はひたすら思案する。
どうする。どうやってこの絶望的な状況を打破する。
このまま隠れるか? いや、駄目だ。居間には一式の布団があり、それが抜け殻と遠江が知ったら間違いなく――この押し入れの中に押し込んでくる。
結果見つかってバッドエンド。校内新聞で俺の不埒な写真が掲載され、蔑むような目で生徒たちが俺を見ることだろう。
だったら答えは一つに絞られている。ここから出るのだ。
しかし二人同時に出てはもちろん駄目だ。まず俺が出て、遠江が出て行った後彼方を押し入れから出させる。完璧だ。
余談だが、図々しい遠江は俺の家では朝ご飯を食べていかない。なぜなら、遠江は生徒会長で、こんな場所で油を売る時間などないからだ。だからいつも遠江は俺を起こしてはすぐに学校に行っている。
「――よし、行くか。彼方、お前は布団に包まって身を隠すんだ」
「りょ、りょーかいです」
「ミッションスタートだ……!」
小声で宣言し、俺はゆっくりと襖を開けて部屋の床に降り立った。そしてすぐに流れるような動作で襖を閉める。
「何でそんなとこで寝てんのよアンタは」
呆れ果てたような顔で遠江は呟く。
「いや、大して意味はねえよ。ただあの某猫型ロボットの寝床は気持ちよかったのかなと思ってな」
「気持ちよかったの」
「悪夢を見た」
「最悪じゃない」
やれやれとこめかみを押さえる遠江に対し、今更俺は己の犯した失態に気づいた。
――そういえば遠江は彼方がここに住んでるって知ってたんだった! マズい! 彼方ちゃんはどこにいるのって言われたらどう言い訳すればいい! 考えろ、考えろ!
表情には出さないが、心の中で尋常じゃないほど意識を集中させながら考えていると、突然遠江が背を向けた。
「んじゃね。学校行くわ。アンタもちゃんとくんのよ?」
と言って、ドアノブに手をかけ、捻り押し上げた。
「お、おう。わかった」
俺は少し呆然としながらも返答しその背中を見送った。
「あいつ、寝ぼけてたのか?」
静寂に包まれた部屋の中で俺は小首を傾げながら呟いた。
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