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クリスマスイブ
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なぜなのだろうか。彼方とともにいる時間はなぜか早く、いつの間にか俺たちの生活は二週間目に突入しようとしていた。
学園では俺のポジションはいつも通りとなった。どうやら澤口への恫喝がクラスメイトにも伝わったらしく、話しかけるものは一切――いや、彼方と秋紅葉を除いていなくなった。
そんな学園もすでに冬休みに突入しており、今日はその数日が経った日なのである。
そして、今日というこの日は、俺にとってはとてつもなく憂鬱な日だ。
なぜなら、嫌な思い出全てを思い出してしまうから。
今日、十二月二十四日クリスマスイブ。
この日は――遠江光の命日だった。
「足クソだるい」
雪がパラパラと降る夜道を歩きながら俺は一言ぼやいた。
「出てから三秒しか経ってませんよ」
隣にいた彼方が冷静に突っ込みを入れる。しかしだるいものはだるい。しかも行く先があの家だというのがさらにだるい。
「はぁ~」
「? 一体どうしたんですか、パパ。さっきから本当に気だるそうに。そんなにママの家に行くのが嫌なんですか?」
そう、今俺たちが向かっている家とは遠江家のことだ。本当ならば行きたくないのだが、遠江にくるのよ、とお願い(命令)されてしまったため、行くしかなかったのだ。ちなみに彼方の同伴もオッケーらしい。
まぁ、あいつが今日わざわざ俺を家に招待したのはやはり、今日があいつの命日だからなのだろう。そうでなければ、呼ぶ理由がない。
「つーか何でこんな近いんだよ。数キロ離れてろよ」
徒歩十五秒。遠江家に到着した。マジで早い。心の準備すら出来てないっていうのに。
「ふぉー、ここがママの家ですか」
彼方は目の前にそびえ立つ三階建ての一軒家を見て、その後数メートル離れている俺たちのアパートに視線を向けて、
「雲泥の差ですね」
「じゃあお前はこっちに明日から住め……!」
苦情を言うなら出て行け。そんな意味を込めて呟いた。しかし彼方はさらっとスルーをして、遠江家のインターホンを鳴らした。
「っておい! もう鳴らすのかよ!」
「え? 鳴らさない方がよかったですか?」
と言いながら、彼方は他人の家だというのに勝手にドアを引いた。
「遅かったな」
そこに男が立っていた。
「「うわあああああああああああああッッ!?!?」」
俺と彼方はほぼ同時のタイミングで近所迷惑になりかねない声量で悲鳴を上げた。
「って……」
ぎっしりとした体格、逆立てた黒色の髪、まるでヤクザなのかと錯覚するほどの鋭い瞳。
――この人は。
「お、お久しぶりです……隆弘さん……」
遠江隆弘。正真正銘の、遠江瞬華の父である。特徴はヤクザにしか見えないその怖すぎる顔だ。しかし、隆弘さんの実態は逆で――
「一年振りだなぁ! 柚季、元気だったか!」
超馴れ馴れしく元気な人だ。遠江家ってほんと元気というかはちゃめちゃというかそんな人が多い印象を受ける。
確かに一年振りだ。何せ、俺は光が死んだ日からここにくることがなくなったからだ。
「お、お……お」
視線を横に向けると、彼方が何か魚みたいに口をぱくぱくさせて「お」を連呼していた。あまりの衝撃に開いた口が塞がらない状態になったのか?
彼方の存在に気づいた隆弘さんは彼方に体を向けてから腰を屈めて、
「君が、柚季の元で居候している彼方さんかな。襲われなかったか? 大丈夫か?」
本当に遠江一族は失礼な奴が多い。言ったら怖そうなので言わないが。
などと、遠江家の苦情を心中で述べていると、彼方に動きが生じた。
一歩足を踏み出して――あろうことか、隆弘さんに馴れ馴れしく抱きついたのだ!
「おじいちゃんですー!」
「ふぉぉ!?」
あまりに唐突に抱きつかれたからか、隆弘さんは一瞬驚いた表情となったがすぐに恍惚とした表情になった。いや、真顔に戻せよ、だらしねえ。
「な、何だ!? おじいちゃん!? 孫!? ふぉぉっ」
と、テンションがうなぎのぼりで上がる隆弘さんだったが。
ぐぎっ!
「ふぉぉ!?」
あ、嫌な音。人間誰しも耳を塞ぎたくなってしまう痛々しい音が響いた。
「え? お、おじいちゃん? どうかしたんですか?」
隆弘さんをこういう風にした元凶が能天気にも問う。
ぎっくり腰になったであろう隆弘さんは蹲りながらも弱々しくリビングの方向に指を向けて、
「行け、リビングに行ったら夕飯が待っている」
「あ、はい。失礼しますねー」
「薄情だな。お前」
蹲る隆弘さんを軽くスルーする彼方に毒づく。まぁ隆弘さんを放置して廊下を進む俺も俺何だがな。
学園では俺のポジションはいつも通りとなった。どうやら澤口への恫喝がクラスメイトにも伝わったらしく、話しかけるものは一切――いや、彼方と秋紅葉を除いていなくなった。
そんな学園もすでに冬休みに突入しており、今日はその数日が経った日なのである。
そして、今日というこの日は、俺にとってはとてつもなく憂鬱な日だ。
なぜなら、嫌な思い出全てを思い出してしまうから。
今日、十二月二十四日クリスマスイブ。
この日は――遠江光の命日だった。
「足クソだるい」
雪がパラパラと降る夜道を歩きながら俺は一言ぼやいた。
「出てから三秒しか経ってませんよ」
隣にいた彼方が冷静に突っ込みを入れる。しかしだるいものはだるい。しかも行く先があの家だというのがさらにだるい。
「はぁ~」
「? 一体どうしたんですか、パパ。さっきから本当に気だるそうに。そんなにママの家に行くのが嫌なんですか?」
そう、今俺たちが向かっている家とは遠江家のことだ。本当ならば行きたくないのだが、遠江にくるのよ、とお願い(命令)されてしまったため、行くしかなかったのだ。ちなみに彼方の同伴もオッケーらしい。
まぁ、あいつが今日わざわざ俺を家に招待したのはやはり、今日があいつの命日だからなのだろう。そうでなければ、呼ぶ理由がない。
「つーか何でこんな近いんだよ。数キロ離れてろよ」
徒歩十五秒。遠江家に到着した。マジで早い。心の準備すら出来てないっていうのに。
「ふぉー、ここがママの家ですか」
彼方は目の前にそびえ立つ三階建ての一軒家を見て、その後数メートル離れている俺たちのアパートに視線を向けて、
「雲泥の差ですね」
「じゃあお前はこっちに明日から住め……!」
苦情を言うなら出て行け。そんな意味を込めて呟いた。しかし彼方はさらっとスルーをして、遠江家のインターホンを鳴らした。
「っておい! もう鳴らすのかよ!」
「え? 鳴らさない方がよかったですか?」
と言いながら、彼方は他人の家だというのに勝手にドアを引いた。
「遅かったな」
そこに男が立っていた。
「「うわあああああああああああああッッ!?!?」」
俺と彼方はほぼ同時のタイミングで近所迷惑になりかねない声量で悲鳴を上げた。
「って……」
ぎっしりとした体格、逆立てた黒色の髪、まるでヤクザなのかと錯覚するほどの鋭い瞳。
――この人は。
「お、お久しぶりです……隆弘さん……」
遠江隆弘。正真正銘の、遠江瞬華の父である。特徴はヤクザにしか見えないその怖すぎる顔だ。しかし、隆弘さんの実態は逆で――
「一年振りだなぁ! 柚季、元気だったか!」
超馴れ馴れしく元気な人だ。遠江家ってほんと元気というかはちゃめちゃというかそんな人が多い印象を受ける。
確かに一年振りだ。何せ、俺は光が死んだ日からここにくることがなくなったからだ。
「お、お……お」
視線を横に向けると、彼方が何か魚みたいに口をぱくぱくさせて「お」を連呼していた。あまりの衝撃に開いた口が塞がらない状態になったのか?
彼方の存在に気づいた隆弘さんは彼方に体を向けてから腰を屈めて、
「君が、柚季の元で居候している彼方さんかな。襲われなかったか? 大丈夫か?」
本当に遠江一族は失礼な奴が多い。言ったら怖そうなので言わないが。
などと、遠江家の苦情を心中で述べていると、彼方に動きが生じた。
一歩足を踏み出して――あろうことか、隆弘さんに馴れ馴れしく抱きついたのだ!
「おじいちゃんですー!」
「ふぉぉ!?」
あまりに唐突に抱きつかれたからか、隆弘さんは一瞬驚いた表情となったがすぐに恍惚とした表情になった。いや、真顔に戻せよ、だらしねえ。
「な、何だ!? おじいちゃん!? 孫!? ふぉぉっ」
と、テンションがうなぎのぼりで上がる隆弘さんだったが。
ぐぎっ!
「ふぉぉ!?」
あ、嫌な音。人間誰しも耳を塞ぎたくなってしまう痛々しい音が響いた。
「え? お、おじいちゃん? どうかしたんですか?」
隆弘さんをこういう風にした元凶が能天気にも問う。
ぎっくり腰になったであろう隆弘さんは蹲りながらも弱々しくリビングの方向に指を向けて、
「行け、リビングに行ったら夕飯が待っている」
「あ、はい。失礼しますねー」
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