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風邪
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「う~」
クリスマス以降特に目立ったこともなく、新年を迎え、七日が経った。
一月七日、今日は最悪な新学期当日である。
またあの嫌な視線を浴びるかと思うと憂鬱で仕方がなかったが、これ以上休みを取ってしまうと本気で進級が危うい。
ということで、早めに起きようとしたが、携帯のアラームを無意識に切り、またもまどろみの世界に飛び立ってしまっていた。
「ううう~」
結局彼方に起こされ、一緒に朝食を取った後、別々に出る時間もなかったのでともに家を出て、現在学校に向かっている。
ちなみに遠江は本気で怒ったらしくクリスマスの件以降俺の部屋にはこなかった。まぁ当たり前か、何せ俺は最低なことをした。根に持たないあいつが珍しく根に持つのも無理はないだろう。
「う~」
つーかさっきから彼方がうるさい。凄い頻度でうーうーと言っている。パトカーかよ。
「んだよさっきからうーうーと。風邪か?」
堪えかねた俺は彼方に状態を尋ねた。もし風邪気味なんだとしたら馬鹿は風邪をひかないという言葉は嘘になる。
「いえ、多分風邪じゃないとは思いますが……少し頭痛が」
「何で休まなかったんだよ、ゆっくりと家で寝てればいいものを」
「……一人はあんまり好きじゃないので、パパとは違って」
「おいおい、孤独を舐めんなよ。考えてもみろ、人といたら気を使うが一人ならどうだ。何も気を使う必要がないじゃないか。つまりだ、二人よりも一人の方が気が楽で人生を楽しめるってことだ」
「ぼっちの考えそうな言い訳ですね」
「うぐっ」
「それとも何ですか? パパは孤独を気取って俺かっけーとでも思っているんですか?」
「そ、そんなわけねーし!」
「図星って、最悪です……」
軽蔑の眼差しで俺を見てくる彼方。ちゃんとした理由があるのに……。
「で、本当に大丈夫なのか、彼方」
歩くのが本気で辛そうな顔をする彼方に俺は声をかける。彼方はふぇ? とあほみたいな声を上げた後、俺を見つめて小首を傾げた。
「思うんですが、パパ最近優しくなりました? いえ、前も優しかったんですけど、最近は優しくなる頻度が高くなったと言いますか」
「娘を心配しない親がいるか?」
「もう、そうやってまた誤魔化すんですから」
誤魔化してなんかはいない。もう俺は、あの日から彼方のことを娘だと、大切な女だと認識してしまっている。
だからこそ、俺は彼方に対して異常なまでに優しくなってしまっているのだろう。少し自重しなくちゃな。
「ですがまぁ体調は大丈夫です。ヤバくなったらすぐに報告しますので」
「ああ、そうしてくれ」
「……もしかして本当にパパって心配してます?」
「心配したらおかしいか?」
「いえいえいえ、そんなことはないですよ。ただ……」
「ただ?」
彼方はぴょんぴょんと俺の前に出て、二歩くらい差がついたところでくるりと振り返ってからこう言った。
「誰かから心配されるのって嬉しいなぁって、そう思いました」
クリスマス以降特に目立ったこともなく、新年を迎え、七日が経った。
一月七日、今日は最悪な新学期当日である。
またあの嫌な視線を浴びるかと思うと憂鬱で仕方がなかったが、これ以上休みを取ってしまうと本気で進級が危うい。
ということで、早めに起きようとしたが、携帯のアラームを無意識に切り、またもまどろみの世界に飛び立ってしまっていた。
「ううう~」
結局彼方に起こされ、一緒に朝食を取った後、別々に出る時間もなかったのでともに家を出て、現在学校に向かっている。
ちなみに遠江は本気で怒ったらしくクリスマスの件以降俺の部屋にはこなかった。まぁ当たり前か、何せ俺は最低なことをした。根に持たないあいつが珍しく根に持つのも無理はないだろう。
「う~」
つーかさっきから彼方がうるさい。凄い頻度でうーうーと言っている。パトカーかよ。
「んだよさっきからうーうーと。風邪か?」
堪えかねた俺は彼方に状態を尋ねた。もし風邪気味なんだとしたら馬鹿は風邪をひかないという言葉は嘘になる。
「いえ、多分風邪じゃないとは思いますが……少し頭痛が」
「何で休まなかったんだよ、ゆっくりと家で寝てればいいものを」
「……一人はあんまり好きじゃないので、パパとは違って」
「おいおい、孤独を舐めんなよ。考えてもみろ、人といたら気を使うが一人ならどうだ。何も気を使う必要がないじゃないか。つまりだ、二人よりも一人の方が気が楽で人生を楽しめるってことだ」
「ぼっちの考えそうな言い訳ですね」
「うぐっ」
「それとも何ですか? パパは孤独を気取って俺かっけーとでも思っているんですか?」
「そ、そんなわけねーし!」
「図星って、最悪です……」
軽蔑の眼差しで俺を見てくる彼方。ちゃんとした理由があるのに……。
「で、本当に大丈夫なのか、彼方」
歩くのが本気で辛そうな顔をする彼方に俺は声をかける。彼方はふぇ? とあほみたいな声を上げた後、俺を見つめて小首を傾げた。
「思うんですが、パパ最近優しくなりました? いえ、前も優しかったんですけど、最近は優しくなる頻度が高くなったと言いますか」
「娘を心配しない親がいるか?」
「もう、そうやってまた誤魔化すんですから」
誤魔化してなんかはいない。もう俺は、あの日から彼方のことを娘だと、大切な女だと認識してしまっている。
だからこそ、俺は彼方に対して異常なまでに優しくなってしまっているのだろう。少し自重しなくちゃな。
「ですがまぁ体調は大丈夫です。ヤバくなったらすぐに報告しますので」
「ああ、そうしてくれ」
「……もしかして本当にパパって心配してます?」
「心配したらおかしいか?」
「いえいえいえ、そんなことはないですよ。ただ……」
「ただ?」
彼方はぴょんぴょんと俺の前に出て、二歩くらい差がついたところでくるりと振り返ってからこう言った。
「誰かから心配されるのって嬉しいなぁって、そう思いました」
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