レベル0の最強剣士~レベルが上がらないスキルを持つ俺、裏ダンジョンに捨てられたが、裏技を発見し気が付いたら世界最強になっていた。

つくも/九十九弐式

文字の大きさ
53 / 90

第53話 (義弟SIDE)義父とソルの試合を観戦する

しおりを挟む
(へっ……これは見ものだぜ)

 エドは義兄であるソルの試合に興味を示していた。そして、その会場には義父であるカイの姿もあった。エドはソルがボロボロになって敗戦すると思っていた。決して今後の対戦相手として興味を持っていたのではない。
『レベル0』なんて外れスキルをスキル継承の儀で授かった愚兄——ソルの哀れな姿を見たかったのである。

 ボロ雑巾のように引き裂かれ、大衆の目の下、恥を晒すところを見たかった。そうやって笑い者にして楽しみたかった。それがソルの闘いに注目していた理由である。

 ――しかし、隣にいる義父、カイはそうではなかった。なぜか顔が強張っている。

「義父様……兄貴の奴が闘技ステージに現れましたよ」
 
 観客席にいるエドは義父に伝える。ちなみに選手には控室が割り当てられているが、試合直前を除いて自由に移動することが許されている。エドの試合の順番はまだ大分先だったのだ。

「……あ、ありえん。あれがソルなどという事は絶対に……他人の空似ではないか」

 カイの言葉は震えていた。カイもまた噂話ではソルの生存を耳に挟んではいたのだが、実際に目にした今でもとても信じられていない様子だった。

 エドは考えた。

(なんだ? ……もしかしてこの義父(おやじ)、あの『レベル0』の無能を崖から落として始末しようとしたんじゃねぇか?)

 エドはそう推測した。義父が殺人未遂を犯した事に関しては別段非難するつもりはなかった。どういう手段であれ、愚兄がこの世からいなくなるのはせいせいする事だと考えたからである。

(けどあの愚兄は……生命力だけはあった。しぶとかったんだな。それで何とか生き延びたんだ)

 エドの推察は概ね正しかった。筋も通っていたし、自分で納得していた。だが、まさかソルが強くなっているなんて事は想像すらしていなかったのである。

 そしてついにはソルとロドリゲスの闘いが始まったのである。

「なっ!?」

 今までソルの事を見下していただけ、馬鹿にする事だけを目的で観戦していただけのエドの目が大きく見開かれる。

「マ、マジかよ……あ、あれがあの兄貴の動きかよ」

 エドは目の前の情景を信じる事が出来なかった。あのロドリゲスの豪快な攻撃を華麗な剣裁きで防ぎ、物の数分程度で、無傷の状態のままロドリゲスに勝利してしまったからである。

 瞬く間の出来事にエドもカイも絶句していた。二人とも、目の前の出来事に呆気に取られていたからである。『レベル0』という外れスキルを授かった無能——ソルがあの筋肉戦士であるロドリゲスを圧倒していた。その事実を信じる事ができないでいた。

「あ、ありえん! ……あ、あれがあのソルの動きだと! ま、まさか本当に目の前で闘っていたのはソルなのか! 生き延びてきたのか、あの裏ダンジョンと呼ばれる『ゲヘナ』から、あのソルが……」

 カイは慄いていた。

「どういうわけか知らねぇけどよ。あの兄貴、ちったぁやるようになったって事か」

 だが、エドはまだ笑っていられた。自分は当たりスキルである『久遠の剣聖』を授かった。そしてこの半年間、弛まぬ努力を積み重ねてきた。

 その結果、卓越した剣技を身に着け、さらにはこの剣神武闘会の優勝候補にも挙げられるようになったのである。

「よ、よくわかんねーけど、すごかったな」

「ああ」

「これは優勝候補のエドワードもやばいんじゃないの?」

「ありうるな……もしかしたら、兄弟対決もありうるんじゃ」

 ソルは『レベル0の無能者』という共通認識が崩れつつあった。だが、まだ誰もがソルの真価を知らなかった。最弱だと思っていた剣士が思っていたよりも実力があった。侮れない相手だと理解した。その程度である。

「我が息子エドワードよ!」

 カイはソルが生きているという事を段々と認め始めた。次にしようとした事は自身の決断の正しさを証明する事である。

 人は誰しも、自分の決断が間違ったものだと認めたくはないものだ。自己正当化をしたがる生き物だ。カイはソルを捨てた。捨てた事は間違いない。だが、自身の決断が間違ったものだったとはどうしても認めたくはなかったのである。

 カイはエドの両肩に手を置く。

「わしの決断が間違ったものだったとは思わん! それを証明してみせよ! ソルではなくエドワード、貴様を選んだわしの決断が決して間違ったものではないと! ソルともし直接剣を交える機会があったなら、必ず証明せよ!」

「へへっ……わかっていますよ。義父(とう)さん」

 エドは余裕の笑みで答えた。エドは先ほどの闘いを見て、ソルへの評価を改めた。どういう理由かわからないが、ソルは力を得ているようだった。『レベル0』と馬鹿にしていた以前のソルと同一人物とは思えない。まるで別人のようだ。
 そしてもしかしたらエドはソルと対決する事もあり得るかと想定するようになった。だが、その想定には自身の敗北は含まれていない。

(もし兄貴と直接対決する事になったら、この俺様の手自らで白黒はっきりつけてやるぜ……まっ、どうせ勝つのは俺様だけどよ。首を洗って待っとけよ、『レベル0』の無能兄貴、クックック)

 目の前で様変わりしたソルの闘いを見たにも関わらず、エドは自身の勝利を微塵も疑っていなかった。

 そしてやがてソルとの対決の機会は確実に訪れるのであった。



しおりを挟む
感想 57

あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ
ファンタジー
「役立たず」の烙印を押され、パーティを追放されたアルフォンス。彼のスキルは戦闘に不向きな【土いじり】。失意の彼は都会を離れ、辺境の地で静かに農業を営むことを決意する。 しかし、彼が畑を耕すと、そこから不思議なダンジョンが生えてきた! ダンジョン内では、高級ポーションになる薬草や伝説の金属『オリハルコン』が野菜のように収穫できる。地味だと思われた【土いじり】は、実はこの『農園ダンジョン』を育てる唯一無二のチートスキルだったのだ。 噂を聞きつけ集まる仲間たち。エルフの美少女、ドワーフの天才鍛冶師……。気づけば彼の農園は豊かな村へ、そして難攻不落の要塞国家へと発展していく。 一方、彼を追放したパーティは没落の一途を辿り……。 これは、追放された男が最強の生産職として仲間と共に理想郷を築き上げる、農業スローライフ&建国ファンタジー!

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

処理中です...