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第53話 (義弟SIDE)義父とソルの試合を観戦する
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(へっ……これは見ものだぜ)
エドは義兄であるソルの試合に興味を示していた。そして、その会場には義父であるカイの姿もあった。エドはソルがボロボロになって敗戦すると思っていた。決して今後の対戦相手として興味を持っていたのではない。
『レベル0』なんて外れスキルをスキル継承の儀で授かった愚兄——ソルの哀れな姿を見たかったのである。
ボロ雑巾のように引き裂かれ、大衆の目の下、恥を晒すところを見たかった。そうやって笑い者にして楽しみたかった。それがソルの闘いに注目していた理由である。
――しかし、隣にいる義父、カイはそうではなかった。なぜか顔が強張っている。
「義父様……兄貴の奴が闘技ステージに現れましたよ」
観客席にいるエドは義父に伝える。ちなみに選手には控室が割り当てられているが、試合直前を除いて自由に移動することが許されている。エドの試合の順番はまだ大分先だったのだ。
「……あ、ありえん。あれがソルなどという事は絶対に……他人の空似ではないか」
カイの言葉は震えていた。カイもまた噂話ではソルの生存を耳に挟んではいたのだが、実際に目にした今でもとても信じられていない様子だった。
エドは考えた。
(なんだ? ……もしかしてこの義父(おやじ)、あの『レベル0』の無能を崖から落として始末しようとしたんじゃねぇか?)
エドはそう推測した。義父が殺人未遂を犯した事に関しては別段非難するつもりはなかった。どういう手段であれ、愚兄がこの世からいなくなるのはせいせいする事だと考えたからである。
(けどあの愚兄は……生命力だけはあった。しぶとかったんだな。それで何とか生き延びたんだ)
エドの推察は概ね正しかった。筋も通っていたし、自分で納得していた。だが、まさかソルが強くなっているなんて事は想像すらしていなかったのである。
そしてついにはソルとロドリゲスの闘いが始まったのである。
「なっ!?」
今までソルの事を見下していただけ、馬鹿にする事だけを目的で観戦していただけのエドの目が大きく見開かれる。
「マ、マジかよ……あ、あれがあの兄貴の動きかよ」
エドは目の前の情景を信じる事が出来なかった。あのロドリゲスの豪快な攻撃を華麗な剣裁きで防ぎ、物の数分程度で、無傷の状態のままロドリゲスに勝利してしまったからである。
瞬く間の出来事にエドもカイも絶句していた。二人とも、目の前の出来事に呆気に取られていたからである。『レベル0』という外れスキルを授かった無能——ソルがあの筋肉戦士であるロドリゲスを圧倒していた。その事実を信じる事ができないでいた。
「あ、ありえん! ……あ、あれがあのソルの動きだと! ま、まさか本当に目の前で闘っていたのはソルなのか! 生き延びてきたのか、あの裏ダンジョンと呼ばれる『ゲヘナ』から、あのソルが……」
カイは慄いていた。
「どういうわけか知らねぇけどよ。あの兄貴、ちったぁやるようになったって事か」
だが、エドはまだ笑っていられた。自分は当たりスキルである『久遠の剣聖』を授かった。そしてこの半年間、弛まぬ努力を積み重ねてきた。
その結果、卓越した剣技を身に着け、さらにはこの剣神武闘会の優勝候補にも挙げられるようになったのである。
「よ、よくわかんねーけど、すごかったな」
「ああ」
「これは優勝候補のエドワードもやばいんじゃないの?」
「ありうるな……もしかしたら、兄弟対決もありうるんじゃ」
ソルは『レベル0の無能者』という共通認識が崩れつつあった。だが、まだ誰もがソルの真価を知らなかった。最弱だと思っていた剣士が思っていたよりも実力があった。侮れない相手だと理解した。その程度である。
「我が息子エドワードよ!」
カイはソルが生きているという事を段々と認め始めた。次にしようとした事は自身の決断の正しさを証明する事である。
人は誰しも、自分の決断が間違ったものだと認めたくはないものだ。自己正当化をしたがる生き物だ。カイはソルを捨てた。捨てた事は間違いない。だが、自身の決断が間違ったものだったとはどうしても認めたくはなかったのである。
カイはエドの両肩に手を置く。
「わしの決断が間違ったものだったとは思わん! それを証明してみせよ! ソルではなくエドワード、貴様を選んだわしの決断が決して間違ったものではないと! ソルともし直接剣を交える機会があったなら、必ず証明せよ!」
「へへっ……わかっていますよ。義父(とう)さん」
エドは余裕の笑みで答えた。エドは先ほどの闘いを見て、ソルへの評価を改めた。どういう理由かわからないが、ソルは力を得ているようだった。『レベル0』と馬鹿にしていた以前のソルと同一人物とは思えない。まるで別人のようだ。
そしてもしかしたらエドはソルと対決する事もあり得るかと想定するようになった。だが、その想定には自身の敗北は含まれていない。
(もし兄貴と直接対決する事になったら、この俺様の手自らで白黒はっきりつけてやるぜ……まっ、どうせ勝つのは俺様だけどよ。首を洗って待っとけよ、『レベル0』の無能兄貴、クックック)
目の前で様変わりしたソルの闘いを見たにも関わらず、エドは自身の勝利を微塵も疑っていなかった。
そしてやがてソルとの対決の機会は確実に訪れるのであった。
エドは義兄であるソルの試合に興味を示していた。そして、その会場には義父であるカイの姿もあった。エドはソルがボロボロになって敗戦すると思っていた。決して今後の対戦相手として興味を持っていたのではない。
『レベル0』なんて外れスキルをスキル継承の儀で授かった愚兄——ソルの哀れな姿を見たかったのである。
ボロ雑巾のように引き裂かれ、大衆の目の下、恥を晒すところを見たかった。そうやって笑い者にして楽しみたかった。それがソルの闘いに注目していた理由である。
――しかし、隣にいる義父、カイはそうではなかった。なぜか顔が強張っている。
「義父様……兄貴の奴が闘技ステージに現れましたよ」
観客席にいるエドは義父に伝える。ちなみに選手には控室が割り当てられているが、試合直前を除いて自由に移動することが許されている。エドの試合の順番はまだ大分先だったのだ。
「……あ、ありえん。あれがソルなどという事は絶対に……他人の空似ではないか」
カイの言葉は震えていた。カイもまた噂話ではソルの生存を耳に挟んではいたのだが、実際に目にした今でもとても信じられていない様子だった。
エドは考えた。
(なんだ? ……もしかしてこの義父(おやじ)、あの『レベル0』の無能を崖から落として始末しようとしたんじゃねぇか?)
エドはそう推測した。義父が殺人未遂を犯した事に関しては別段非難するつもりはなかった。どういう手段であれ、愚兄がこの世からいなくなるのはせいせいする事だと考えたからである。
(けどあの愚兄は……生命力だけはあった。しぶとかったんだな。それで何とか生き延びたんだ)
エドの推察は概ね正しかった。筋も通っていたし、自分で納得していた。だが、まさかソルが強くなっているなんて事は想像すらしていなかったのである。
そしてついにはソルとロドリゲスの闘いが始まったのである。
「なっ!?」
今までソルの事を見下していただけ、馬鹿にする事だけを目的で観戦していただけのエドの目が大きく見開かれる。
「マ、マジかよ……あ、あれがあの兄貴の動きかよ」
エドは目の前の情景を信じる事が出来なかった。あのロドリゲスの豪快な攻撃を華麗な剣裁きで防ぎ、物の数分程度で、無傷の状態のままロドリゲスに勝利してしまったからである。
瞬く間の出来事にエドもカイも絶句していた。二人とも、目の前の出来事に呆気に取られていたからである。『レベル0』という外れスキルを授かった無能——ソルがあの筋肉戦士であるロドリゲスを圧倒していた。その事実を信じる事ができないでいた。
「あ、ありえん! ……あ、あれがあのソルの動きだと! ま、まさか本当に目の前で闘っていたのはソルなのか! 生き延びてきたのか、あの裏ダンジョンと呼ばれる『ゲヘナ』から、あのソルが……」
カイは慄いていた。
「どういうわけか知らねぇけどよ。あの兄貴、ちったぁやるようになったって事か」
だが、エドはまだ笑っていられた。自分は当たりスキルである『久遠の剣聖』を授かった。そしてこの半年間、弛まぬ努力を積み重ねてきた。
その結果、卓越した剣技を身に着け、さらにはこの剣神武闘会の優勝候補にも挙げられるようになったのである。
「よ、よくわかんねーけど、すごかったな」
「ああ」
「これは優勝候補のエドワードもやばいんじゃないの?」
「ありうるな……もしかしたら、兄弟対決もありうるんじゃ」
ソルは『レベル0の無能者』という共通認識が崩れつつあった。だが、まだ誰もがソルの真価を知らなかった。最弱だと思っていた剣士が思っていたよりも実力があった。侮れない相手だと理解した。その程度である。
「我が息子エドワードよ!」
カイはソルが生きているという事を段々と認め始めた。次にしようとした事は自身の決断の正しさを証明する事である。
人は誰しも、自分の決断が間違ったものだと認めたくはないものだ。自己正当化をしたがる生き物だ。カイはソルを捨てた。捨てた事は間違いない。だが、自身の決断が間違ったものだったとはどうしても認めたくはなかったのである。
カイはエドの両肩に手を置く。
「わしの決断が間違ったものだったとは思わん! それを証明してみせよ! ソルではなくエドワード、貴様を選んだわしの決断が決して間違ったものではないと! ソルともし直接剣を交える機会があったなら、必ず証明せよ!」
「へへっ……わかっていますよ。義父(とう)さん」
エドは余裕の笑みで答えた。エドは先ほどの闘いを見て、ソルへの評価を改めた。どういう理由かわからないが、ソルは力を得ているようだった。『レベル0』と馬鹿にしていた以前のソルと同一人物とは思えない。まるで別人のようだ。
そしてもしかしたらエドはソルと対決する事もあり得るかと想定するようになった。だが、その想定には自身の敗北は含まれていない。
(もし兄貴と直接対決する事になったら、この俺様の手自らで白黒はっきりつけてやるぜ……まっ、どうせ勝つのは俺様だけどよ。首を洗って待っとけよ、『レベル0』の無能兄貴、クックック)
目の前で様変わりしたソルの闘いを見たにも関わらず、エドは自身の勝利を微塵も疑っていなかった。
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