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第55話 仮面剣士スカーレットの闘いを観戦する
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「……ふむ。次はあの仮面剣士の闘いだの」
バハムートは次の注目選手である仮面剣士スカーレットの名を挙げる。だが、ソルはその仮面剣士の正体が誰なのかを知っていた。わざわざバハムートに言う必要性も感じないが。わざわざ普通の仮面ではなく、認識を誤魔化す魔道具(アーティファクト)を身に着けているのは、素性を隠したいからに他ならない。
影武者まで用立てているのだ。これはクレアの為にも気づいていない振りをしよう。幸い、ソル以外に気づいている人はいなさそうである。
ともかく、そろそろ仮面剣士スカーレットの試合が始まる時間であった。
『これよりFブロック第3試合を始めます』
会場にアナウンスが響き渡る。
「始まるようだの」
二人は観戦に集中する。
『第三試合の選手が入場します! これより、仮面剣士スカーレット選手VSバルデル選手の試合を始めます!』
仮面剣士スカーレットとバルデルが対面する。スカーレットがクレアと同一人物である事は触れないでおく。
スカレーレットは仮面とマントでその正体を隠した謎の人物ではあったが、男性に比べて小さな体つきをしていた事と、髪の長さと雰囲気から女性である事は誰でもわかった。何より声だ。発声をすればわかってしまう事だ。髪は長くできるが、やはり女性の声域を男性で出せる者は少ない。
対するバルデスは金髪をしたナルシスト風の男だった。これから闘うというにも関わらず、上半身が裸である。その白い肌を惜しげもなく晒している。
防御面から考えると著しく脆弱そうであった。だが、バルデルはその事など意にも介していない様子だ。
「美しい、僕の姿を見るがいい……仮面の剣士よ」
「げっ……私、ナルシストって苦手なのよ」
仮面剣士スカーレットは嘆く。ナルシストが得意な人間などいるだろうか。皆、苦手であろう。ナルシストには会話が成立しない。そして否定や批判など一切受け付けないのだ。彼らにとって自分以外の存在は存在していないにも等しい。
「僕は美しい……この地上の誰よりも。だが、仮面の剣士よ。君の仮面の裏から、美の匂いが漂ってくるよ。君もまた美しい存在なのだと、僕の『美』が囁いてくるよ」
「はいはい……そうですか。さっさと始まらないかしら」
仮面剣士スカーレットは不平を漏らす。
ゴン!
鐘が鳴らされた。
「さあ! ゴングが鳴りました! 試合開始の合図です!」
仮面剣士スカーレットは剣を構えた。とりあえずは相手の様子を伺うつもりだった。先手を打たせて様子見をするつもりだ。
このトーナメントは直前になって組み合わせがわかる為、初戦の相手の情報を集めている余裕はない。お互い、手探りで相手の情報を集めていかなければならない。相手がどんな切り札を用意しているかはわからないからだ。
弱そうな相手だと思って舐めてかかると、切り札——大抵の場合固有スキルか、あるいは武具の効果で足元を掬われかねない。
「美しき仮面の剣士よ。君という美を失う事は惜しい。だが、君には僕という美しい伝説の為の踏み台になって貰うよ!」
バルデルは剣を構えた。真っ赤な剣である。
「この剣はフランベルジュ。聖剣レーヴァテイン程の代物ではないが、炎属性の名剣だよ。さあ、燃え盛れ! 僕の美しい炎よ! この炎で消し炭になるがいい! 仮面の剣士よ!」
バルデルはフランベルジュを振るった。
「なっ!?」
仮面剣士スカーレットを紅蓮の炎が襲う。激しい火柱が立った。
『おおっと! 初手はバルデル選手の激しい攻撃だ! 強烈な炎が仮面剣士スカーレット選手を襲う! これは決まってしまったか!』
「ふっ……これは観客に申し訳ない事をした。観客たちは僕という美を一秒でも長く見ていたいはずなのに。こう一瞬で決まってしまっては試合時間を長引かせる事すらできなかった。強く、そして美しすぎるというのは罪だな。だが許してくれたまえ、全世界に100億はいる美の化身である僕のファンよ。これもまた残酷な勝負の世界の出来事。仕方なかったのさ」
完全に勝ったと思っていたバルデルは余裕をかましていた。完全に自分の世界に入っていたのである。
――しかし。炎が消し飛んだ。
「ば、馬鹿なっ! な、なぜ、僕の炎が消えた!」
炎が消えた後に現れたのは殆ど無傷のままの仮面剣士スカーレットの姿があった。
「ごめんなさい……私、炎属性の攻撃殆ど効かないの」
「なっ! なんだと、火耐性のスキルでも習得しているのかっ!」
仮面剣士スカーレットは一瞬にして距離を詰める。レイピアのような細身の剣を持っていた。
「ちぃっ!」
バルデルは慌てて剣を構えるが遅い――もう間に合わなかった。
剣が襲い掛かってくる。その剣はフランベルジュと同じく、炎属性を付与(エンチャント)された剣であった。
フランベルジュの場合は剣自体の効果による者ではあるが、彼女の剣の炎は彼女自身のスキルに起因するものだった。
武器に効果が付与されている場合、誰が使っても効果が発揮するが、スキルによる効果はその人物自身のものだ。その点が大きく事なっている。
バルデルの体は斬られると同時に焼かれた。
「ギヤアアアアアアアアアアアアアアアアア! ぼ、僕の、僕の美しい肌が! 肌がぁ!」
バルデルは泣き喚いた。
「そんな戦場に上半身裸で出てくるからよ」
仮面剣士スカーレットは呆れていた。
『おおっと! バルデル選手の凄まじい炎攻撃に対して仮面剣士スカーレット選手は殆ど無傷です! そして痛烈な反撃がバルデル選手に襲い掛かりました! バルデル選手はステージを転がっています!』
「ぼ、僕の美しい肌が! 僕は回復魔法(ヒーリング)を習得していないんだ! 習得しているのは美容関係のスキルばかりで! こんなに酷い傷は治せないんだ!」
『あのー、医療班に治療して貰うとなると、降参っていう事になるんですがそれで構いませんか?』
「構わない! 僕の美しさが失われるよりマシだ! 敗北してなお、誰が最も美しかったかは観客が理解しているだろう!」
「はぁ……」
仮面剣士スカーレットはため息を吐いた。誰もかもが彼の事を美しいとは思わなかったが、この剣神武闘会で『最も見苦しい男』という認識は得たであろう。ロドリゲスもある意味見苦しかったが、あれはあれでまだ戦士であった。果敢に闘った。
このバルデルはそれ以下であった。まあ、仮面剣士スカーレットからすれば一回戦を勝利で納めたのだからそれで良かった。
『バルデル選手が降参しました! これにより、仮面剣士スカーレット選手が一回戦を突破します! 引き続き次の試合へと移っていきます』
アナウンスが響く。
「な、なんかわからねぇけど、あの姉ちゃんが勝ったようだな」
「それにしても見苦しい奴だったぜ……あのバルデルって奴」
「あいつが一回戦負けでよかった。あいつの試合を二回も見たくない。それくらい見苦しい奴だったぜ」
観客たちが騒めいていた。
こうして仮面剣士スカーレットはバルデルとの闘いに勝利し、二回戦へと駒を進めたのであった。
バハムートは次の注目選手である仮面剣士スカーレットの名を挙げる。だが、ソルはその仮面剣士の正体が誰なのかを知っていた。わざわざバハムートに言う必要性も感じないが。わざわざ普通の仮面ではなく、認識を誤魔化す魔道具(アーティファクト)を身に着けているのは、素性を隠したいからに他ならない。
影武者まで用立てているのだ。これはクレアの為にも気づいていない振りをしよう。幸い、ソル以外に気づいている人はいなさそうである。
ともかく、そろそろ仮面剣士スカーレットの試合が始まる時間であった。
『これよりFブロック第3試合を始めます』
会場にアナウンスが響き渡る。
「始まるようだの」
二人は観戦に集中する。
『第三試合の選手が入場します! これより、仮面剣士スカーレット選手VSバルデル選手の試合を始めます!』
仮面剣士スカーレットとバルデルが対面する。スカーレットがクレアと同一人物である事は触れないでおく。
スカレーレットは仮面とマントでその正体を隠した謎の人物ではあったが、男性に比べて小さな体つきをしていた事と、髪の長さと雰囲気から女性である事は誰でもわかった。何より声だ。発声をすればわかってしまう事だ。髪は長くできるが、やはり女性の声域を男性で出せる者は少ない。
対するバルデスは金髪をしたナルシスト風の男だった。これから闘うというにも関わらず、上半身が裸である。その白い肌を惜しげもなく晒している。
防御面から考えると著しく脆弱そうであった。だが、バルデルはその事など意にも介していない様子だ。
「美しい、僕の姿を見るがいい……仮面の剣士よ」
「げっ……私、ナルシストって苦手なのよ」
仮面剣士スカーレットは嘆く。ナルシストが得意な人間などいるだろうか。皆、苦手であろう。ナルシストには会話が成立しない。そして否定や批判など一切受け付けないのだ。彼らにとって自分以外の存在は存在していないにも等しい。
「僕は美しい……この地上の誰よりも。だが、仮面の剣士よ。君の仮面の裏から、美の匂いが漂ってくるよ。君もまた美しい存在なのだと、僕の『美』が囁いてくるよ」
「はいはい……そうですか。さっさと始まらないかしら」
仮面剣士スカーレットは不平を漏らす。
ゴン!
鐘が鳴らされた。
「さあ! ゴングが鳴りました! 試合開始の合図です!」
仮面剣士スカーレットは剣を構えた。とりあえずは相手の様子を伺うつもりだった。先手を打たせて様子見をするつもりだ。
このトーナメントは直前になって組み合わせがわかる為、初戦の相手の情報を集めている余裕はない。お互い、手探りで相手の情報を集めていかなければならない。相手がどんな切り札を用意しているかはわからないからだ。
弱そうな相手だと思って舐めてかかると、切り札——大抵の場合固有スキルか、あるいは武具の効果で足元を掬われかねない。
「美しき仮面の剣士よ。君という美を失う事は惜しい。だが、君には僕という美しい伝説の為の踏み台になって貰うよ!」
バルデルは剣を構えた。真っ赤な剣である。
「この剣はフランベルジュ。聖剣レーヴァテイン程の代物ではないが、炎属性の名剣だよ。さあ、燃え盛れ! 僕の美しい炎よ! この炎で消し炭になるがいい! 仮面の剣士よ!」
バルデルはフランベルジュを振るった。
「なっ!?」
仮面剣士スカーレットを紅蓮の炎が襲う。激しい火柱が立った。
『おおっと! 初手はバルデル選手の激しい攻撃だ! 強烈な炎が仮面剣士スカーレット選手を襲う! これは決まってしまったか!』
「ふっ……これは観客に申し訳ない事をした。観客たちは僕という美を一秒でも長く見ていたいはずなのに。こう一瞬で決まってしまっては試合時間を長引かせる事すらできなかった。強く、そして美しすぎるというのは罪だな。だが許してくれたまえ、全世界に100億はいる美の化身である僕のファンよ。これもまた残酷な勝負の世界の出来事。仕方なかったのさ」
完全に勝ったと思っていたバルデルは余裕をかましていた。完全に自分の世界に入っていたのである。
――しかし。炎が消し飛んだ。
「ば、馬鹿なっ! な、なぜ、僕の炎が消えた!」
炎が消えた後に現れたのは殆ど無傷のままの仮面剣士スカーレットの姿があった。
「ごめんなさい……私、炎属性の攻撃殆ど効かないの」
「なっ! なんだと、火耐性のスキルでも習得しているのかっ!」
仮面剣士スカーレットは一瞬にして距離を詰める。レイピアのような細身の剣を持っていた。
「ちぃっ!」
バルデルは慌てて剣を構えるが遅い――もう間に合わなかった。
剣が襲い掛かってくる。その剣はフランベルジュと同じく、炎属性を付与(エンチャント)された剣であった。
フランベルジュの場合は剣自体の効果による者ではあるが、彼女の剣の炎は彼女自身のスキルに起因するものだった。
武器に効果が付与されている場合、誰が使っても効果が発揮するが、スキルによる効果はその人物自身のものだ。その点が大きく事なっている。
バルデルの体は斬られると同時に焼かれた。
「ギヤアアアアアアアアアアアアアアアアア! ぼ、僕の、僕の美しい肌が! 肌がぁ!」
バルデルは泣き喚いた。
「そんな戦場に上半身裸で出てくるからよ」
仮面剣士スカーレットは呆れていた。
『おおっと! バルデル選手の凄まじい炎攻撃に対して仮面剣士スカーレット選手は殆ど無傷です! そして痛烈な反撃がバルデル選手に襲い掛かりました! バルデル選手はステージを転がっています!』
「ぼ、僕の美しい肌が! 僕は回復魔法(ヒーリング)を習得していないんだ! 習得しているのは美容関係のスキルばかりで! こんなに酷い傷は治せないんだ!」
『あのー、医療班に治療して貰うとなると、降参っていう事になるんですがそれで構いませんか?』
「構わない! 僕の美しさが失われるよりマシだ! 敗北してなお、誰が最も美しかったかは観客が理解しているだろう!」
「はぁ……」
仮面剣士スカーレットはため息を吐いた。誰もかもが彼の事を美しいとは思わなかったが、この剣神武闘会で『最も見苦しい男』という認識は得たであろう。ロドリゲスもある意味見苦しかったが、あれはあれでまだ戦士であった。果敢に闘った。
このバルデルはそれ以下であった。まあ、仮面剣士スカーレットからすれば一回戦を勝利で納めたのだからそれで良かった。
『バルデル選手が降参しました! これにより、仮面剣士スカーレット選手が一回戦を突破します! 引き続き次の試合へと移っていきます』
アナウンスが響く。
「な、なんかわからねぇけど、あの姉ちゃんが勝ったようだな」
「それにしても見苦しい奴だったぜ……あのバルデルって奴」
「あいつが一回戦負けでよかった。あいつの試合を二回も見たくない。それくらい見苦しい奴だったぜ」
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