駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど

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本編

傍迷惑な忠誠心《ヘレス side》①

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「全員、打首にする」

 慈悲や情けなど微塵も持ち合わせていない私は、腰に差してある剣へ手を掛けた。
その瞬間、別邸統括侍女が床に頭を擦り付ける。

「お、お待ちください……!私達は本当にお嬢様の指示に従っただけで……!これまで、ちゃんとお世話してきました!なので、どうか命だけは……」

「命乞いをする前に、その呼び方を改めろ。レイチェル・プロテア・ラニットは既に私の妻だ。他所の娘では、ない」

 『“奥様”と呼べ』と主張し、私は相手の言い分が破綻していることを指摘した。
だって、もし本当に妻の指示を忠実に聞くようなやつならそんな呼び方はしないため。
『見下しているのは、確実だな』と思案し、私はトントンと指先で剣の柄を叩く。
それだけで、相手は竦み上がった。

「た、大変申し訳ございません!確かに私達はおじょ……奥様の世話を怠っておりました!でも、これはラニット公爵家の名に泥を塗ったフィオーレ伯爵家へ怒りを覚えるあまり、したことで……!」

 『行き過ぎた忠誠心によるもの』ということを強調し、別邸統括侍女はひたすら陳謝。
他の者達もそれに続き、こうべを垂れた。

「ほう?では、これもラニット公爵家の名に泥を塗ったフィオーレ伯爵家へ怒りを覚えるあまりしたことなのか?」

 私は例の申請書類をヒラヒラと揺らして、使用人達に突きつける。
ハッとしたように息を呑む彼らの前で、私は一歩前へ出た。

「先に言っておくが、『奥様の書いたもの』という言い分は通らないぞ。この書類を持ってきたのが、貴様らである以上な」

 長話は好きじゃないのでしっかり退路を塞ぐと、ロルフがそれに加勢する。

「身の回りの世話はしないのに、予算引き上げの申請書類の提出だけきちんとこなすなんて不自然ですからね。それに、本当にラニット公爵家のことを思うならその書類の提出こそ止めるべきでしょうし」

「「「っ……」」」

 別邸担当の使用人達はぐうの音も出ないようで、黙り込んだ。
焦りと不安を露わにしながら震える彼らの前で、私は申請書類をロルフへ渡す。
と同時に、剣の鞘から少しだけ刀身を出した。

「つまり、貴様らの忠誠心とは私の命令を無視して公爵夫人を虐げ、我が家の金を使い込むことなんだな?」
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