駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど

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本編

ロルフ②

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「いいか?貴様はこれから身の回りのことに煩わされることなく、ラニット公爵家の恩恵を充分に受け、豊かに過ごすんだ」

 ────という宣言通り、私の生活は一変した。
これまでの扱いが嘘のように、いいもの・いい人材・いい環境を与えられ、何不自由ない暮らしを送れている。

 本邸に来た当初はまだ不安で別邸に戻りたい気持ちもあったけど、今となっては『ここへ来て良かった』と思っている。
だって、凄く快適なんだもの。
何をするにも、どこへ行くにも使用人が傍に居てフォローしてくれるから。

 『まさに至れり尽くせり』と思いつつ、私は朝食を終えた。
すると、専属侍女のベロニカが食器を下げに来る。
後ろできっちり結んだ緑髪を揺らしながら。

「奥様、本日の訪問・・・・・はいつ頃になさいますか?」

 もはや聞き慣れてしまった質問を繰り出すベロニカに、私は少しばかり悩む素振りを見せる。
が、直ぐに考えをまとめた。

「今から、行くわ」

 どうせならさっさと終わらせて、ゆっくり寛ぎたかったため、私は席を立つ。
そして、夫の居る執務室へ向かった。

 本邸に移り住んでからというもの、私は毎日のように旦那様のもとへ足を運んでいる。
何故なら、一日一回顔を見せるよう厳命されているから。
多分、生活に不便はないか……また使用人達に虐げられていないか、確かめるためだろう。

 別邸担当の使用人達に対して激怒していた夫を思い出し、私はスッと目を細める。
────と、ここで目的地に到着した。

「旦那様、奥様がいらっしゃいました」

 ベロニカが扉をノックして訪問を告げると、直ぐに

「入れ」

 と、返事が来る。
なので、ベロニカは静かに扉を開けてこちらに目を向けた。
『どうぞ、お入りください』と促してくる彼女を前に、私はコクリと頷く。
と同時に、室内へ足を踏み入れた。

「おはようございます、旦那様。朝早くにすみません」

「ああ」

 言葉少なに応じる夫は、執務机に並べた資料から顔を上げる。

「適当な場所に座れ。あと、貴様はもう下がっていい」

 ベロニカに向かって『席を外せ』と指示し、夫は再びペンを動かす。
その傍には、ロルフの姿もあった。

「奥様、昨夜はよく眠れましたか?」

 追加の紅茶を淹れつつ、ロルフはこちらに笑い掛ける。
おかげで、この場の空気が少し緩んだ。
心做しか照明も明るくなったように感じる中、私はソファへ腰を下ろす。

「ええ、昨夜に限らずここ最近はずっとぐっすり眠れています」

「それは良かったです」

 ホッとしたように表情を和らげ、ロルフは淹れたての紅茶を私の前へ置いた。
すると、夫がこちらを見つめる。

「……確かによく眠れているようだな。結婚式のときに見た酷い顔とは、似ても似つかない」

 『化粧で誤魔化していたが、凄い隈だった』と指摘し、夫は書類へ視線を戻した。
かと思えば、資料の山から何かを引っ張り出す。

「今の状態なら、着飾ってもみすぼらしく見えないだろう。好きなものを注文するといい」
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