駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど

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本編

姉の行方②

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「事情は大体、分かりました。また姉のことでご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありません」

 深々と頭を下げて謝罪し、私はそっと目を伏せた。
────と、ここで沈黙を守ってきた夫が口を開く。

「貴様が謝ることではない。もうラニット公爵家こちらの人間なのだからな」

 『フィオーレ伯爵家あちらの事情に振り回されなくていい』と主張し、夫は両手を組んだ。

「今日、貴様を呼び出したのはクラリス・アスチルベ・フィオーレの生存と今後の対応について話したかったからだ」

 『謝罪など、求めていない』と言い切り、夫は真っ直ぐにこちらを見据える。
そこに、怒りや失望といった感情は一切なかった。

 てっきり、『貴様の家族のせいで』と責められるかと思ったのに……。

 驚きのあまり夫を凝視する私は、パチパチと瞬きを繰り返す。
と同時に、彼が席を立った。

「前者はもう済んだから、後者の話をするとしよう」

 そう前置きしてから、夫は本題へ入る。

「レイチェル・プロテア・ラニット、貴様は────クラリス・アスチルベ・フィオーレの訪問を受けた場合、どうしたい?」

 私の前でゆっくりと歩を進め、夫はおもむろに腕を組んだ。
かと思えば、じっとこちらを見下ろす。

「その訪問を受けたいか?」

「いいえ」

 今の立場的にも心情的にも姉とは会いたくなかったので、迷わず首を横に振った。
『どうせ、会っても見当違いなことを言われて疲弊するだけだろうし』と考え、私は嘆息する。
猪突猛進・天真爛漫・独断専行とも言うべき、姉の性格を思い浮かべながら。

「お姉様が来ても、絶対に中へ入れないでください。正直、何をするか私でも分からないので。実家に連絡だけ入れて、あとは放置でお願いします」

 『まともに相手しなくていい』と主張する私に、夫は

「分かった。そのように対処する」

 と、即答した。
『実の姉妹なのに、冷たくないか?』などというセリフは吐かずに。

「話は終わったから、もう部屋に戻れ」

 クルリと身を翻し、夫は執務机の方へ向かっていく。
恐らく、仕事を再開するつもりなんだろう。

「はい、お邪魔しました」

 『また明日』と声を掛け、私はさっさと踵を返す。
ここに居ても、出来ることなんてないため。
『手紙の返信でも書こう』と考える中────執務室の扉をノックされた。

「旦那様、今ちょっとよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

 夫は机の上にある書類を手に取りながら、視線を上げる。
と同時に、扉が開いて執事のセバスチャンが姿を現した。

「お忙しいところ、失礼します。屋敷の正門前に────奥様の姉を名乗る方が、おいでです」
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