駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど

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本編

義弟との再会③

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「そうですね。旦那様を怒らせれば、私はきっと為す術なく蹂躙されるでしょう。けれど────怖くはありません。旦那様は話の通じない機械でも、理性のない獣でもありませんから」

 同じ人間で意思と感情があることを説き、私は義弟の目を見つめ返す。

「話せば分かり合えるとまでは言いませんが、私が変に出しゃばったり旦那様の行動を妨げたりしなければそのような行動に出ることはないでしょう。なので、いくらご忠告いただいても旦那様の傍から離れる気はありませんよ」

「!」

 義弟はピクッと僅かに反応を示し、表情を引き締めた。
ちょっと雰囲気の変わった彼を前に、私は『やっぱり、離婚が狙いだったか』と確信する。

 旦那様の……ヘレス・ノーチェ・ラニット公爵の唯一の弱点は、血筋。
半分とはいえ、平民の血が混ざっている以上血統を重んじる貴族社会じゃ異物同然だから。
大貴族の当主ともなれば、尚更。
なまじ力のある家門だから、表立って文句を言う者はそうそう居ないだろうけど、そこにある確かな綻びを付け狙う勢力は居る筈。
それこそ、分家とか……義弟のフェリクス様とか、ね。

 なので、旦那様は自分の地位をより磐石なものとするために建国当初より存在する由緒正しき家門────フィオーレ伯爵家との婚姻を望んだ。
どんな形であれ青い血を補うことが出来れば、お零れに与ろうとする者達を牽制出来るから。
少なくとも、跡継ぎのこと次世代のことで血筋の問題を引き合いに出されることはないだろう。
それは子供を産んだ私……ひいては、フィオーレ伯爵家に対する冒涜となるため。

 フェリクス様としては、お世継ぎが生まれる前に私を旦那様から引き離したいんでしょうね。
これ以上、力をつけられたら敵わないから。

 春の祝賀会の際に夫が言っていた『くだらない野心』というセリフを思い出し、私は一つ息を吐いた。
何となく予想はしていたものの、現実になると悶々としてしまって。
『相手が離婚を企んでいる以上、私も無関係ではいられない』と思案する中、義弟は口元に手を当てる。

「……義姉さんの考えは、分かったよ。だけど、君は少し兄さんを買い被り過ぎている」

 いつになく語気を強める義弟は、ガゼボに備え付けてあるテーブルへ手を置いた。
かと思えば、少しばかり眉を顰める。

「あの人はそこまで、知性や理性のある人間じゃないよ。だって、十数年前────」

 そこで一度言葉を切り、義弟はややピンク寄りの赤い瞳に暗い感情を滲ませた。

「────特に理由もなく・・・・・・・、前公爵夫妻を……僕の両親を殺したんだから」
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