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本編
前公爵夫妻の死の謎①
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「────特に理由もなく、前公爵夫妻を……僕の両親を殺したんだから」
テーブルに頬杖をつき、義弟は淀んだ目でこちらを見つめる。
思わず表情を硬くする私の前で、彼はおもむろに手を組んだ。
「言っておくけど、私生児ゆえに虐げられて復讐という線はないよ。父さんも母さんも、兄さんのことを可愛がっていたらしいから。そもそも、本妻ではない子供を作ろうとしたのも、ラニット公爵家の跡継ぎ問題を解決するためだったしね」
『母さん公認で出来た子』と主張し、義弟は空を見上げる。
「あんまり大きな声では言えないけど、僕の母さんは子供の出来にくい体質でさ。一応、ストックを用意しようって話になったみたいなんだ。だから、二人とも兄さんに対して悪感情は持ってなかった。まあ、僕が生まれてからは多少邪魔に思っていたかもしれないけど」
小さく肩を竦めてそう語り、義弟はこちらへ視線を戻した。
「でも、殺された時期は僕が生まれて間もない頃だから、復讐心を抱くようになるまで追い詰める暇なんてなかった筈だよ。何より────兄さん自身が、『前公爵夫妻には、良くしてもらった』と証言している」
トントンと指先でテーブルを叩きつつ、義弟はベンチの背もたれに寄り掛かる。
言動の端々に複雑な感情を露わにしながら。
「そうなると、残る動機は次期当主の座を守るための保身に絞られる。けれど、もしそうなら僕も……いや、僕こそ殺さないとおかしい。よって、導き出される結論は────特に理由はない、なんだよ」
ややピンク寄りの赤い瞳に憤怒と憎悪を宿し、義弟は強く手を握り締めた。
どこか物々しい雰囲気を醸し出す彼は、眉間に深い皺を刻む。
「だから、変に出しゃばったり兄さんの行動を妨げたりしなければ安全なんてことはない。義姉さんはもうちょっと危機感を持った方が、いい」
真剣味を帯びた声色で再度忠告し、義弟は手を組んだ。
おもむろに背筋を伸ばす彼の前で、私はそっと目を伏せる。
「とりあえず、お話は分かりました。一度、よく考えてみます」
正直まだ混乱しているため、私は『自分の考えが変わった』とも『絶対に意思を曲げない』とも言えなかった。
とにかく情報を整理する時間が必要だと判断する中、私はふと視線を上げる。
「ところで、何故そんなに事件のことにお詳しいんですか?フェリクス様は当時、赤子だったんですよね?」
「色々ツテを使って、調べたんだよ。あとは本人に聞いたり、ね。まあ、ほとんど何も教えてくれなかったけど」
『基本、ずっと黙り』だと語り、義弟は不満を露わにした。
────と、ここで『奥様~!』と私を呼ぶ声が聞こえてくる。
恐らく、専属侍女のベロニカあたりだろう。
「そろそろ、時間切れみたいだね。二人で居るところを見られたらお互い面倒だろうし、僕は行くよ」
テーブルに頬杖をつき、義弟は淀んだ目でこちらを見つめる。
思わず表情を硬くする私の前で、彼はおもむろに手を組んだ。
「言っておくけど、私生児ゆえに虐げられて復讐という線はないよ。父さんも母さんも、兄さんのことを可愛がっていたらしいから。そもそも、本妻ではない子供を作ろうとしたのも、ラニット公爵家の跡継ぎ問題を解決するためだったしね」
『母さん公認で出来た子』と主張し、義弟は空を見上げる。
「あんまり大きな声では言えないけど、僕の母さんは子供の出来にくい体質でさ。一応、ストックを用意しようって話になったみたいなんだ。だから、二人とも兄さんに対して悪感情は持ってなかった。まあ、僕が生まれてからは多少邪魔に思っていたかもしれないけど」
小さく肩を竦めてそう語り、義弟はこちらへ視線を戻した。
「でも、殺された時期は僕が生まれて間もない頃だから、復讐心を抱くようになるまで追い詰める暇なんてなかった筈だよ。何より────兄さん自身が、『前公爵夫妻には、良くしてもらった』と証言している」
トントンと指先でテーブルを叩きつつ、義弟はベンチの背もたれに寄り掛かる。
言動の端々に複雑な感情を露わにしながら。
「そうなると、残る動機は次期当主の座を守るための保身に絞られる。けれど、もしそうなら僕も……いや、僕こそ殺さないとおかしい。よって、導き出される結論は────特に理由はない、なんだよ」
ややピンク寄りの赤い瞳に憤怒と憎悪を宿し、義弟は強く手を握り締めた。
どこか物々しい雰囲気を醸し出す彼は、眉間に深い皺を刻む。
「だから、変に出しゃばったり兄さんの行動を妨げたりしなければ安全なんてことはない。義姉さんはもうちょっと危機感を持った方が、いい」
真剣味を帯びた声色で再度忠告し、義弟は手を組んだ。
おもむろに背筋を伸ばす彼の前で、私はそっと目を伏せる。
「とりあえず、お話は分かりました。一度、よく考えてみます」
正直まだ混乱しているため、私は『自分の考えが変わった』とも『絶対に意思を曲げない』とも言えなかった。
とにかく情報を整理する時間が必要だと判断する中、私はふと視線を上げる。
「ところで、何故そんなに事件のことにお詳しいんですか?フェリクス様は当時、赤子だったんですよね?」
「色々ツテを使って、調べたんだよ。あとは本人に聞いたり、ね。まあ、ほとんど何も教えてくれなかったけど」
『基本、ずっと黙り』だと語り、義弟は不満を露わにした。
────と、ここで『奥様~!』と私を呼ぶ声が聞こえてくる。
恐らく、専属侍女のベロニカあたりだろう。
「そろそろ、時間切れみたいだね。二人で居るところを見られたらお互い面倒だろうし、僕は行くよ」
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