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本編
紙と髪①
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「……是非お願いします」
義弟の望む通りの返事を口にすると、彼は満足そうに微笑んだ。
が、直ぐに真剣な顔つきとなって夫達の方へ向き直る。
「本人もこう言っているし、しばらく預かるよ。いいよね?兄さん」
「……」
夫はうんともすんとも言わずに、ただじっとこちらを……私を見つめる。
まるで、『レイチェルはそれでいいのか?』と問うように。
全然よくない……嫌に決まっている。私は旦那様の隣に居たい。
でも、お姉様のことを見捨ててまでこの願いを叶えたいとは思わないわ。
だから……。
「────分かった」
そっと目を閉じて、夫は義弟の申し出を受け入れた。
いつもなら、『ふざけるな』と叱咤している筈なのに。
これには、義弟本人も驚く。
「いいの?兄さんなら、絶対に反発すると思ったけど」
「貴様に預けるのは癪だが、レイチェルの意思なら仕方ない」
「なら、離婚の方も……」
「そっちは別の話だ」
『レイチェルの意思だからと言って、直ぐに承認は出来ない』と言い放ち、夫は一歩後ろへ下がった。
かと思えば、道を開ける。
「いいから、とにかく連れて行け。そして、家に送り届けたら直ぐに戻ってこい。第二皇子の代理人として、やってきた“急ぎの用件”とやらを処理しないといけないからな」
『まさか、何の用事もなく来た訳じゃないだろう?』と言い、夫は両腕を組んだ。
どことなく威圧感を放つ彼に対し、義弟は『もちろんだよ』と述べる。
「じゃあ、とりあえず義姉さんを送っていくね」
────と、義弟に言われた数時間後。
私は彼の住む家へ足を運び、客室でただボーッとしていた。
特にやることが、なかったので。
何より、使用人に見張られているため下手に動けなかった。
『トイレに行くだけでも、怪しい目で見られるから……』と嘆息し、私はソファの背もたれに寄り掛かる。
これで……良かったのよね?
冷静になって自分の行動や決断を振り返り、私は少し不安になった。
風に揺れるピンク髪を押さえつつ、口元に力を入れる。
────と、ここで窓から何か飛び込んできた。
「……紙?」
ちょうど足元に落ちたソレを前に、私はパチパチと瞬きを繰り返す。
が、あることに気づくなり目の色を変えた。
「────あの、どうかなさいましたか?」
先程の独り言を聞いていたのか、使用人の一人が不思議そうにこちらを見つめる。
戸惑っている様子の相手に対し、私は慌てて
「何でもありません。ちょっと髪が乱れて、驚いただけで」
と、弁明した。
『はあ……』と言って仕事に戻っていく使用人を見送り、私は素早く足元の紙を拾い上げる。
やっぱり、これ────ロルフの文字だわ。
義弟の望む通りの返事を口にすると、彼は満足そうに微笑んだ。
が、直ぐに真剣な顔つきとなって夫達の方へ向き直る。
「本人もこう言っているし、しばらく預かるよ。いいよね?兄さん」
「……」
夫はうんともすんとも言わずに、ただじっとこちらを……私を見つめる。
まるで、『レイチェルはそれでいいのか?』と問うように。
全然よくない……嫌に決まっている。私は旦那様の隣に居たい。
でも、お姉様のことを見捨ててまでこの願いを叶えたいとは思わないわ。
だから……。
「────分かった」
そっと目を閉じて、夫は義弟の申し出を受け入れた。
いつもなら、『ふざけるな』と叱咤している筈なのに。
これには、義弟本人も驚く。
「いいの?兄さんなら、絶対に反発すると思ったけど」
「貴様に預けるのは癪だが、レイチェルの意思なら仕方ない」
「なら、離婚の方も……」
「そっちは別の話だ」
『レイチェルの意思だからと言って、直ぐに承認は出来ない』と言い放ち、夫は一歩後ろへ下がった。
かと思えば、道を開ける。
「いいから、とにかく連れて行け。そして、家に送り届けたら直ぐに戻ってこい。第二皇子の代理人として、やってきた“急ぎの用件”とやらを処理しないといけないからな」
『まさか、何の用事もなく来た訳じゃないだろう?』と言い、夫は両腕を組んだ。
どことなく威圧感を放つ彼に対し、義弟は『もちろんだよ』と述べる。
「じゃあ、とりあえず義姉さんを送っていくね」
────と、義弟に言われた数時間後。
私は彼の住む家へ足を運び、客室でただボーッとしていた。
特にやることが、なかったので。
何より、使用人に見張られているため下手に動けなかった。
『トイレに行くだけでも、怪しい目で見られるから……』と嘆息し、私はソファの背もたれに寄り掛かる。
これで……良かったのよね?
冷静になって自分の行動や決断を振り返り、私は少し不安になった。
風に揺れるピンク髪を押さえつつ、口元に力を入れる。
────と、ここで窓から何か飛び込んできた。
「……紙?」
ちょうど足元に落ちたソレを前に、私はパチパチと瞬きを繰り返す。
が、あることに気づくなり目の色を変えた。
「────あの、どうかなさいましたか?」
先程の独り言を聞いていたのか、使用人の一人が不思議そうにこちらを見つめる。
戸惑っている様子の相手に対し、私は慌てて
「何でもありません。ちょっと髪が乱れて、驚いただけで」
と、弁明した。
『はあ……』と言って仕事に戻っていく使用人を見送り、私は素早く足元の紙を拾い上げる。
やっぱり、これ────ロルフの文字だわ。
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