駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど

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番外編

安泰《マルセル(モブ商人) side》②

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 『太客の趣味や動向は、把握しておくに限る』と思いつつ、私は抱き枕をラニット夫人に手渡す。

「抱き枕の使い方はその名の通り、抱っこするだけです。それなら、クッションやぬいぐるみで事足りると思うかもしれませんが、こちらは見ての通り細長に作られています。そのため抱っこしやすく、また足で挟むのにちょうどいい」

「足で挟むと、何かあるのか?」

 ラニット公爵は『むしろ、寝るとき邪魔にならないか?』と懸念を零し、少しばかり眉を顰めた。
抱き枕を使って熟睡するところが、あまり想像出来ないらしい。

「個人差はありますが、安心感があるそうです。あと、凄く体勢が楽なんだとか。女性は特にそういう効果を得られやすい、と聞いております」

 抱き枕を利用している客から聞いた感想を口にし、私はチラリとラニット公爵の顔色を窺った。
すると、彼はおもむろに自身の顎を撫でる。

「本当にそんな効果があるのか、甚だ疑問だが……まあ、いい。買おう」

 『物は試しだ』と主張するラニット公爵に、私は目を輝かせた。

「ありがとうございます!ちなみにサイズは今のところ、三段階ありまして。色やデザイン、弾力性なども含めると全二十種類以上あり……」

「全て買う」

 さすがはラニット公爵家とでも言うべきか、気になるものには惜しみなく金を使う。
『妻が気に入れば、また買おう』と述べる彼に、私は満面の笑みを浮かべた。
上手く行けば定期的にラニット公爵家と取り引き出来る、と思って。

「畏まりました。では、直ぐに全種類の抱き枕を手配しますね。あっ、それとこちらはサービスになります」

 そう言って、私は安眠効果のあるアロマや茶葉をオマケした。
『睡眠大好きなラニット夫人なら、きっと気に入るだろう』という確信があったため。

「本日はお買い上げ、ありがとうございました」

 ────と、告げた数週間後。
こちらの目論見通り、ラニット公爵家から抱き枕やアロマの追加注文を受けた。
どうやら、ラニット夫人のお気に召したらしい。

 思ったより、早く連絡が来たな。しかも、一度にこんな量を注文するとは。
公爵も妻に関することでは、財布の紐が緩むようだ。

「ふふふふふふ……これで我が商会は安泰だな!」

 自室で一人祝杯を上げ、私は今後もラニット夫人に安眠グッズを紹介することを誓った。
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