駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど

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番外編

バレンタイン②

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「やはり、カカオ100パーセントのものは紹介するべきじゃなかったですね……申し訳ありません」

 マルセルはシュンと肩を落として、謝罪する。
食べたい、と言い出したのはこちらなのに。
第一────

「いいえ、謝らないで。むしろ、私は貴方に感謝しているの。やっと、旦那様にピッタリなチョコを見つけられたから」

 ────こちらはもう買う気なんだが。
『この苦味なら、旦那様も満足する筈』と考える私を前に、マルセルは大きく目を見開いた。

「えっ……えっ!?本気ですか!?」

「ええ、もちろん」

「も、もしラニット公爵のお口に合わなかったらどうするんですか……!」

「別にそれでもいいのよ。いつかは笑い話になるもの」

 『そういう失敗も思い出になる』と主張すると、マルセルは大きく瞳を揺らす。

「ら、ラニット公爵に怒られたり嫌われたりする可能性はないのですか……?」

「ないわね。食べたものが口に合わなかっただけで、目くじらを立てるような方ではないから」

 『明らかに本人の口に合わないものを与えたなら、ともかく』と話し、私はソファから立ち上がった。

「とはいえ、気に入ってくれるか分からないものを大量に送り付ける訳にはいかないわね。だから、今日のところは少しだけいただける?」

 『旦那様が気に入ってくれたら、また買いに来る』と約束し、私は包装と精算をお願いする。
その後────私は直ぐに商会を後にして、自宅へ帰った。
と同時に、夫の執務室を訪れる。

「旦那様、こちらバレンタインチョコです」

 綺麗にラッピングされた袋を差し出し、私は『どうぞ』と促した。
すると、夫は一先ずソレを受け取る。
怪訝な表情を浮かべながら。

「……バレンタインチョコとは、なんだ?新商品の名前か?」

「いえ、バレンタインチョコというのは商品じゃなくて────」

 マルセルから聞いた話をそのまま口にすると、夫はスッと目を細める。

「つまり、好きな男へチョコを贈る文化に因んでバレンタインチョコと呼ばれているのか」

 チョコの入った袋をじっと見つめ、夫はリボンに手を掛けた。
かと思えば、丁寧にラッピングを解く。

「馴染みのない文化ではあるが、面白い。これはもらっておこう」

 袋からチョコを一つ取り出し、夫は迷わず口に入れた。
その瞬間、少しばかり目を剥く。

「菓子なのに、かなり苦いな」

「お口に合いませんでしたか?」

 『甘い方が良かったか』と思案する私に対し、夫は

「いや、むしろその逆だ」

 と、即答した。
ここで『美味しい』と素直に言わないあたり、実に彼らしい。

「お気に召したようで、良かったです。また今度、差し入れしますね」

 私は二つ目のチョコに手を掛ける夫を見つめ、小さく笑った。
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