駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど

文字の大きさ
121 / 126
番外編

休暇申請《ロルフ side》②

しおりを挟む
「あの、奥様!実は折り入って、お願いしたいことが!」

 挙手しながらそう言い、僕は少し前のめりになった。
ちょっと興奮状態の僕を前に、奥様はコテリと首を傾げる。

「何でしょう?」

 真っ直ぐこちらを見つめ返し、奥様は話の先を促した。
なので、僕はこう答える。

「僕が休暇をもらえるよう、公爵様に口添えしていただけませんか!」

「無理です、ごめんなさい」

 一も二もなくバッサリ断ってくる奥様に、僕は目を剥いた。
まさか、迷う素振りも見せないとは思わなかったため。

「な、何故ですか……!」

 堪らず疑問を吐き出すと、奥様は自身の胸元に手を添える。

「仕事の内容や状況をよく理解していない私が、口を出していい問題じゃないからです。下手に干渉すれば、現場に混乱を生むでしょうし」

「うっ……!それは確かに……!でも、公爵様の妻として、少しくらい意見したって……!」

「私は仕事とプライベートを別に考えているので、妻として何か言う気はありません」

 『第三者として、客観的な意見をするならともかく』と話し、奥様はこちらの要求を完全拒否した。
良くも悪くもしっかりした性格の彼女を前に、僕は言葉に詰まる。
あちらの言い分は、至極真っ当なものなので……。
でも、このまま引き下がる訳にはいかなかった。

「じゃ、じゃあ……せめて、話し合いに同席していただくことは!」

 僅かに身を乗り出し、僕は縋るような目を向ける。
すると、奥様は

「まあ、それくらいなら」

 と、応じてくれた。
『だけど、意見なんかはしませんからね?』と念を押す奥様に、僕はコクコクと頷く。
この際、彼女を巻き込めれば何でも良かったため。

「ありがとうございます!では、行きましょう!」

 ────と、告げた数分後。
僕は執務室で、公爵様と向かい合う。

 大丈夫……ここには奥様も居るから、あからさまな害意を向けてくることはない筈。

 来客用のソファに腰掛ける桃髪の女性を一瞥し、僕は深呼吸した。
と同時に、真っ直ぐ前を見据える。

「公爵様、お願いです!僕に────まとまった休暇をください!」

 深々と頭を下げて頼み込み、僕は僅かに表情を強ばらせた。
『つ、ついに言ってしまった……!』と緊張する僕を前に、公爵様は案の定とでも言うべきか……眉を顰める。
だが────奥様の視線に気づくと、真顔に戻った。
かと思えば、おもむろに前髪を掻き上げる。

「……分かった」

「!」

 ピクッと僅かに反応を示し、僕は勢いよく顔を上げた。
キラキラと目を輝かせる僕の前で、公爵様は新たな書類を作成する。

「ただし、休暇期間は一週間だ」

 『それ以上、休まれると困る』と言い、公爵様は完成した書類をこちらに差し出した。
そこには、僕の休暇に関することが記されている。

「あ、ありがとうございます、公爵様!」

 両手で書類を受け取り、僕は満面の笑みを浮かべた。

 まさか、こんなにあっさり休暇申請が通るとは!
奥様に同席してもらって、正解だった!

 『奥様に口添えしてもらうまでも、なかったな!』と心の中で呟き、僕はうんと目を細める。
そして、もらった書類をギュッと抱き締めた。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました

つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。 けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。 会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話

彩伊 
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。 しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。 彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。 ............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。 招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。 送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。 そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。 『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』 一日一話 14話完結

妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。 だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。 しかも新たな婚約者は妹のロゼ。 誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。 だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。 それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。 主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。 婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。 この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。 これに追加して書いていきます。 新しい作品では ①主人公の感情が薄い ②視点変更で読みずらい というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。 見比べて見るのも面白いかも知れません。 ご迷惑をお掛けいたしました

【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語

ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ…… リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。 ⭐︎2023.4.24完結⭐︎ ※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。  →2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

処理中です...