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十字架
取り調べ
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*◇*◇*◇*◇
「なん……じゃ、ありゃあ……」
驚愕、そして絶句。
あまりの光景———人界軍の主力ともなり得る新兵器『ヴェンデッタ』。
……そのヴェンデッタが、あろうことか格納庫の隔壁を破壊し、しまいには機動小隊専用の寮舎の屋根を一部破壊していたのだから。
———そんなあまりの光景を仰ぎ見ながら絶句したセンは、もはや動こうとも思えず、ただただグラウンドの真ん中に立ち呆けていただけだった。
*◆*◆*◆*◆
意識が付いた。
真っ暗闇の中に、色を塗るように光が入る。
「ん……ぅ……」
白……いや、オレンジ色の照明だろうか。それにしては薄暗い、影のように薄暗い部屋の中に、僕1人だけがただ椅子に深く腰掛けていた。
……と言っても、気付いた時から既にこの状態だった。
直前の記憶は———ヴェンデッタのコックピット内の記憶だった。
……確か、強制的に乗せられて……背中に何かをブッ刺されて……ってそれは大丈夫なのか?!
途端。コツン、と。
足音のような、軽い音がした。
真正面の暗がりからひょこっと顔を出したのは、セン隊長だった。
ここでようやく気付いたが、僕の目の前には透明な窓のようなものが貼ってあるらしい。2、3回指を浸すが、どれもその境界線を越えることはなかった。
「……あ~……うん、ケイ君には悪いんだけど……コレは取り調べだ」
「どんな、ですか?」
「ヴェンデッタ。……動かしたのは君で間違いない?」
僕で間違いない……と思う。
だけど、僕とヴェンデッタが合流する前は———誰が動かしていたのかは分からない。
「まあ、僕……です、ちょっとだけ動かしました」
「ちょっとだけ、かあ……格納庫を破壊して、機動小隊隊員の寮舎も破壊してみせた……これがちょっと、なのか?」
詰め寄るような口調だったが、隊長本人は眉一つ動かす様子はなかった。憤っている———とも考えづらい。
……だがしかし、下手に嘘をつくことはおそらく逆効果だ、ここは大人しくあったことだけを正直に話そう。
「…………ヴェンデッタを動かしたのは僕です。……でも、格納庫を破壊したのも、寮舎を破壊したのも僕じゃありません。そもそも、僕は格納庫からヴェンデッタに乗ったわけじゃないですし———」
それを聞き届けた瞬間、隊長の顔色が急変した。
具体的に言うなら、驚愕と恐れが入り乱れた表情に。とても強張っていた。
「ああ———いや、いいや。……続けてくれ、というより、君がヴェンデッタに乗る前後のことを知りたい」
「なら———」
起こったことは全部話した。
もちろん、教官を止めに行ったことは何一つ話さなかったけど。
ヴェンデッタが、おそらく勝手に動いたこと。ヴェンデッタに勝手に乗せられたこと。ヴェンデッタに乗った瞬間に、背中に何かをブッ刺されて、その何かが刺さったまま操縦してしまったこと。
……操縦というよりかは、思念しただけだったけど。
「……そうか、勝手に動いた、か。……じゃあ、君じゃないんだな。寮舎などの建物破壊は———」
「あ、グラウンドの木は……倒しました」
「ん……まあそれはいいだろう、幸い怪我人も出なかった。…………それはそれだが、やはり……まずいな、コレはどうするべきか……」
隊長の顔色は、ますます深刻な方向へと向かってゆく。焦燥は明らかに見え透いていた。
……でも、よく考えなくてもやばいのは分かる。……だって、ロボットが———サイドツーが、勝手に動いたんだから。まるで自分の意思でもあるかのように。
だから僕は———その真実に、触れたくなかったのかもしれない。
「なん……じゃ、ありゃあ……」
驚愕、そして絶句。
あまりの光景———人界軍の主力ともなり得る新兵器『ヴェンデッタ』。
……そのヴェンデッタが、あろうことか格納庫の隔壁を破壊し、しまいには機動小隊専用の寮舎の屋根を一部破壊していたのだから。
———そんなあまりの光景を仰ぎ見ながら絶句したセンは、もはや動こうとも思えず、ただただグラウンドの真ん中に立ち呆けていただけだった。
*◆*◆*◆*◆
意識が付いた。
真っ暗闇の中に、色を塗るように光が入る。
「ん……ぅ……」
白……いや、オレンジ色の照明だろうか。それにしては薄暗い、影のように薄暗い部屋の中に、僕1人だけがただ椅子に深く腰掛けていた。
……と言っても、気付いた時から既にこの状態だった。
直前の記憶は———ヴェンデッタのコックピット内の記憶だった。
……確か、強制的に乗せられて……背中に何かをブッ刺されて……ってそれは大丈夫なのか?!
途端。コツン、と。
足音のような、軽い音がした。
真正面の暗がりからひょこっと顔を出したのは、セン隊長だった。
ここでようやく気付いたが、僕の目の前には透明な窓のようなものが貼ってあるらしい。2、3回指を浸すが、どれもその境界線を越えることはなかった。
「……あ~……うん、ケイ君には悪いんだけど……コレは取り調べだ」
「どんな、ですか?」
「ヴェンデッタ。……動かしたのは君で間違いない?」
僕で間違いない……と思う。
だけど、僕とヴェンデッタが合流する前は———誰が動かしていたのかは分からない。
「まあ、僕……です、ちょっとだけ動かしました」
「ちょっとだけ、かあ……格納庫を破壊して、機動小隊隊員の寮舎も破壊してみせた……これがちょっと、なのか?」
詰め寄るような口調だったが、隊長本人は眉一つ動かす様子はなかった。憤っている———とも考えづらい。
……だがしかし、下手に嘘をつくことはおそらく逆効果だ、ここは大人しくあったことだけを正直に話そう。
「…………ヴェンデッタを動かしたのは僕です。……でも、格納庫を破壊したのも、寮舎を破壊したのも僕じゃありません。そもそも、僕は格納庫からヴェンデッタに乗ったわけじゃないですし———」
それを聞き届けた瞬間、隊長の顔色が急変した。
具体的に言うなら、驚愕と恐れが入り乱れた表情に。とても強張っていた。
「ああ———いや、いいや。……続けてくれ、というより、君がヴェンデッタに乗る前後のことを知りたい」
「なら———」
起こったことは全部話した。
もちろん、教官を止めに行ったことは何一つ話さなかったけど。
ヴェンデッタが、おそらく勝手に動いたこと。ヴェンデッタに勝手に乗せられたこと。ヴェンデッタに乗った瞬間に、背中に何かをブッ刺されて、その何かが刺さったまま操縦してしまったこと。
……操縦というよりかは、思念しただけだったけど。
「……そうか、勝手に動いた、か。……じゃあ、君じゃないんだな。寮舎などの建物破壊は———」
「あ、グラウンドの木は……倒しました」
「ん……まあそれはいいだろう、幸い怪我人も出なかった。…………それはそれだが、やはり……まずいな、コレはどうするべきか……」
隊長の顔色は、ますます深刻な方向へと向かってゆく。焦燥は明らかに見え透いていた。
……でも、よく考えなくてもやばいのは分かる。……だって、ロボットが———サイドツーが、勝手に動いたんだから。まるで自分の意思でもあるかのように。
だから僕は———その真実に、触れたくなかったのかもしれない。
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