【R-18】異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re:

山下敬雄

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21 ヤンチャ王vs

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 西館校舎裏、本来なら風のよくとおる日陰の辺り。
そこにひっそりと佇む椎茸笠の屋根をした建造物、きのこを模したような小屋がある。


▽3-C榎田椎名のきのこハウス▽にて


 意外と広いきのこ小屋の中には、やさしいきのこの香りが漂っている。きのこ好きにはたまらない、コレクトした生のきのこや、きのこ関連グッズに囲まれた女子部屋。そんな女子力ときのこ力の高い部屋で、これまでダンジョンでも渋く頼れる働きをしてきた武力の高いシスター榎田椎名は、現在絶賛ベッドの上に寝込んでいる。

 白い冷蔵庫は心配そうに彼女のことを、体を傾け覗き込んでいる。ぬるくなった水滴だらけの青いアイス枕をそっと吸い寄せ回収し、新しいアイス枕を吐き出して彼女のおでこへと大雑把に被せた。

 冷蔵庫はバタンとその扉をしめた。今閉められた白い冷蔵庫の扉の表面は、色々なものが貼り付けられていた。彼女が休んでいる間に発見した新種のきのこの情報や、手に入れた良い感じに彼女に合いそうな武具のこと、さらに色文字で彼女の似顔絵を囲うように書かれた寄せ書きの色紙のメッセージ。


「うぅ……ママぁ……きれいなきのこぉ……きゅーしゃい……」


⬜︎寄せ書き

もうきのこさんたちに光を当てません!!! 勝手に水もやりません!!! 早くよくなってください、しーなせんぱい!!! サンチュ

その帽子どこで売ってんの? ん、どつき茸のシールあげる ちかる

バター茸のおにぎり! 置いときます!(冷蔵庫にも色々入れました好きに食べてください) 緒方結美

しいたけ茶の粉末です。至極美味 サーガ

鶏ちゃん1号2号がきのこ園へ来ないように見張っておきます、ご安心を 紫紫刀

おいしくそだててね。またちちりん焼きさそってね したん

勝手に小屋をたてるのは風紀違反ですよ? くぬぬ? 風紀委員部部長小角灯

雷がちかくに落ちるときのこの発生量が増えると昔ホームセンターで噂に聞いたのだけど、ひとつここの原木で試してみてもいいかしら? 登別海

はやく良くなって、あぁー、ダンジョンいこーぜ? 浦木幸

榎田椎名げんきだしいな! キミの校長

らららっらーらーらら元気のこ。元気だして、これバジルきのこソース カズハ
⬜︎





▼▼▼
▽▽▽





⬜︎スマートタコイカ学習帳アプリ
ヤンチャゴブリンキング:
土色肌の巨大なゴブリン王。
威厳ある金の王冠を冠しており、その体は通常のヤンチャゴブリンよりもはるかに大きく、王の威厳からか見た目の筋肉も発達しており引き締まっていてパワーもある。
さらに泥と藁を固めた鎧は鉄より堅牢であり、中々簡単に鎧外からダメージを与えることは難しい。
ゴブリンソードの膂力と地属性魔法、重力魔法に注意。手下のヤンチャゴブリンの召喚にも注意。
⬜︎

「おそらくキング、王、頭が高い攻撃には浮遊する者を叩き落とす魔法が来るわ。【地極斬コルチ】が潰された理由ね」

「なるほど……あっ、では────」

「うん────そうね、それで行きましょう。おそらくカウンター魔法、相手の王も条件を満たすために手札にあらかじめ準備しておく必要があると思うわ。つまり剣技、泥の鎧、浮遊物へ対してのカウンター魔法、手下の召喚魔法、いくら王とはいえ全部のタスクをいっぺんに己の思考と魔力量ではこなせない。タガヤさんの溜め、スピードなら、一瞬ぐらいの隙は上手くやればつける可能性はあるわ」

「ハイ、承りました! カイさん!」

 登別海と紫紫刀はお互いしっかりと作戦を擦り合わせ、グータッチした。登別は己の異能【カード】を重ね、運良くやりくりし重ねたグー属性の魔力札をタガヤへと今、受け渡した。


 パーティーの前衛の前衛役ことこの男、浦木幸は相も変わらずいつもの如く戦っている。

 巨体のモンスターから振り下ろされる斬れ味の悪い〝天誅〟。下の者を叩きのめすような剣を掻い潜り──。漏れ出たモンスターの殺気をかわす本能とセンスを発揮しながら、浦木幸は用いる二種のショートソードを隙あらば喰らわせ舞っている。

 しかしその泥と藁草を固めた鎧の硬さは、幾度とひび割れても王の魔力により、また編まれ、健在。みどりと土のステージから素材をいただき、魔力消費量を抑え安価で修復しやすいのも魅力のアーマー魔法であった。

 ピネスが斬りつけ放つ鎧外からの小クリティカルや、自分だけの魔力で繰り出した緋色と翠の剣技は、ヤンチャゴブリンキングの身にはあまり響かず。

「剣と剣相手は、鳥の嘴よりはやりやすいが……どうもバチっとヤレそうな感じがしない……ナッ……!」

 先読みする殺気を先読む──。振り下ろされた攻撃は、緋色に魔力爆発させ弾いた。ぶつかる巨刃とショートソード、互いの魔力と魔力は混ざり合いさっきよりも規模の大きな【バーンファイア】はクリティカルで発動した。

 緋色の爆発はピネスの膂力を補うが、巨体から受けたパワーある太刀の威力はしっかりと受け取ってしまう。だが、キングの振り下ろした剣と腕も上へと弾かれ、同時にピネスは後方へと大きく弾き飛ばされた。

 そのツギハギブレザーの頑張る背を見届けていれば、待っていれば、勝手に訪れる機がある。

 しっかりと足を地に止めて溜めた、今、女執事は踏み出し仕掛けた。

 同じジンガの構え同じ地から魔力を練り上げる流れがある。爆発する緋色は目眩しか、しかし目に見えずとも泥草の鎧を制御する王は、遠くのソイツが何をしでかすかを悟っていた。

 ゴブリン王の目する注意は空の気配へ、そして冠した金色の王冠が、浮遊物を撃ち落とす不可視の魔力を前方へと放出散布した。

 何かが落ちた──手応えはある。に乗り高く舞った無礼者が、地を這いつくばりまた土下座している感触が心地よい振動が、確かにあった。

 王はニヤリと嗤う。

 頭を使い読み、頭のアイテムを適切に使った王に隙はない。しかしその愚かで賢い王は気付かない、闘いとはセオリー通りに固めて進め、ソレが思惑通りにハマったとて必ず勝てるとも終わるとも限らない。人間が三人集まれば何をしでかすかは分からない。

 頭の高い王の思考外、暗い足元に仕込まれたそのヤンチャなイチゲキを──


「【キャニオン】!!!」

 その黒い影は、緋色の爆炎の残り香を割き、姿勢低く現れた。巨体の足元手前で両手をつく。

 逆さにぐっと束ねそろえた足元。そのグーを意味する整然とした両脚のカタチは、バネのように跳ねた。そしてレイピアのように鋭く泥鎧を蹴破り、王の無防備であった臍を突き刺した。

 上から来ると思われたのはブラフ。──ではなく、本当にそれは飛んでいた。ダメージを受け情けなく派手に土下座までしていたのは別の駒、紫紫刀のルーティンを見よう見まねで模倣した登別海の姿であった。

 登別が大袈裟に飛んだタイミングより半歩遅れて、打ち合わせ通りに間に合わせたのは紫紫刀。事前に託された魔法札によりグー属性をたんまり重ねてエンチャントされた彼女は、放つ地技、本命の【キャニオン】を王の懐へと、綺麗に揃えたグーのカタチの足裏で威力増し増しで叩き込んだ。

 口先のハッタリだけではない。登別の行った実のあるフェイントであっさり王の懐へと潜り込んだタガヤは、綺麗に磨いたドレスシューズの華奢な足裏からモンスターの巨体を真上へと力強く打ち上げた。

 そして、女子二人が頑張りを見せた間にも、立ち直った影がひとつ、飛び立った。ピネスは聞かされていない彼女たちの取った戦術と戦況、意図を理解し、迷わず打ち上がる王の身へと追撃を仕掛けた。

 臍を丸出し、泥草の鎧が大破損。強烈なグー足をその身に受けたヤンチャゴブリンキングは、その身が痛く打ち上げられてもなお──足掻いた。

 キングは丁度使用可能になった【ヤンチャゴブリン召喚】を実行。上へと運ばれながらもなんと茶色のヤンチャな手下をばら撒き、なおも噛み付かんとする不届な追手の視界を占有するデコイにしようとした。

 そのボス級モンスターは確実に相手の嫌がることをしている。しかし、嫌がらせは人間も得意。土壇場の直前ではなく事前にもされていた。

 登別のアシスト。王が再度、手下を召喚しようとしたとき、じわじわ効いた最初の戦闘時召喚時に既に掲げていた【イエローカード】の効果で、召喚行動は途中で不発。それ以上、小さな手下をわらわらと呼び寄せることができず。

 2、3の影がまばらに散り、王へ刃を向ける不届者へと向かった。

 急に呼び出されても降下してくる茶色の手下は意気込みはよし、どこかその扱いに似たようなシンパシーも感じる。

 されど、向かって来るならば。

 ピネスは握るショートソードを落ちてきた輩に起用に突き刺した。そして後ろにした獲物を緋色に爆発させる。上から襲いかかった雑兵のヤンチャゴブリンはさらに彼が真上へと向かう手助け、その推進剤代わりにされた。

 視界良し、障害物はなし、進む道はもう真っ直ぐ真上でしかない。弱点と思われるキラリと光る威厳あるゴブリン王の頭へと、ピネスは一気に加速して仕掛けた。

「これでラーゴムなんだろおおお!!!」

 いらなくなったロケットブースターを途中パージするように、緋色の愛剣は迷わず捨てられた。身軽になったピネスは次のアクションへ移り──右の翠を剣鞘ホルダーから素速く抜き出した。

 ぐんぐんと上昇し近づく、差し迫る青い期待感迸る凶刃に──

 焦る王はニヤリと嗤った。王の表情は豹変する。突如、頭にしていた硬い王冠を右手に脱ぎ取り、手に取ったその王冠で、まるでメリケンサックで殴りつけるよう襲う刃をガードした。

「そうかよッッ、ヤンチャキングっ!!!」

 読みが外れたのはお互い様。威厳ある王冠を外し少し身がだらしなく肥えてしまった王は、それでもその膂力は健在──この安くない王のクビを決してタダでは、一介の剣士なぞに譲らない。

 やけに硬い光り輝く王冠の右ストレートと、青雷のマジックを金属音と共に奏でる翠のショートソードは、鍔迫り合う。

 異能と異能、能力と能力、チカラとチカラ。いくら策を凝らし敵を欺けど、結局チカラ勝負になる局面は、闘いのどこかに必ずある。

 バチバチと魔力滾る火花を散らす。お互いに激しくやり合った、臆さない攻と攻は────まだ終わらない。

 遅れて彼の尻についてきた朱文金が、殴り合い宙に止まった青い王冠の輪をくぐった。燃え盛るお魚は輪くぐりの一芸を披露し、クラスチェンジ。巨大化した青い朱文金は、威厳ある言を発しながら──凄まじい雷を吐いた。

『貴様が餓鬼共の王だと? くっくっく──ナケ!!!』

 雷属性の激しいブレスは青から赤赤と魔力量熱量を増し染まる。巨大ゴブリンの全身へと伝った神の児戯にも等しい赤雷は、ターゲットを痺れさせ、あっという間に撃ち落とした。


「浦木せんぱいッ、いきますよーっえいっ!」


 鍔迫り合いの最中に示現降臨した喋るお魚さんに呆気に取られていたピネスは、今、下方からよく耳に届いた元気な大声に気付いた。

 気付いたときにはくるくると、結構な勢いで回転運動し投げられていた剣を、なんとかピネスはその手におさめてキャッチ。

 ピネスはボスとの打ち合いで疲れた翠のゴブリンソードに代わり、サンチュから投げられた黒猫の剣を装備した。

 もふっとした猫尻尾の柄をぐっと握り込む。しかし彼の見た事のない光る天使の輪のようなモノが、剣鍔から離れて付与されているようだ。

 今更コレが何かを気にしても仕方がない。後輩から受け取った黒い刃で、一足先に痺れ落ちたターゲットへと向かい、今、部屋の天井を強く蹴り上げ水泳選手のようにターンした。

 同じくエンチャントされた光属性の天使の輪を右足へとひとつ……スリムなお足に装備したタガヤは、既に準備完了。ぶくぶくと肥えて落ちてきた目標に合わせて今、飛び跳ねた。

 どすり……土色の巨体が地を打つ最も無防備なその瞬間──舞い下りる光の刃、舞い下りる光の靴。

「っし!っいけぇ!!!」
「【シャイニーの翼ァ】!!!」

 ──同時炸裂。剥き出しのだらしないヤンチャな腹へと、突き刺さった黒い剣とその踵。エンチャントされた光の輪は高速回転しながら、やがてその輪状の魔法に込められた威力を起動起爆する。

 それはまさに神々しく降臨する光の翼。

 魔力爆発する虹色の両翼は、激しくフラッシュしながら……。

 みどりのダンジョン50F階層ボス──冠を失したヤンチャゴブリンキングを鮮やかに光り穿った。













「なんたらの翼ってナニ? なんとなくいけそうな気がしてヤっちゃったけど、あのぉー……きいてないんだが、俺?」

「【シャイニーの翼】です! 昨日新しくバトラーバトラーに実装されたシャイニーの専用レアカードの新技ですっ!」

「新しく実装……あぁー……何かとおもえば俺のドッペルさんの方の技な。それはなんか……なんかだなぁ」

「ドッペルではありませんよ、溜息のバトラー、〝シャイニー〟です! ふふっ。というのも遠くから見ると翼のようになって────」

「────そうなのか? あぁー、たしかに光ってぶわーってなったな。翼かぁー、それは結構しゃれてるかもな? でもなんか……なんだかなぁ」

「ふふ、ですね!」

 階層ボス、ヤンチャゴブリンキングはブク高パーティーの五人の連携、最後はタガヤとピネス前衛役2人の光属性を帯びた同時攻撃により討伐された。

 黒タキシードの執事とツギハギブレザーの剣士の背が並び、今仕留めた土色の巨体が浄化されてゆく光景を眺めながら楽しそうに雑談をしている。

 新戦力の執事のタガヤと、ひよこのエッチアイの彼、前衛コンビが機能躍動。

 今回のダンジョンの冒険に同行していた小角灯は、そんな二人の姿を遠くから疑念を灯らせた黒目で、じーっと覗いている。

 やがて顎に手をあて、小角灯は立ち並ぶ彼と彼女のことを訝しむ。

「くぬぬぅ? あのふたり、なんか……必要よりちかい気がするのです?」

「そう? 考えすぎじゃないかしら、──あ、部長、分かったわ。──やきもち」

「なっ!? やっ!? そんなわけがないのですっ!!!」

「そう? 冗談のつもりだったのだけど?」

「ジョーダンっ!?? のっ登別さんおふざけも大概なのですよ!!! マッタク!! ひよこにヤキモチは焼かないのです!!! やくのは風紀と世話だけなのっっ! ──ちがっ! 風紀はやかないのでしたっ!」

「そうね」

 澄ました声と顔で長身の部員は冗談を言う。

 そんなないことを言われた側は、たまったものではない。小角は必死に声を張り上げ否定した。

 逆立ったピンクのアンテナ毛にぴょんと跳ね落ちた探偵帽を、登別海は落ち着かない部長の頭へと返した。



「せんぱーーいっ! さっきのどうでしたかー!」

「あぁー、いんじゃね? シャイニーの翼」
「素晴らしい再現度ですっ!!! シャイニーの翼!」

 後ろからすっ飛んで駆けてきた明るい声。後輩のサンチュは先程の異能を用い二人へと施した光魔法のデキのほうを尋ねた。

 先輩二人からの評価は上々、うれしくてニコニコと笑みを深めた黒髪少女。

「あはは新技ぁー、シャイニーの翼!!! まさにソレでしたねーっ!」

「はいっ!」
「あぁっ! って知ってるのか?」

 ピネスは手に絡みつく尻尾の柄を剥がした。そして黒猫の剣を持ち主のサンチュに返しながら、疑問に思ったことを今やって来た後輩に問うた。

「もちろんですよっ、バトラーバトラーのシャイニー先輩ですよねっ! ほらっこの光る〝どーなつ〟もタガヤ先輩に昨日誘われたスマホゲームのシャイニー先輩から、思いついて考えたんですよっ! ねぇタガヤ先輩!」

「ハイっ! シャイニーと同じ光属性の異能持ちとうかがっていたので、何か参考になるのではとスマホゲームのバトラーバトラーにサンチュさんを招待した次第です!」

「お、俺のドッペルから……(たしかにあいつ謎の光るドーナツを足につけながら戦ってたな……)あのぉーなんだ……俺もちょっとは、あぁー、引率リーダーとしてさ、ピカる魔力的なのとか、剣術的なのとか、最近でも教えていた記憶がある気がするんだが? ──サンチュ後輩さんはそのスマホに映ってる、どーなつドッペル野郎から閃いたと?」

「え!? いやその……」

「一瞬でひらめいたと?」

 男はジト目で後輩に対して問い詰める。まるで木浪先輩がするようなどこか恐いあのジト目だ。ピネス先輩が一歩一歩詰め寄ると、一歩一歩サンチュ後輩はたじろぎ困惑しながら下がった。

 スマホ画面に映るどーなつ執事野郎からインスピレーションを得たという、サンチュの新たな技。

 一応の先輩で師匠でもあるピネスはソコにつけ入り、珍しくも後輩いびりをしている。彼の後輩いびりの栄養成分は、サンチュ後輩からしか補えないのだ。

「ええ!? あはははぁ……あ、でもホンモノの先輩から教わった目潰しっ! 使ってますよ!」

 詰め寄って来た男の静かな圧に困ったサンチュは、以前の冒険の際にその先輩から習った目潰しを披露する。

 右手で黒猫の剣をナナメに振り、下手になった左手のひらで異能の光を発し、敵の顔面をスムーズな動きで照射する手順の技だ。

 正面に立っていたピネスは慌ててその照射された目潰しの射線から離れて避けた。自身が教えた小細工であるので反応できたが、知らなければ中々有効であるともやはり同時に思う。

「あっ! それもシャイニーがダウン時や蹴りモーションのアフターによくやりますねっ! ──やはりあなたはシャイニーと……? あと……ふふっ面白いのが、挑発モーションで食べようとしたどーなつの穴から不意に照射したりも────」

 もはや何を喋っても話の中にシャイニーが出てくる。自分が編み出した目潰しの小細工ですら、シャイニー。饒舌に語るタガヤの声に、頭の中をシャイニーとどーなつで埋め尽くされたピネスは──どうしようもなく、自分の頭をゆっくりとかきむしった。

「俺はひょっとしてシャイニーから逃げられない……のか?」


「「ハイ」」


 女子二人は彼の顔に振り向き、即答した。もはやスマホゲーム【バトラーバトラー】に染まり、現実と虚構を一緒くたに語るその女子二人には手をつけられない。何故そこまで堂々と返答できるのか、諦めるしかないようだ。

「ハイってなぁ……。あ、それよりその光るドーナツ魔法、もう一回出してくれるサンチュ後輩? ────おっけ、んじゃ──こうやって投げる! そして魔力でぐいっと握って起爆させたら、おっ、うん。なんかバフじゃなくても使えそうじゃね?」

 先輩が後輩にもう一度異能を使うよう指示をした。一つ練り上げられた焼きたてほやほやの光る輪っかは──誰もいないみどり遠方へと回転をつけ投げられた。そして今投げた方の手をぐっと握り拳にすることにより、魔力をコントロールし合図を出す。サンチュ後輩から借りた魔法のドーナツは、彼の狙ったタイミングで爆光を発した。

 ピネスは本人のセンスで思いついた技の一つを披露、伝授。先輩の後輩へささぐ愛のこもった丁寧なチュートリアルに、後輩のサンチュは飛び跳ね拍手をするほどに喜んでいる。

「あーーっさすがホンモノの先輩!!! そうですね!! わたしも一回さっそくやってみます!!! でもでも難しそうなんでもっとアドバイスくださいっ!!!」

「あっ! それは【シャイニーフープ】というCタイプ操作のシャイニーの飛び道具技ですね! ──やはりあなたは……?」

「ってやってんのかよ!! ってやはりもどうも……あぁー……どーなつ野郎め、どうなってやがる……。あとそのホンモノの先輩っての地味にやめてくれ……(俺もドッペル呼びはやめよう)」

 やはりシャイニーからは逃れられない。ピネスの即興の閃き、創意工夫も、既にシャイニーの繰り出す技のデパートの一部であった。そんな自分に似ているという納得いかない架空の存在に対して、がらにもなく少しだけ燃やしていた対抗意識。しかしこうもやることなす事先回りをされては、意識するほどもっと奴の沼にハマりそうだ。

 浦木幸は広げた両手を静かにあげ、女子二人の笑顔につられ笑うしかなかった。





▼▼▼
▽▽▽





 最新かつ最深の戦果をあげ、無事、愛しのブク高の敷地へと帰還した一行は────



 本日のMVP。ボス級ドロップアイテムの金色の王冠を頭に乗せたサンチュは東門をくぐり、やがて正門前の広場へと、ヤンチャに笑いながら皆とともに凱旋する。

 本日の冒険譚を記録した赤いタコイカ学習帳はピネスの元から飛び立ち、本校舎5階の窓に佇んでいた遠目にも存在感のある眼帯さんの元へと向かった。生徒たちの帰還を待っていた眼帯の校長は、その片目の黒目でウインクした。

 引率リーダーであるピネスは帰還するも、今日も今日とて、その高みから見つめるスペシャルな魔力と眼力の持ち主の元へと報告に向かわなければならないようだ。

 しかし急がず、焦らず、ゆっくりと。もうこのダンジョンと校舎を行き来する不思議なルーティンにも慣れたものだ。覗く窓枠から去りゆくプラチナ髪の背を見つめながら、彼の足はまた歩き出した。


「────ん?」

「今度はシャイニーラリアットも! ──どうかしましたか?」

「いや、今なんか聞こえなかったか? 笛みたいな? 体に響く……感じの?」

 ちょっぴりとテンションの高い執事、タガヤの話を校舎に向かい歩きながら聞いていた。すると途中、笛の音のような何かが奇妙に耳を、体を伝い聞こえたのだと彼は言う。

 先行していた女子集団の三人は、そんな分からないことを突然確認するように言った彼に振り返った。

「なんでしょうか……? 耳を澄ましても……分かりませんが……」
「私は何も聞こえなかったわ浦木くん、笛? へんね?」
「なにもきこえないですよせんぱーい? あっ! 疲れてるんじゃないですかっ! ダンジョン帰りでっ!」

「そうか? ぅーー……──そうだなっ」

 彼女らの反応を受けてもう一度考えた。ピネスは結局サンチュの言った明るげな言葉に、傾げそうになっていた首を頷かせた。そしてまた忘れたように前へと歩き始めた。

「もぅーなんですかせんぱいそれ、あはは!」
「あひょっとしたら犬笛かも、人には聞こえない高周波の音で犬を呼ぶ笛」
「あぁーさすがのぼりべ、ってちがうだろソレ。ちがう……よな?」
「たしかシャイニーもそういった耳や勘のいいところが……?」
「嘘だろ……(今日何度目のシャイニー)」
「あはははは! そうだっ! せんぱいって犬派猫派どっちですか!?」
「いきなりなんだそれ? あぁー、どうしようかな……ノーコメントで(これ以上シャイニーと被りたくない)」
「えぇーー!? なんでですかっ!?(つまらなかった!?)」

「くぬぬぅ……」


 ふと頭上を覆っていた探偵帽を外し、ピンと逆立つピンク髪のアンテナを摘んで風にしならせた。

 彼女の手持つ、此度の冒険の役目を終えたイニシエランタンの灯は眠ったように凪いでいる。

 立ち止まり首を傾げた風紀委員部部長は、前を見据える。女子たちに囲まれたツギハギブレザーの彼の背へと、急ぎ駆けた。

 奇妙な笛の音のミステリーなど忘れ、一行はわちゃわちゃとまた騒ぎながら、今朝ぶりのブク高の校舎へと向かい凱旋していく。

 決して楽勝とは言えない激戦を制したダンジョン帰り、女子たちと一人の男子の笑い声は絶えない。

 そんな明るい声につられコッコッコッと鳴き近づいてきたのは、猫でも犬でもなく餌をねだるコカトリス。寄って来た愛くるしい二匹の家畜に、リュックに持ち帰った識別不明の草やどんぐりをやる。

 そしていつまでも絶えない雑談や冒険話に、いつの間にか汚れたスニーカー、泥の乾いたブーツ、ドレスシューズが踏み入れた本校舎の玄関で、サンチュ後輩がもう一度大袈裟に深呼吸しおどけてみたりする。

 ゴールテープを切ったかのようなその気持ちの良さそうな仕草を、五人皆で真似をした。
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