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23 ジャカジャカジャングル!
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⬜︎課外授業みどりのダンジョン出席簿
浦木幸 ○○○○○○○○
緒方結美 ○不不研○研研○
冷蔵庫 ○不不不○○○○
榎田椎名 ○熱熱熱熱熱○○
サンチュ 魔バ○○バ魔蹴○
木浪智火瑠 ○魔魔魔○魔魔○
水野サーガ 不○○○不○○不
小角灯 不○不○不○○不
登別海 不不○○不不○不
紫紫刀 ○○○○バ○蹴○
○ 参加
不 不黒高校で待機
熱 熱がある・だるけがある
研 研究
魔 魔法異能訓練SP
バ バトラーバトラー
蹴 蹴りの訓練
⬜︎
午前10時より、ブク高の生徒たちが日々ローテーションで挑むはダンジョン。ご入場は東門の先、みどりの渦巻くゲートから。今日のパーティーは7人と1台。異能、魔法、武器に異常なし、コンディションは上々。
様々な情報を貼り付けられた白い冷蔵庫の扉が今、勢いよく開かれた────。
魔力冷気を帯びた数多の手裏剣が蝙蝠猿たちの羽を穿ち、遠距離から不意を打ち撃墜。
より鬱蒼としたみどりの大部屋での戦いは、既に交戦が始まって1分以上が経過。新種の獣型モンスターたちを相手に、ブク高の生徒たちは各々の役割に躍動する。
黒猫の剣はみどりの草地に突き刺され、時間をかけながら光属性の魔力を練り上げた。形を成した光の輪が、その突き刺した剣を中心に縦に焼き重ねられた。
サンチュと緒方は協力し、ひとつ、ふたつ、それを手に取り、成形した白いドーナツに回転をつけ投げていく。
空から滑空してくる蝙蝠猿の編隊へと、投げたドーナツを起爆。光を嫌う退化した目の持ち主に大ダメージ、眩い爆光を浴びせ編隊を蹴散らした。
今度は魔力に反応する厄介な習性を持つヤンチャモグラニンジャ、それを逆手に取り。
勝手に地に散らばる輪をくぐっては祭りの輪投げにもならない。地下を潜り、顔を出し、輪っかを鼻先に括り付けられたヤンチャモグラニンジャは、爆砕──蹴散らられた。
(着実に魔法練度が上がっている。悪魔アンデッド特効のただの光り照らす手から、練り上げられた質のある魔法技へと昇華したな。────少し離れておこうか、ふっふ、ふぅーちゃんジョーク)
後ろに控えるお偉い方からの評価は上々。サンチュと緒方は激しい逆光を浴びながらハイタッチした。
蝙蝠やモグラを滅してもまだまだ冒険者に襲いかかる珍獣たちのパレードは終わらない。
遠く佇むオレンジ髪が甘い果実にでも見えたのか、重装のサイ兵士は立つ二足から走り構える四足になり、本能を呼び覚ましたような姿勢で走り出した。
そんな大袈裟なアクションで迫る獣に、冒険者も気付かないわけはない。避けるか、受けるか、遠距離攻撃か、彼女が杖を向け選択したのは────敵の走行間に練り上げた魔力でつくる、魔法【ストーンウォール】。
石の壁はサイの突進を受け止めた。しかし正面衝突したサイの角は溜め込んだ炎の魔力で唸り、荒ぶり燃える角となった。威力を増した角が、厚手の石壁を幾秒とも経たずに突き破った。
だが、粉々にくだけた石色、礫の散る向こう側には瑞々しいあのオレンジの姿はなかった。そして壁を砕き見えた先、地からせりあがり出てきたのは第二の石の壁。
自慢の角で猛進し粉砕していった先にあった思わぬ光景に驚き戸惑い、勢いを失ったサイ兵士へと──
「【ストーンウォール】──今朝のホットケーキは2枚って、こ・と!!」
どさくさに紛れ突進するサイの真横に位置取った木浪は、杖を水平にスイングした。魔法で生んだ石壁を異能で指揮するように引き寄せる。勢いをつけ正面衝突した石壁は、赤熱するその真正面の角をへし折り、二重に仕掛けられていた罠にハマったサイ兵をぶっ飛ばした。
(サンチュに比べて魔法力は高くないが、思考力と空間把握能力どちらも平均以上ある。【ストーンウォール】の同時重ねをできない替わりに導きだした答案が、前の壁の強度を下げ目眩しに、そして時間差で練り上げた本命の壁。余裕たっぷりの〝ズラし〟とはな。ふっふ、異能の引き寄せの使い方も注文通りだ。真っ直ぐ釣り上げるだけではなく徐々に引き出しが増えてきた。まぁ、つまりは、魔法教師を兼任するふぅーちゃん先生のビルドとおセンスに、間違いはないということだッ)
サンチュだけではなく木浪も成長している。校長は爽快に砕ける礫の中で、歯を見せるオレンジ髪の姿を見ながら頷いた。
屈強なサイ兵士を木浪が一体討ち取れど、しかし、敵は一体だけではない。サイ兵士はクイックネスの高くないモンスターだが油断は大敵。
頭のしいたけベレー帽を膨らませ、しいたけの盾へと大きく変化。そのユニーク盾の効果でストックした【茸アイテム】を【きのこ胞子】に変換し周囲に散布。風属性のマナも同時に散布し、ばら撒いた胞子をその場にとどめる。
四足で突進してきたサイの角が刺さる前に、カウンターの下準備を終えた榎田椎名は大きく跳躍し、一直線の突進をタイミングよく避けた。
使ったアイテムは【痺れ茸】。飛び上がりと同時に高まる魔力に反応した胞子は、周囲にいたサイ兵士を痺れさせ拘束状態にすることに成功。
そして背から勢いよく抜き取った風の大斧は、一気に降下しながら、サイ兵士の鎧とその厚いグレーの皮膚ごと──斬。
【笠割】
榎田椎名の得意とするリスクありの動きは、あの手この茸を絡めて、出し抜いたモンスターへと見事クリーンヒットした。
(ダンジョンのオールラウンダーと言ったところか。きのこにぞっこんな点以外の減点はない。堅実さと豪快さを合わせもつ上級生らしい立ち回りだ。まぁそんな彼女の愛らしいデメリットも長期的にはメリットへ転じていると言えるがな、ふっふ)
舞い降りたホワイトボブの姿には、そのベレー帽がよく似合う。ひらひらと舞った帽子を掴み、おもむろに被り直す。3-C榎田椎名、彼女もまた冒険者。お気に入りの帽子と共に成長し、このダンジョンを生き抜いていく。
ブク高パーティーの各員各生徒たちは、次々と異能・魔法・武力を大いに発揮しサイを、蝙蝠を、ヤンチャなモグラのモンスターの群れを跳ね返していった。
頼れる女子生徒がモンスターの群れを殲滅している間にも、この男は────2匹の豹型と剣と牙爪を研ぎ合わせ、激しく戯れあっていた。
⬜︎スマートタコイカ学習帳アプリ
【ジャカジャカジャングルジャガー】:
体毛は緑と黒の斑点模様。鬱蒼としたみどり豊かなステージでは迷彩効果もあり、より一層脅威度が増すと言える。
猫科由来の足と体のバネがありスピードはかなり速い。
素速い風属性の爪牙には注意。
回復効果のある地魔法を持っている、厄介。
【ジャカジャカメタルジャガー】:
ジャカジャカジャガーが銀色メタリックになったモンスター。
硬度な肉質をもつわりにスピードも元の種よりそれほど落ちていない。
連打を重ねないとそのメタリックな特殊装甲の硬度は下がらないため、イチゲキで倒すのは難しい。
メタル混じりは通常のゴーレム種よりも数段硬いため、常人ではその装甲を貫くクリティカルヒットを出すのは至極困難だろう。
爪牙は威力も鋭く毒があるため注意。
硬さに慢心してか避けへの意識は少し低い。
⬜︎
木から木、ステージ壁から壁、縦横無尽に飛び跳ねあそぶ銀と緑のJJジャガーは、からかいがいのある獲物へと息を合わせ──飛び掛かった。
斜め上から襲い、スピードに乗った銀と緑の爪が左右から同時攻撃を仕掛けた。
二匹の獣の息を合わせて放った獲物を狩る連携。そんなほぼ同時に迫り来た銀と緑の殺気が、喉元に到達する前に、ピネスの身体は勝手に動いた。
一匹では完成しないその超速の連携攻撃には、自ら前へと突っ込み一対一での対応を試す。
鉄砲を打ち込むように腕を目一杯伸ばし、それでは飽き足らずもはや体ごと突撃し向かう。素速く、刺突を繰り出した。クリティカル陽術【バーンファイア】は、銀色の豹の鼻先へと鮮やかに発動した。
しかし、相手はジャガー。今隙を晒したそのツギハギ色の人間の背を、もう一匹の緑の豹が高いクイックネスで地を跳ね蹴り見逃さない。
咆哮と共に風を切り唸る……。ツギハギブレザーの背に、風のエンチャントをためた剥き出しの獣の爪牙が、飛びかかるように襲う。
「【サクイチゲキ】!」
そこに振り返ると、きっと決めていた。そうでないと説明がつかないその迷いなき剣は、魔力をチャージされ最速で繰り出された。無理な体勢から一瞬で背を翻り放った青い雷撃のエネルギー斬は、元気に戯れてきた【JJJジャガー】を真っ二つに斬り裂いた。
前方に放ったバーンファイア。その爆発により引き起こされた特異な質の魔力と受ける反動を利用し、次に放った二の太刀はあまりにも速かった。黒騎士戦でも見せたいわばクリティカル攻撃の掛け算を、ピネスは自力で思い出しやってみせたようだ。
「やっぱ魚の神様がいないと威力はなんちゃってか──いてっ!?」
見事にボス級を一匹粉砕。しかしメタル混じりの方にはどうやら、ピネスの引き起こした小クリティカルの攻撃ではまだまだ致命傷には至らず。
未だつづく──もらった緋色の爆発の振動を、身についた水を跳ね除けるように、銀色の豹はぶるぶると震え全方向に拡散し逃がしていく。
顔と身体を高速ぶるぶる、viewtubeのショート動画に収めたいそんな可愛らしいモーションから一変────JJメタルジャガーは独特の重低音で腹から吠えた。ようやく牙と怒りを剥き出し、攻撃後にずっ転けていたピネスの元へと駆け出した。
「【判】! 【森迷弓】!! 【蛇撃弓】」
素早く三回、技を繰り出す。横から割って現れたすらりと長い黒足は、倒れた剣士へと駆けるその銀色のターゲットを掻っ攫った。
❶頭より高く振り上げたシンプルな右脚の【判】は敵を打ち上げる。❷高くなった右脚を地に戻す勢いで左側へ回転、勢いを得たその左の脚で真っ直ぐに飛び上がり銀色の腹を目掛け【森迷弓】は射抜いた。❸すぐさま天技へ移行……以前はつながらなかった動作も流れるようにスムーズに【蛇撃弓】で銀に光る硬い猫頭を踏み──再び地へと蹴り戻した。
『タガヤせんぱーーーい!!!』
タガヤはその明るい女子声に反応した。既にサンチュからいい魔力コントロールで投げられた光る輪を、右足の支柱に1……2……3、すらりと伸びたスタイリッシュなタキシード足に絡め取り回収。
「hit数で勝負ですっ──【シャイニークルーラー】!!!」
❹再びドレスシューズを向けて宙から地へと向かう。受け取った三つのドーナツ輪が生地のように捻り合わされた。成形された新たな一つの魔法の輪は──地に帰されうつ伏せにへばる、その銀色獣へと狙い叩きつけられた。
新たに魔力を練り直しあしらったクルーラータイプのドーナツ装備足は、始動し高速回転を始める。ヒットした獣の背部、その硬質なメタリック装甲を全て強引に削り取る勢いで、回転──回転。
回転しつづける。モンスターが重低音の鳴き声を発しても止まらない、やがて周囲の風をも捻り、並々ならぬ回転の渦を生み起こす。
「【黒蛇鞭】!」
❺カロリーの高いサンチュ×タガヤの合体技の後は、シンプルな回転後ろ蹴りでお茶をにごした。
巻き起こる渦の中央に引き込まれた銀色のジャガーの背を、真っ直ぐに黒足の靴底は貫いた。
終わらない止まらない、銀色は蹴りに蹴られ削れ続けた。そう、このコンボには終わりはあっても終わらせることはできない。弱き鈍き硬いだけのその身では──
仇となった己の硬さを恨んだことであろう。だが、すべてはもう遅い。回転する風に乗り運ばれていく、緋色に煮える地獄へのフルコースを真っ直ぐに────
「物足りなかったんだ、ありがとよ──【バーンファイア】!!!」
ひび割れたボディーへと突き刺さるクリティカル陽術【バーンファイア】。本日二度目のその鋭さを増した刺突は、内部から緋色に爆ぜるイチゲキ。
鉄の目にも涙──フルコースを満喫し満腹になった【ジャカジャカメタルジャガー】は、木っ端微塵の銀色に砕け散った。
(やはり決められたルートなどではない。この目だけじゃない、私の選んだ直感に間違いはない。ふっふ、いいじゃないかダンジョン、いいじゃないかブク高の生徒たちよっ!!!)
「はっはっはーーーーーー!!! でかしたぞぉーー、ブク高のせいおっ??? たっ、卵だーーーー!!! 回収だ回収うううううう冷蔵庫、緒方ソク回収ううううううふっふーーーー!!! ふぅーちゃん魔獣軍団にイケてる大型猫タイプがちょーどほしいところだったのだーーーー!!! しっかり育てて、ビルドして、鉄の毛質を撫でて体験してやるぅううにゃにゃーー!!!」
「うっさ……はーぬけ、アレどうにかして」
「いや、無茶だろ……アレ、校長っていういきもの」
攻略踏破、みどりのダンジョン70階。
素速い二体の階層ボスを見事仕留めたブク高パーティーは、大声ではしゃぐ校長の指示に従いレアドロップアイテムと魔獣の卵を、冷蔵庫内へと厳選──回収していった。
浦木幸 ○○○○○○○○
緒方結美 ○不不研○研研○
冷蔵庫 ○不不不○○○○
榎田椎名 ○熱熱熱熱熱○○
サンチュ 魔バ○○バ魔蹴○
木浪智火瑠 ○魔魔魔○魔魔○
水野サーガ 不○○○不○○不
小角灯 不○不○不○○不
登別海 不不○○不不○不
紫紫刀 ○○○○バ○蹴○
○ 参加
不 不黒高校で待機
熱 熱がある・だるけがある
研 研究
魔 魔法異能訓練SP
バ バトラーバトラー
蹴 蹴りの訓練
⬜︎
午前10時より、ブク高の生徒たちが日々ローテーションで挑むはダンジョン。ご入場は東門の先、みどりの渦巻くゲートから。今日のパーティーは7人と1台。異能、魔法、武器に異常なし、コンディションは上々。
様々な情報を貼り付けられた白い冷蔵庫の扉が今、勢いよく開かれた────。
魔力冷気を帯びた数多の手裏剣が蝙蝠猿たちの羽を穿ち、遠距離から不意を打ち撃墜。
より鬱蒼としたみどりの大部屋での戦いは、既に交戦が始まって1分以上が経過。新種の獣型モンスターたちを相手に、ブク高の生徒たちは各々の役割に躍動する。
黒猫の剣はみどりの草地に突き刺され、時間をかけながら光属性の魔力を練り上げた。形を成した光の輪が、その突き刺した剣を中心に縦に焼き重ねられた。
サンチュと緒方は協力し、ひとつ、ふたつ、それを手に取り、成形した白いドーナツに回転をつけ投げていく。
空から滑空してくる蝙蝠猿の編隊へと、投げたドーナツを起爆。光を嫌う退化した目の持ち主に大ダメージ、眩い爆光を浴びせ編隊を蹴散らした。
今度は魔力に反応する厄介な習性を持つヤンチャモグラニンジャ、それを逆手に取り。
勝手に地に散らばる輪をくぐっては祭りの輪投げにもならない。地下を潜り、顔を出し、輪っかを鼻先に括り付けられたヤンチャモグラニンジャは、爆砕──蹴散らられた。
(着実に魔法練度が上がっている。悪魔アンデッド特効のただの光り照らす手から、練り上げられた質のある魔法技へと昇華したな。────少し離れておこうか、ふっふ、ふぅーちゃんジョーク)
後ろに控えるお偉い方からの評価は上々。サンチュと緒方は激しい逆光を浴びながらハイタッチした。
蝙蝠やモグラを滅してもまだまだ冒険者に襲いかかる珍獣たちのパレードは終わらない。
遠く佇むオレンジ髪が甘い果実にでも見えたのか、重装のサイ兵士は立つ二足から走り構える四足になり、本能を呼び覚ましたような姿勢で走り出した。
そんな大袈裟なアクションで迫る獣に、冒険者も気付かないわけはない。避けるか、受けるか、遠距離攻撃か、彼女が杖を向け選択したのは────敵の走行間に練り上げた魔力でつくる、魔法【ストーンウォール】。
石の壁はサイの突進を受け止めた。しかし正面衝突したサイの角は溜め込んだ炎の魔力で唸り、荒ぶり燃える角となった。威力を増した角が、厚手の石壁を幾秒とも経たずに突き破った。
だが、粉々にくだけた石色、礫の散る向こう側には瑞々しいあのオレンジの姿はなかった。そして壁を砕き見えた先、地からせりあがり出てきたのは第二の石の壁。
自慢の角で猛進し粉砕していった先にあった思わぬ光景に驚き戸惑い、勢いを失ったサイ兵士へと──
「【ストーンウォール】──今朝のホットケーキは2枚って、こ・と!!」
どさくさに紛れ突進するサイの真横に位置取った木浪は、杖を水平にスイングした。魔法で生んだ石壁を異能で指揮するように引き寄せる。勢いをつけ正面衝突した石壁は、赤熱するその真正面の角をへし折り、二重に仕掛けられていた罠にハマったサイ兵をぶっ飛ばした。
(サンチュに比べて魔法力は高くないが、思考力と空間把握能力どちらも平均以上ある。【ストーンウォール】の同時重ねをできない替わりに導きだした答案が、前の壁の強度を下げ目眩しに、そして時間差で練り上げた本命の壁。余裕たっぷりの〝ズラし〟とはな。ふっふ、異能の引き寄せの使い方も注文通りだ。真っ直ぐ釣り上げるだけではなく徐々に引き出しが増えてきた。まぁ、つまりは、魔法教師を兼任するふぅーちゃん先生のビルドとおセンスに、間違いはないということだッ)
サンチュだけではなく木浪も成長している。校長は爽快に砕ける礫の中で、歯を見せるオレンジ髪の姿を見ながら頷いた。
屈強なサイ兵士を木浪が一体討ち取れど、しかし、敵は一体だけではない。サイ兵士はクイックネスの高くないモンスターだが油断は大敵。
頭のしいたけベレー帽を膨らませ、しいたけの盾へと大きく変化。そのユニーク盾の効果でストックした【茸アイテム】を【きのこ胞子】に変換し周囲に散布。風属性のマナも同時に散布し、ばら撒いた胞子をその場にとどめる。
四足で突進してきたサイの角が刺さる前に、カウンターの下準備を終えた榎田椎名は大きく跳躍し、一直線の突進をタイミングよく避けた。
使ったアイテムは【痺れ茸】。飛び上がりと同時に高まる魔力に反応した胞子は、周囲にいたサイ兵士を痺れさせ拘束状態にすることに成功。
そして背から勢いよく抜き取った風の大斧は、一気に降下しながら、サイ兵士の鎧とその厚いグレーの皮膚ごと──斬。
【笠割】
榎田椎名の得意とするリスクありの動きは、あの手この茸を絡めて、出し抜いたモンスターへと見事クリーンヒットした。
(ダンジョンのオールラウンダーと言ったところか。きのこにぞっこんな点以外の減点はない。堅実さと豪快さを合わせもつ上級生らしい立ち回りだ。まぁそんな彼女の愛らしいデメリットも長期的にはメリットへ転じていると言えるがな、ふっふ)
舞い降りたホワイトボブの姿には、そのベレー帽がよく似合う。ひらひらと舞った帽子を掴み、おもむろに被り直す。3-C榎田椎名、彼女もまた冒険者。お気に入りの帽子と共に成長し、このダンジョンを生き抜いていく。
ブク高パーティーの各員各生徒たちは、次々と異能・魔法・武力を大いに発揮しサイを、蝙蝠を、ヤンチャなモグラのモンスターの群れを跳ね返していった。
頼れる女子生徒がモンスターの群れを殲滅している間にも、この男は────2匹の豹型と剣と牙爪を研ぎ合わせ、激しく戯れあっていた。
⬜︎スマートタコイカ学習帳アプリ
【ジャカジャカジャングルジャガー】:
体毛は緑と黒の斑点模様。鬱蒼としたみどり豊かなステージでは迷彩効果もあり、より一層脅威度が増すと言える。
猫科由来の足と体のバネがありスピードはかなり速い。
素速い風属性の爪牙には注意。
回復効果のある地魔法を持っている、厄介。
【ジャカジャカメタルジャガー】:
ジャカジャカジャガーが銀色メタリックになったモンスター。
硬度な肉質をもつわりにスピードも元の種よりそれほど落ちていない。
連打を重ねないとそのメタリックな特殊装甲の硬度は下がらないため、イチゲキで倒すのは難しい。
メタル混じりは通常のゴーレム種よりも数段硬いため、常人ではその装甲を貫くクリティカルヒットを出すのは至極困難だろう。
爪牙は威力も鋭く毒があるため注意。
硬さに慢心してか避けへの意識は少し低い。
⬜︎
木から木、ステージ壁から壁、縦横無尽に飛び跳ねあそぶ銀と緑のJJジャガーは、からかいがいのある獲物へと息を合わせ──飛び掛かった。
斜め上から襲い、スピードに乗った銀と緑の爪が左右から同時攻撃を仕掛けた。
二匹の獣の息を合わせて放った獲物を狩る連携。そんなほぼ同時に迫り来た銀と緑の殺気が、喉元に到達する前に、ピネスの身体は勝手に動いた。
一匹では完成しないその超速の連携攻撃には、自ら前へと突っ込み一対一での対応を試す。
鉄砲を打ち込むように腕を目一杯伸ばし、それでは飽き足らずもはや体ごと突撃し向かう。素速く、刺突を繰り出した。クリティカル陽術【バーンファイア】は、銀色の豹の鼻先へと鮮やかに発動した。
しかし、相手はジャガー。今隙を晒したそのツギハギ色の人間の背を、もう一匹の緑の豹が高いクイックネスで地を跳ね蹴り見逃さない。
咆哮と共に風を切り唸る……。ツギハギブレザーの背に、風のエンチャントをためた剥き出しの獣の爪牙が、飛びかかるように襲う。
「【サクイチゲキ】!」
そこに振り返ると、きっと決めていた。そうでないと説明がつかないその迷いなき剣は、魔力をチャージされ最速で繰り出された。無理な体勢から一瞬で背を翻り放った青い雷撃のエネルギー斬は、元気に戯れてきた【JJJジャガー】を真っ二つに斬り裂いた。
前方に放ったバーンファイア。その爆発により引き起こされた特異な質の魔力と受ける反動を利用し、次に放った二の太刀はあまりにも速かった。黒騎士戦でも見せたいわばクリティカル攻撃の掛け算を、ピネスは自力で思い出しやってみせたようだ。
「やっぱ魚の神様がいないと威力はなんちゃってか──いてっ!?」
見事にボス級を一匹粉砕。しかしメタル混じりの方にはどうやら、ピネスの引き起こした小クリティカルの攻撃ではまだまだ致命傷には至らず。
未だつづく──もらった緋色の爆発の振動を、身についた水を跳ね除けるように、銀色の豹はぶるぶると震え全方向に拡散し逃がしていく。
顔と身体を高速ぶるぶる、viewtubeのショート動画に収めたいそんな可愛らしいモーションから一変────JJメタルジャガーは独特の重低音で腹から吠えた。ようやく牙と怒りを剥き出し、攻撃後にずっ転けていたピネスの元へと駆け出した。
「【判】! 【森迷弓】!! 【蛇撃弓】」
素早く三回、技を繰り出す。横から割って現れたすらりと長い黒足は、倒れた剣士へと駆けるその銀色のターゲットを掻っ攫った。
❶頭より高く振り上げたシンプルな右脚の【判】は敵を打ち上げる。❷高くなった右脚を地に戻す勢いで左側へ回転、勢いを得たその左の脚で真っ直ぐに飛び上がり銀色の腹を目掛け【森迷弓】は射抜いた。❸すぐさま天技へ移行……以前はつながらなかった動作も流れるようにスムーズに【蛇撃弓】で銀に光る硬い猫頭を踏み──再び地へと蹴り戻した。
『タガヤせんぱーーーい!!!』
タガヤはその明るい女子声に反応した。既にサンチュからいい魔力コントロールで投げられた光る輪を、右足の支柱に1……2……3、すらりと伸びたスタイリッシュなタキシード足に絡め取り回収。
「hit数で勝負ですっ──【シャイニークルーラー】!!!」
❹再びドレスシューズを向けて宙から地へと向かう。受け取った三つのドーナツ輪が生地のように捻り合わされた。成形された新たな一つの魔法の輪は──地に帰されうつ伏せにへばる、その銀色獣へと狙い叩きつけられた。
新たに魔力を練り直しあしらったクルーラータイプのドーナツ装備足は、始動し高速回転を始める。ヒットした獣の背部、その硬質なメタリック装甲を全て強引に削り取る勢いで、回転──回転。
回転しつづける。モンスターが重低音の鳴き声を発しても止まらない、やがて周囲の風をも捻り、並々ならぬ回転の渦を生み起こす。
「【黒蛇鞭】!」
❺カロリーの高いサンチュ×タガヤの合体技の後は、シンプルな回転後ろ蹴りでお茶をにごした。
巻き起こる渦の中央に引き込まれた銀色のジャガーの背を、真っ直ぐに黒足の靴底は貫いた。
終わらない止まらない、銀色は蹴りに蹴られ削れ続けた。そう、このコンボには終わりはあっても終わらせることはできない。弱き鈍き硬いだけのその身では──
仇となった己の硬さを恨んだことであろう。だが、すべてはもう遅い。回転する風に乗り運ばれていく、緋色に煮える地獄へのフルコースを真っ直ぐに────
「物足りなかったんだ、ありがとよ──【バーンファイア】!!!」
ひび割れたボディーへと突き刺さるクリティカル陽術【バーンファイア】。本日二度目のその鋭さを増した刺突は、内部から緋色に爆ぜるイチゲキ。
鉄の目にも涙──フルコースを満喫し満腹になった【ジャカジャカメタルジャガー】は、木っ端微塵の銀色に砕け散った。
(やはり決められたルートなどではない。この目だけじゃない、私の選んだ直感に間違いはない。ふっふ、いいじゃないかダンジョン、いいじゃないかブク高の生徒たちよっ!!!)
「はっはっはーーーーーー!!! でかしたぞぉーー、ブク高のせいおっ??? たっ、卵だーーーー!!! 回収だ回収うううううう冷蔵庫、緒方ソク回収ううううううふっふーーーー!!! ふぅーちゃん魔獣軍団にイケてる大型猫タイプがちょーどほしいところだったのだーーーー!!! しっかり育てて、ビルドして、鉄の毛質を撫でて体験してやるぅううにゃにゃーー!!!」
「うっさ……はーぬけ、アレどうにかして」
「いや、無茶だろ……アレ、校長っていういきもの」
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