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25 最強用務員vs
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その後、魔力と体力、腹ん中のカロリーを使い過ぎたピネスは最後には充電が切れたようにふらふらと気絶した。
不思議なきのこの魅了にかかっていた女子生徒たちは、全員、校長のあやつる影の軍団に安全地帯へとひそかに回収され無事を得た。
敵モンスターの殲滅された拠点マッシュルームルーム、その焼け焦げた部屋の中にあった【緑の本】を校長は回収し、冒険者たちは《みどりのダンジョン》から《不黒高校》へと帰還を果たした。
「あらら、手柄よこどりして眠っちゃって? ふぅん、そんなにバチバチがシナシナになるまで全力出せちゃうんだー。──あ、まだあたしは稼働できます、よっ」
「いや、ありがたいがその必要はなくなった。区切りの悪い階層でおもわず出くわした強固な敵軍だったが……私の目で読み調べたところどうやら【コレ】で戻れるようだ。──なるほど。我々は今日、思いがけない鍵を一つ手に入れたようだな。ふっふ」
▼▼▼
▽▽▽
不黒高等学校5階SP校長室にて……
満足気に椅子にかける校長の元へと一番最初に呼ばれたのは──
礼儀正しく帽子をとった茶髪、水色作業着。此度みどりのダンジョン78階で、ブク高パーティーの救援に一人駆けつけた彼女であった。
「ふっふ、ご苦労だ池原。ちゃんと保険の新システムを試すために待機していてくれたようだな? こんな事もあろうかと、キミをここに雇っていてよかったというものだ」
「あいっ。(くそこわいシステムをお持ちで)ボーナス期待してます」
背筋よく立つ彼女は右手で敬礼などをする。この学校の校長という存在を、えらく彼女なりにリスペクトしているようだ。
「ふっふっふ、それは困ったな? わかった善処しておこう。──ところで、どうだったかな?」
ずいと、体を前のめりにし机上に両肘を置く。そして手を組み合わせるあのお気に入りの三角のポーズを披露。校長は合わせた自分の手を揉みながら意味深に笑い、用務員の池原へとそんな主語のぬけた質問をした。
「はい、まぁまぁモンスターは強かったですよ。あのみどりのキノコ星人とか、見た目に反して知恵が回るから結構やりにくい部類かと。仮にあれが通常種並みに出てきたら対策が急務ってやつですわな、さすがに三体同時だとちょっときついかなぁ?」
「あーあーそれも大事だが、今はそういう細かい話のことじゃない。確かに恐ろしく厄介な強敵ではあったがな、しかしこちら側のレベルが足りていない訳でもなかった。ふっふ、それより──キミの目から見て気になる生徒は誰かいたかな?」
「あー、はいはいそっちか。たしかキックやってる黒服の小鬼ちゃんとか才能ありますね、とくに足運びとか目のつけどころが最高、オシャレ、センスある、さすが戦闘のプロの技、うん。それと、んー、他にも地属性の弾持ちの子かな。やっぱダンジョン、魔法使い相手にもばちばち練習したいからそう言う意味ではけっこう目ェ付けてますよっ」
「そうかそうか、うちの女子生徒は皆なにかしら優秀だからな。私もその2人には将来の大きな戦力として期待しているところだ──で?」
「──で? とくに以上です、よっ」
校長は机上に置いていた肘をガタッと崩した。ニヤニヤと期待していたその顔もコミカルに散る。姿勢を机に崩した校長は一旦、わざとらしい咳払いをし仕切り直した。
「待て待て、ごほんえほんっ! ────浦木幸、最後にあの逃げるキノコの珍獣を討った彼の名だ。キミの目にはどう映ったかな? ふっふ、きかせたまえ」
またニヤニヤと、同じように両肘を置き直しあのポーズを形づくる。それは校長にとってよほど外せない、池原に言及してほしかった本題のようだ。校長のするあからさまな表情がそう物語っていた。
「あー、はいはいはいっ……校長様の言っていたクリティカルシンデレラボーイくん」
「そうだ! 同じよーーなっ、キミにも何かビビッとくるものがあったんじゃないか? んー?? どうだ、どうなんだ!」
「──いや、ぜんぜん」
「そうかそうか……なに?」
「ほわぁー……あたしはあーいうのなしかな。なんか素人くさいの思い出したらネムたくなるわー」
まさかの態度に、欠伸までしだした池原の態度に。
自分のことのように嬉しそうに問うていた校長のさの形相は眉間にシワを寄せ、変貌した。
「なんだと!? おいっ! そんなはずはない! ピネスくんは私の自由に育てあげた最高天然傑作だぞ! そしてキミにこれから鍛えてもらうことで! よりっ」
悠然と肘をついている校長の姿はもうない。まるで癇癪を起こした子供のように眼前の机を両手で叩きつけながら、校長は必死で彼の素晴らしさを誇り、目の前の分からず屋に伝えるも──
「あー、ダメ。てんでダメ。お話になりません。あー、アレはダメだな。ダメだ、よっ! そんな慈善活動じゃないんだから。顔もぬぼーって感じであたしのタイプじゃないね。三枚目とかそういうのいいから素直にイケメンよこして、ノレない。イヤ、無理。絶望。河童。きのこ。他人の孫自慢。一銭にもなりはしない。あー、だる、寝よ」
「ナッなっ、なななななななななっ……なんだとおおおおおお!!!」
思いついたありとあらゆる罵詈雑言を羅列していく。そして、茶髪をかきながら再度の欠伸で締められた──。
用務員池原は、椅子から飛ぶように立ち上がる校長の絶叫をバックに、平然とした様子で水色の帽子を被る。結局池原は言いたい放題を告げ、長話でつかれたその部屋からふらふらと退室していった。
▼
▽
「くしゅんっ!」
「どした風邪薬あんでぇ? 飴ちゃんいる? はちみつドリンクはどや? お湯沸いてんでぇー?(試飲は無料やで)」
「いやいい、(クシャミしただけでそんなにススメられるか?)あぁー、それよりこれ────なおる?」
やってきた地下のくろまねき商店。ピネスが持ち込んだのは緋色のショートソード、いつも使っていた愛武器の無惨に刃の折れた姿であった。
なおしてほしいのは、ひいてもいない風邪などではなく、そのぽっきりと折れてしまった一振りの剣。
丁重に包んでいた風呂敷から現れたそれを皮のグローブをつけて拝借した店主のちひろは、自分がその剣のかわりに折られたかのように痛そうなリアクションと顔をしている。
「あちゃこりゃぁ!? ポッキリ逝っとる! なんや今日はこいつさんの修理依頼かー、うちの誇る開発部も天才であって神様やないからな……ここまでカッチン折れてると……」
「まじか……やっぱ無理なかんじのぉー……」
「ざっと──20万DPや」
「ってとんのか! って直るのか!!」
ダメそうな悲しげな雰囲気から一転、手元のスマホの計算機で弾き出した数字を、ちんまい店主は眼上のピネスへと掲げ見せつけた。
「はぁ労力に見合うDPとんのは当たり前やろ? じぶん直るだけ感謝感動やで?」
「……そ、そうだな? じゃッ……お願いします」
「おーえらい今日は物分かりええな。せや、これはちゃんと預かって開発部に修理するよう投げとくから、ウチの開発した試作の武器とかついでに見てくか? 暇やろ、安くしとくで! こっちやついてき!」
「あぁー、っと、いや今日は……いい! あぁー、ていうのもさ。壊れたからってすぐ乗り換えたらアレ、無くなっちゃうから。えーっと……そ、〝ゲン担ぎ〟ってヤツーーー! 直ったら寝ててもすぐ教えてくれーーじゃなーっクロマネキ!!」
「おーいっっ、なんやそない急いで? ────んー験担ぎ……えらい物大事にする子やってんな? へぇー、人は見かけによらんなー。ひょっとして商人向きやな──ってなんでやねん、あんなぬぼーっとしたのん。ちひろちゃんがツッコまんと死んだようなもんやで?」
くろまねき商店店主ちひろの誘いを断り、ピネスは緋色のショートソードの修理依頼だけを取り付けた。そして、今ひらり耳元に現れた赤い学習帳とともに店内から走り消えていった。
不思議なきのこの魅了にかかっていた女子生徒たちは、全員、校長のあやつる影の軍団に安全地帯へとひそかに回収され無事を得た。
敵モンスターの殲滅された拠点マッシュルームルーム、その焼け焦げた部屋の中にあった【緑の本】を校長は回収し、冒険者たちは《みどりのダンジョン》から《不黒高校》へと帰還を果たした。
「あらら、手柄よこどりして眠っちゃって? ふぅん、そんなにバチバチがシナシナになるまで全力出せちゃうんだー。──あ、まだあたしは稼働できます、よっ」
「いや、ありがたいがその必要はなくなった。区切りの悪い階層でおもわず出くわした強固な敵軍だったが……私の目で読み調べたところどうやら【コレ】で戻れるようだ。──なるほど。我々は今日、思いがけない鍵を一つ手に入れたようだな。ふっふ」
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不黒高等学校5階SP校長室にて……
満足気に椅子にかける校長の元へと一番最初に呼ばれたのは──
礼儀正しく帽子をとった茶髪、水色作業着。此度みどりのダンジョン78階で、ブク高パーティーの救援に一人駆けつけた彼女であった。
「ふっふ、ご苦労だ池原。ちゃんと保険の新システムを試すために待機していてくれたようだな? こんな事もあろうかと、キミをここに雇っていてよかったというものだ」
「あいっ。(くそこわいシステムをお持ちで)ボーナス期待してます」
背筋よく立つ彼女は右手で敬礼などをする。この学校の校長という存在を、えらく彼女なりにリスペクトしているようだ。
「ふっふっふ、それは困ったな? わかった善処しておこう。──ところで、どうだったかな?」
ずいと、体を前のめりにし机上に両肘を置く。そして手を組み合わせるあのお気に入りの三角のポーズを披露。校長は合わせた自分の手を揉みながら意味深に笑い、用務員の池原へとそんな主語のぬけた質問をした。
「はい、まぁまぁモンスターは強かったですよ。あのみどりのキノコ星人とか、見た目に反して知恵が回るから結構やりにくい部類かと。仮にあれが通常種並みに出てきたら対策が急務ってやつですわな、さすがに三体同時だとちょっときついかなぁ?」
「あーあーそれも大事だが、今はそういう細かい話のことじゃない。確かに恐ろしく厄介な強敵ではあったがな、しかしこちら側のレベルが足りていない訳でもなかった。ふっふ、それより──キミの目から見て気になる生徒は誰かいたかな?」
「あー、はいはいそっちか。たしかキックやってる黒服の小鬼ちゃんとか才能ありますね、とくに足運びとか目のつけどころが最高、オシャレ、センスある、さすが戦闘のプロの技、うん。それと、んー、他にも地属性の弾持ちの子かな。やっぱダンジョン、魔法使い相手にもばちばち練習したいからそう言う意味ではけっこう目ェ付けてますよっ」
「そうかそうか、うちの女子生徒は皆なにかしら優秀だからな。私もその2人には将来の大きな戦力として期待しているところだ──で?」
「──で? とくに以上です、よっ」
校長は机上に置いていた肘をガタッと崩した。ニヤニヤと期待していたその顔もコミカルに散る。姿勢を机に崩した校長は一旦、わざとらしい咳払いをし仕切り直した。
「待て待て、ごほんえほんっ! ────浦木幸、最後にあの逃げるキノコの珍獣を討った彼の名だ。キミの目にはどう映ったかな? ふっふ、きかせたまえ」
またニヤニヤと、同じように両肘を置き直しあのポーズを形づくる。それは校長にとってよほど外せない、池原に言及してほしかった本題のようだ。校長のするあからさまな表情がそう物語っていた。
「あー、はいはいはいっ……校長様の言っていたクリティカルシンデレラボーイくん」
「そうだ! 同じよーーなっ、キミにも何かビビッとくるものがあったんじゃないか? んー?? どうだ、どうなんだ!」
「──いや、ぜんぜん」
「そうかそうか……なに?」
「ほわぁー……あたしはあーいうのなしかな。なんか素人くさいの思い出したらネムたくなるわー」
まさかの態度に、欠伸までしだした池原の態度に。
自分のことのように嬉しそうに問うていた校長のさの形相は眉間にシワを寄せ、変貌した。
「なんだと!? おいっ! そんなはずはない! ピネスくんは私の自由に育てあげた最高天然傑作だぞ! そしてキミにこれから鍛えてもらうことで! よりっ」
悠然と肘をついている校長の姿はもうない。まるで癇癪を起こした子供のように眼前の机を両手で叩きつけながら、校長は必死で彼の素晴らしさを誇り、目の前の分からず屋に伝えるも──
「あー、ダメ。てんでダメ。お話になりません。あー、アレはダメだな。ダメだ、よっ! そんな慈善活動じゃないんだから。顔もぬぼーって感じであたしのタイプじゃないね。三枚目とかそういうのいいから素直にイケメンよこして、ノレない。イヤ、無理。絶望。河童。きのこ。他人の孫自慢。一銭にもなりはしない。あー、だる、寝よ」
「ナッなっ、なななななななななっ……なんだとおおおおおお!!!」
思いついたありとあらゆる罵詈雑言を羅列していく。そして、茶髪をかきながら再度の欠伸で締められた──。
用務員池原は、椅子から飛ぶように立ち上がる校長の絶叫をバックに、平然とした様子で水色の帽子を被る。結局池原は言いたい放題を告げ、長話でつかれたその部屋からふらふらと退室していった。
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「くしゅんっ!」
「どした風邪薬あんでぇ? 飴ちゃんいる? はちみつドリンクはどや? お湯沸いてんでぇー?(試飲は無料やで)」
「いやいい、(クシャミしただけでそんなにススメられるか?)あぁー、それよりこれ────なおる?」
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丁重に包んでいた風呂敷から現れたそれを皮のグローブをつけて拝借した店主のちひろは、自分がその剣のかわりに折られたかのように痛そうなリアクションと顔をしている。
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「まじか……やっぱ無理なかんじのぉー……」
「ざっと──20万DPや」
「ってとんのか! って直るのか!!」
ダメそうな悲しげな雰囲気から一転、手元のスマホの計算機で弾き出した数字を、ちんまい店主は眼上のピネスへと掲げ見せつけた。
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「おーいっっ、なんやそない急いで? ────んー験担ぎ……えらい物大事にする子やってんな? へぇー、人は見かけによらんなー。ひょっとして商人向きやな──ってなんでやねん、あんなぬぼーっとしたのん。ちひろちゃんがツッコまんと死んだようなもんやで?」
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