【R-18】異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re:

山下敬雄

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 校舎本館5階のSP校長室にて、呼び出されたピネスはその特別な部屋に入った瞬間に、何かイヤな空気と魔力が漂っているのを感じた。

 いつもの渋い執務机の席に座りながら、校長はいつもの両肘をついた三角のポーズをしている。しかし視線を感じない。校長はそのポーズのまま俯いて目を閉じたままだ。

 ピネスは黙りゆっくりと机の前まで歩いた。すると校長はそのときを待っていたように開眼し、その面を上げた。

「ピネスくん……これを持ってこれから1階の用務員室に向かいたまえ。中身は決して見ないように、それをヤツに渡してこい」

「よ、ようむいんしつ?」

 静かに面を上げた校長はいつものように笑ったり冗談めかしたりしない。

 ピネスは、そんな神妙な顔の校長から直接手渡された──軽いが重みのある小さな荷物を受け取った。



 ▼
 ▽



 指示通りにやってきた1階の用務員室。お邪魔した中の明かりは薄暗い。吊られていた下着の暖簾をくぐっていく。女子らしき生活感がとっ散らかる空間をイチマイ、イチマイ、どけながら、おそるおそるピネスは奥へと抜けていく。

 布団が床に敷かれたままだ。ここには誰かがいる。

 誰かが寝ている。寝息は聞こえない。

「あのー」

「はぁ? はふ」

「これなんですけど」

 ピネスはヤツへと、校長に頼まれていた〝それ〟を手渡した。

 寝ながら手を伸ばし彼女はそれを受け取る。そして薄暗い明かりのなか、受け取った封筒の中身をぶつぶつと読み出した。

「とんだあいのぼむえんど……」

 ぶつぶつと読みあげる声を途中で詰まらせたように止め、彼女はそう意味のわからないことを呟いた。やがて、取り出した封筒の中身を丁重に元の折り目のとおりに折り直し、元へと仕舞う。

 あたためられていた布団から彼女の頭の横に、忍ばせていた銀色の枝が今ゆっくりと突き出し、妖しく煌めいた。


 ▼
 ▽


 用務員室を出て肩に担いだ銀色の枝の行く末を追った。そして、最近どこかで見たことのある真っ白いトレーニングルームへとピネスは連れて行かれた。

 部屋を掃除していたゴーレムたちへと会釈をし、ピネスは体を念入りにほぐす水色作業着の姿を見つめながら、その時をただ待った。


「準備運動かんりょー。さぁて、どうする帰る?」

「え? 帰るって帰れるの?」

「当たり前じゃん? だって強制じゃないんだからこれは、言うことなんて聞かなくていいんだよ」

 部屋に来てから行われた念入りな準備運動と、それだけでどこか溢れて伝わってきた闘志そして魔力。ピネスは今まで眺めていた彼女の行動と雰囲気、それとチグハグなことを言われていると感じた。

「まじ……てっきりなにか……ヤッちゃうのかと? そんな雰囲気を感じたっつぅか……ただならぬ殺気というか」

「君がぁー、あたしと? 殺気ぃ? 子供にむけて? ははっ笑わせるじゃん。──ってことは自信あるんだぁ」

「いや自信とかそういうわけじゃ……ただなんか、こういう時、避けられないのかなぁーって、ちょっとこっちが思っちゃっただけで」

 ピネスは首をかしげながら誤魔化した。この先己の意思だけでは避けられないイベントが起こると彼のセンスは感じ取っていたが、読み違えていたようだ。しかし何事もなく終わるのであれば、浦木幸はそれでもいいのだ。

 ただ……。

 用務員の池原は、彼のグーに閉じられていたお手手をちらりと見た。

「いいよ、やろ! かかってきな」

「あぁー、え? ──まじ……すかっ」

 やはり結局、避けられない。

 池原とピネスの戦いの時は、突然に訪れた。

 ▼
 ▽

 刺股がざくりと床へ、突き刺さる。

 突き刺さるU字になった銀の顎の間に、すっぽりと首が収まりある。背からダウンしたピネスは、完全に彼女の扱う刺股一本で制圧されてしまった。

「あれぇ? あれれー? なーんかあたしと戦うとか余裕とか言ってたっけ」

「いや……人と戦うなんてやったこと!? 俺、さっきのダンジョンぐらいで……」

「ははーん、言い訳しちゃうんだ」

「いや、ほんとで」

「だからさ……本気で来いっつってんの」

 ピネスを見下ろす池原の赤い眼は、急に凄んだ。

「ありゃ、もしかして本気の出し方しらない?」

 と思えばまた砕けた余裕のある感じへと、彼女はもどった。

 さっき見せた二面の池原、果たしてどちらが本心かをピネスは知る由もない。それでも誤魔化すような苦笑いさえ今は浮かべるのは危険に感じる。ピネスはその窮屈な銀の顎の内で、天から見下す彼女と目を合わせながらゆっくりと答えた。

「えーっと……それってぇ、ダンジョンのモンスターと戦うってかんじすか?」

「ははっはははっそうねそうね……それでいい! あたし今日ヤったモンスターより弱く見える?」

「いや、ぜんぜん」

 そうピネスが首を左右に振ると、地に突き立てていた銀色の拘束は解かれた。そしてピネスが立ち上がるやいなや、離れた向こう側に突き刺さっていた剣を今引き抜いた池原の手から投げ返された。

「なら来なよ! いつも君がやってるように殺す気でね! あぁー……そーそーそっか? こっちも殺す気でいくわ。これならきっと簡単か」

「えぇ!? まっ、まじか!?」

 ピネスが返却された翠の剣を手に収めたときには、用務員の彼女から物騒なことを平然と告げられていた。しかし殺す気でやることとモンスターと戦うことはある意味ピネスの中でもイコール。本気を出すこともあながちイコールに近い位置であろうと、結論づけなければならないのかもしれない。

「──大マジ。だいたいさぁ、あたしviewtubeなんて新規開設して始めたこのところ思うんだよねぇ。この道の先輩なんだから教えて当然、知らないんだから教えられて当然、この子は伸びるからぜひとも鍛えてくれたまえーーだとか、そういう類のこと言うヤツよくいるじゃん? いんやいたよいた、最近でもマジでいたよそういう他人ひとの話きかないヤツ。でも結論から言うとね、そういうおしえろおしえろ言うヤツって懇切丁寧に教えて鍛えても結局──みんな途中で辞めたよ。なんか決まってやり切った感出しちゃうのよ。『うっす! 武の真髄すこしわかりました! 師範今までありがとうございましたー!! うっす!』ってええ!? いやいや待ってよ、武の真髄すこしわかったの!? 随分はやいな!? わたしもまだなのに!? あーそーへぇー……ま、そんなヤツが昔やってた道場にちらほらいましたよ。でね、そういう奴らもみんな、低レベルに合わせて一歩一歩やってもらえると最初は安心すんのよ。これが武のふむふむって、そりゃそうだよ上手いヤツが噛み砕いて柔らかくしてひよっこの雛に良いエサだけあげてんだからね。だれも硬い骨の部分なんて食いたくねぇーのよ、てか食わせねーのよ危ないし月謝ほしいし。なんだろうね……今風で言うと、そーそー、view数ほしいし♡。ほら最近の漫画でもさぁ、暗い山にこもって師範と熊と鍋囲んで、上からくる落石素手で砕くとか、火の中の栗拾うとかの古臭い修行シーン……そんなの誰も望んでねぇーでしょ? ばっさりカットだよカット、いらないよそんなのっっ動画見れば分かるしもっと武道も効率求めてこーよ!」

「ぅー……ん?」

 それはそれは長い長い語りであった。刺股を後頭部をもたれる手すり棒にしながら、作業着の女は一人でずっとと語っていた。そんなすらすらと声に出しするすると耳を通り抜けた彼女の語りに、緊張感を削がれてしまったピネスは、突っ立ちながらまだ続くその年上の念仏を聞くしかなく──。

「でもさぁそういう苦労、例えば上まで身ひとつ全国各地自力で探してようやく辿り着くまでが結局楽しいんじゃん? わかるぅ……? そういう自分の中のドアをひとつひとつ確認して、どっちかなぁーって開いていく、そんな自分だけの楽しさ。あぁーこっちのドアはあたしより上手いヤツがいる……やめとこっ、やったことないけどできそうなこっちにしとこっ──とか。戦闘術デザインアドバイザーなんて名乗ってるけど、ほんとはそうなのよ。ま、今はその辺の動画みりゃさっき言ったそんな見つけにくいドアも、見た気やった気になって引き返せば効率いいのかもしれないねぇ」

「わかる……かも?」

 まだ続きのあった語りを聞き、ピネスは考えた末に眉間に皺をよせた表情で、もっともらしい相槌を吐いた。

「わかるかもかぁー……わかっちゃダメに決まってんじゃん。あ、そーそーだからこう無駄にしんみり自分語りの遠回りをして長くなったけど。あたしはクリティカルシンデレラボーイ、──君にこれだけ言いたいの」

「クリティカル……なっなんて?」

「ムカつくんだよねぇ……自分より若くてわかった気でいる馬鹿なヤツううううううう!!!」

「え、そんな理不尽!? ──きた!! 来るのかよっ!! 今っ!!!」

 不意に襲い噛みついた銀の刺股と、前に向かい吹いた殺気に自動反応した翠のショートソードが、かち合った。

「へぇーわかるんだぁ!」

「!! (結局なに言ってたかさっぱりわかんねぇ……あ、逆にそれを見抜かれて!?)」

 理不尽な銀色の仕掛けに対してしっかりと正解の太刀筋で反応。一太刀交えただけで分かる、戦いの肌触りが違うことに。

 本気にちかい池原とピネスの第2ラウンドの戦いは始まった。
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