【R-18】異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re:

山下敬雄

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28 クリティカルを求めて

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「で、どうだったかな? わざと見え透いた挑発に乗ってあげたがぁ? 何か満足のいくおおきな成果は得られたかな池原、ふっふ」

「あれわざとかなぁ……。ま、そこそこあったんじゃないのー」

 再び校長室へとご機嫌を窺いにいった用務員の池原は、すっかり牙を抜かれたように大人しく、そう素直に校長の言うことを肯定した。無駄な反論をする気はないようだ。

「ほぉ……ほぉほぉほぉっ!! じゃあウチのピネスくんの方は実力的にっっナンの問題はないということだな! キミの目から見て、モッ!!!」

「はいはいそれはもう、その言葉の通りじゃなーい。まぁ問題ないことが武闘家くずれのあたしにとっては大問題なんですがねぇ。あ、これお返しします、よっ」

 池原は『はいはい』と小刻みに頷きながら、懐にしまっていた茶色の封筒を机の上へとそっと置き、お返しした。

「ん? なんだこれは?」

 それを手に取った校長は芝居がかった反応をみせるが、これには池原も苦笑い。

「いやいやさすがに無理がありますよぉーっソレ……言っときますけど? そんなのイチ用務員に渡したところでなんの効力もないですから、ねっ!」

「あー、はーはー。はて? 思い出したどうやら彼に渡す書類のほうを間違っていたようだ、こっちだこっちこっちだったーー!! ──【ふぅーちゃんモテヤバ恋愛極意Ⅳ】!! はっはっはーーうっかりぃ、うっかりふぅーちゃんうっかりぃ」

 テンションを1人で声高らかに高めた校長は、便利な咳払いで緩急をつけ、また仕切り直した。

「でだ、かわいい生徒たちの方の武器の扱いやらなにやらは継続して頼めるということかな? 今度は表で」

「もちろんあたしは戦闘術デザインアドバイザー。ゆっくり丁寧にわかりやすく噛み砕いて時代に即したアドバイスしまーす、よっ!」

「ふっふ、それは助かる。ん──どこへゆく?」

「ちょっとダンジョン~。校長様、なんかてきとうにあけといてー」

 そう告げ、池原は校長室をそそくさとあとにした。


「ふっ、池原叉鬼27歳。訳あって武闘家くずれの彼女のことは、うちの用務員あらためスーパー用務員とでもしておくか。我らブク高はこれから彼女の表立った助力とアドバイスと武力によりさらに一歩……いや段飛ばしッ、上のステージにいくことだろう。純粋武力では劣るが私も校長と魔法教師、この二足の草鞋を存分に活かして、生徒たち池原そしてピネスくんにも負けぬようにがんばらねばなーーっ!!!」

 気合いを入れるかわりに、意味を成さない辞表は破かれた。

 辞める気などさらさらない……こんなに向いていて面白い事を。

 祝福の紙吹雪は白く舞う──

 塞ぐ眼帯から開放した灰色の瞳がぎらりと光り覗く。

 またひとつ、大きなピースが揃い噛み合わさった。不黒文の思い描くダンジョン攻略への野望と道筋は、先へ先へと鮮明に光り広がり続けるのであった。




▼▼
▽▽




 今度のダンジョンは快晴のブルー、山道のような一風変わった景色を歩む。そこで出くわしたアルマジロの群れは、天から射す陽気にぽかぽかと照らされながら今可愛らしく──丸々。

 スピードを上げ迫り転がる危険な音。坂を丸まり下る凶器に対し、男は構えた。その一直線に向かって来た殺気のタイミングを見計らい──

 地を転がる岩は、雷撃の剣のクリティカルで粉々に処された。刃に抉られた岩は内側から砕かれ数多の石粒と化す。剣士の彼を襲ったモンスターは見事に倒された。

 しかしなおも手に汗を握る状況は変わらない。ひとつのミスが命取り、構える翠の剣はこちらの気も知らずにじゃれるように向かってきた3つの岩玉に集中を高めた。


⬜︎タコイカスマート学習帳アプリ
《ちゃいろのダンジョン16階》

岩マジロ×8:
岩属性のアルマジロ型モンスター。
丸まった形態から転がり見つけた対象に突進行動をしかけてくることが多い。硬くて厄介なモンスターである。
仲間でごろごろ共に転がりレースをしたり、やんちゃな性格である。
⬜︎


「いきなりなんでダンジョン!? なんで犬が丸まって岩になってんの!? そもそもなんでこうなってんだぁ! 俺のFikaの一服とおにぎりいったいどこ行ったぁ? 何から何までがわかんねぇ! それにさっきぃ! 会いま! ッしたよねぇ! 戦いの時間って一週間後じゃないんですかぁ! なんかなかなか会えないツワモノ感出してましたよねっ!」

「いやいや、アレからうーーん、考えてみたんだけど。山で若い生意気男と2人っきり、古臭い修行シーンの一つや二つあっても、あたし的にも悪くないとおもってねっ! グギッ痛っ……!? ……ほらほらっこんな丸っちょろいのに手こずってるようじゃ、せっかくこしらえた修行ステージに指輪の奴隷システムで君を呼んだ価値がないじゃーん。あ、言っとくけど絶対避けずに連続クリティカルでその転がる岩ころをぶっ壊すことね。じゃないとあたし、ペシャンコだから」

「プレッシャーの掛け方が笑えねぇ!! これが修行ってまじかよ!! うおおおおおおッて奴隷!?? ……──うおおおおおおッ」

 おにぎりを頬張りすこし遅めの夕食をいただいていたブク高の茶室から、彼の意を無視した強制転送──。

 こんばんはもなしに始まった新たなダンジョンの新たなモンスターとの戦い。そして床で大の字に寝転ぶスーパー用務員の池原叉鬼に課せられた突然の修行クエスト。

 転がり襲う謎の生態を持つそのアルマジロの群れを、連続クリティカルでぶっ壊せと彼女は開幕早々の無茶を言う。

 状況を飲み込めないピネスは悪態をつきながらも、脳のスイッチをダンジョン仕様へと切り替える。愚痴っていてもモンスターは待ってくれない。だが愚痴らずにもいられないようだ。

「あーがんばれーふんばれークリティカルシンデレラボーイ、校長様も地獄のどこかでみてるぞー」

「校長っ!? じごくっ!? んなことよりクリティカル!! ──あの、余計なこと……まじやめてほしいんですけどっ!」

 池原は己の腰をトントンと叩きいたわりながら、途中強制参戦した彼が食べかけていたおにぎりのつづきを頬張った。若いツギハギブレザーのがんばる背を、目を凝らし粗を探すように見届ける。

 転がる岩を砕くムラのあるクリティカル音を耳にし、池原はずけずけ次々と野次と応援を送る。さながら彼の師範でもあるかのように、基礎的なアドバイスも叱りながら彼に教えた。

 池原叉鬼と浦木幸、仲がいいのか悪いのかも初めましてで未知数の2人。新たに開かれた《ちゃいろのダンジョン》での2人の修行は、なんとなく唐突に始まってしまった。




「みっつめ、たべていい?」

「ダメに決まってんだろ!! よしッ、これでみっつ!!!」
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