28 / 110
27
しおりを挟む
(見たことねぇありえねぇことどんどん積極的にやってくる、なんだこの人。そうだあの黒騎士……とやった時みたいな、いや、何故だかその時よりこの人は待ってくれない、厳しく殺しにきてる気がする──本気だ、本気なのか? それにこれって……さっきから俺の魔力とか乱されてね? 運すら? クリティカルが全然でねぇ!)
「うおぁ!?」
「足元ぼーっとしてんのー? 君ってきっと考えても馬鹿なんだからやめた方がいいよー」
「クソっ、!!」
銀の刺股と繋がる不思議な魔力の糸でつくった輪に、足を取られて転けたピネスは、翠の刃をあえて断ち切らずその糸へ当て電撃を伝わせた。縄に捕らえた獲物からの機転の利いた激しい反撃を──
「なるほど! 考えれるじゃん、──効かないけど!」
糸ごしに高速で伝った青雷のマジックをもらい痺れた全身は、銀の棒をくるくる頭上で回しながら元通り。伝い帯電した魔力を外へ逃したのか、ニヤリと笑うソイツがいる。
「どなってんだこの人ぉ!!」
ボロボロになった魔力の糸を剣で切り、ピネスは意表をついた攻撃と同時に捕らえられていた状況を脱出。
剣を止めるな、かかって来いと言わんばかりに回りつづける銀の旋風。効いていないアピールをし空いた片手で挑発した作業着の女に、彼は冷や汗を拭いならばと挑んだ。
「どしたどしたぁー! 殺気読んでばかりなのが特技なのぉー! 与えられて逃げるだけそれって特技っていえるかなぁ? お得意のクリティカルってのわたしに見せてみなよ! ま、無理だけどねーー!」
銀色の刺股の連撃、激しい攻めを見せながら今度は口で挑発をする。
ピネスは鋭く変幻自在に唸る彼女の銀色の刺股捌きをいなすのが精一杯。次々と湧く殺気へとぶつける翠の刃の感触は、やはりクリティカルどころではない。
逆に、〝クリティカル〟。スイングする重い銀色の一撃が、ピネスを後ろへとおおきく、蓄えた魔力を爆発させるように弾き飛ばした。
(やっぱりこの人クリティカル打ってきてる。じゃぁやっぱり直後のここしかないだろぉ!)
疑いの余地はないピネスはもう確信する。この人も自分と同じことをし、自分の練った魔力を奪うように邪魔をしている。そう──。
「なんとなくサァっ! 【ピネス……サンダー】!!!」
「ありゃまた弾っ──!?」
遠くから足を踏ん張り放った雷撃のマジック。遠距離からの攻撃に対し旋回する銀色のプロペラシールドがソレを阻む。
だが、スベテの魔力を圧縮して使ったかのような今まで見せたものより数段鋭い魔法威力は、刺股を回す盾だけで受け切れるものではない。
痺れはガードを貫き池原の全身を伝った。垂れ流し作った電撃の綱で相手を縛りつけ繋ぐ。若い若い強引さがその用務員の女を離さまいと迸る雷刃で襲い続ける。
そして────
「わかったかもー!!!」
「わかったなんて言わせないっ!!!」
強情にも教えてくれないならば、強引に繋がり相手のことを理解すればいい。
布石となる雷を切先から打ち尽くし、閃いたピネスは仕掛けた。雷音唸らせ突進する翠の刃を、魔力を込めた銀色の刺股は待っていたとばかりに真正面から受け止めた。
鍔迫り合わせて、ぶつかり合ったチカラ勝負。
しかし今、致命の期待感が湧き上がるのはどこからか。その痺れる冷たい期待感が、いつの日からか錆びついた池原のカラダの中を伝っている。
それは警鐘であり、脅威。背筋が凍るどころではない、凍ったまま吹っ飛んでいきそうな〝ヤバいヤツ〟。特殊な修行を重ねた戦闘のプロ、そう自負する彼女の器には、自分ではない誰かのモノが勝手に迸り満たされていくのが分かる。
「──やばっ!? これかァァ、アレをヤったの!?」
剣を振り切り放たれた魔滾り光る青緑の三日月は、噛みついていた銀色の顎を切り裂いた。
相手と己を強引に繋げて絞り出す本気以上の本気、そしてただならぬその魔力を受け止める本気。どちらもなければその技は成されない。
「あっ、やべ……あぁー……」
それがクリティカル陽術。池原の迷い目指した武の真髄。
▼
▽
「はぁははぁ……なんだこの陽気のかたまり、若っかーーーー……」
白いトレーニングルームの壁には、痛々しく刻まれた落雷が通ったような跡がある。
床には転がる真っ二つに折れた銀色の棒切れと、大の字になり息を吐き天を見上げる茶髪の水色作業着さん。ポニーテールに結っていた髪がまだ熱い床に広がり解けた。胴体はちゃんと繋がっている。
「……大丈夫すか?」
「はは、お手を拝借」
心配したピネスはまだ生きていた彼女の姿に安堵し、伸ばし求めてきた彼女の手に助けの手を貸した。
「よかっ…うがっ!? いててててて!??」
「はいあたしの勝ちー!」
「痛いいいいいいい────────!!!」
心優しき少年の貸したその手は、隙あり──。何故か関節技をかけられ、天地は逆転。
ピネスを押さえ付けて乗り掛かり、堂々たるマウントポジションへ。笑い飛ばし勝ち誇る負けず嫌いの用務員の女がそこにいた。
▼
▽
緑の糸で両手はあやとり遊びをし、考え耽る──。さっきやった咄嗟の防御行動その感覚と手順をもう一度確認し直し、池原はひとり頷いた。
「いいよ、毎週ここで〝一、二回〟は相手してあげる。それ以外はムリ。暇じゃないし金取るから、ってことでね。あと校長様怒ってた? なんとかそっちから上手いこと言っといて、じゃね!」
「え、あ、はい??」
片手でごめんのジェスチャー、なんだかチャーミングな仕草で彼女はウインクまでしている。
浦木幸は毎週、用務員の池原叉鬼と本気の対戦をできるようになった。
勝利か敗北かわからない。だが、手に汗にぎる充実感を手にした。ピネスは一人残されたトレーニングルームで、もう一度──熱宿る己の剣を構えてみた。
「うおぁ!?」
「足元ぼーっとしてんのー? 君ってきっと考えても馬鹿なんだからやめた方がいいよー」
「クソっ、!!」
銀の刺股と繋がる不思議な魔力の糸でつくった輪に、足を取られて転けたピネスは、翠の刃をあえて断ち切らずその糸へ当て電撃を伝わせた。縄に捕らえた獲物からの機転の利いた激しい反撃を──
「なるほど! 考えれるじゃん、──効かないけど!」
糸ごしに高速で伝った青雷のマジックをもらい痺れた全身は、銀の棒をくるくる頭上で回しながら元通り。伝い帯電した魔力を外へ逃したのか、ニヤリと笑うソイツがいる。
「どなってんだこの人ぉ!!」
ボロボロになった魔力の糸を剣で切り、ピネスは意表をついた攻撃と同時に捕らえられていた状況を脱出。
剣を止めるな、かかって来いと言わんばかりに回りつづける銀の旋風。効いていないアピールをし空いた片手で挑発した作業着の女に、彼は冷や汗を拭いならばと挑んだ。
「どしたどしたぁー! 殺気読んでばかりなのが特技なのぉー! 与えられて逃げるだけそれって特技っていえるかなぁ? お得意のクリティカルってのわたしに見せてみなよ! ま、無理だけどねーー!」
銀色の刺股の連撃、激しい攻めを見せながら今度は口で挑発をする。
ピネスは鋭く変幻自在に唸る彼女の銀色の刺股捌きをいなすのが精一杯。次々と湧く殺気へとぶつける翠の刃の感触は、やはりクリティカルどころではない。
逆に、〝クリティカル〟。スイングする重い銀色の一撃が、ピネスを後ろへとおおきく、蓄えた魔力を爆発させるように弾き飛ばした。
(やっぱりこの人クリティカル打ってきてる。じゃぁやっぱり直後のここしかないだろぉ!)
疑いの余地はないピネスはもう確信する。この人も自分と同じことをし、自分の練った魔力を奪うように邪魔をしている。そう──。
「なんとなくサァっ! 【ピネス……サンダー】!!!」
「ありゃまた弾っ──!?」
遠くから足を踏ん張り放った雷撃のマジック。遠距離からの攻撃に対し旋回する銀色のプロペラシールドがソレを阻む。
だが、スベテの魔力を圧縮して使ったかのような今まで見せたものより数段鋭い魔法威力は、刺股を回す盾だけで受け切れるものではない。
痺れはガードを貫き池原の全身を伝った。垂れ流し作った電撃の綱で相手を縛りつけ繋ぐ。若い若い強引さがその用務員の女を離さまいと迸る雷刃で襲い続ける。
そして────
「わかったかもー!!!」
「わかったなんて言わせないっ!!!」
強情にも教えてくれないならば、強引に繋がり相手のことを理解すればいい。
布石となる雷を切先から打ち尽くし、閃いたピネスは仕掛けた。雷音唸らせ突進する翠の刃を、魔力を込めた銀色の刺股は待っていたとばかりに真正面から受け止めた。
鍔迫り合わせて、ぶつかり合ったチカラ勝負。
しかし今、致命の期待感が湧き上がるのはどこからか。その痺れる冷たい期待感が、いつの日からか錆びついた池原のカラダの中を伝っている。
それは警鐘であり、脅威。背筋が凍るどころではない、凍ったまま吹っ飛んでいきそうな〝ヤバいヤツ〟。特殊な修行を重ねた戦闘のプロ、そう自負する彼女の器には、自分ではない誰かのモノが勝手に迸り満たされていくのが分かる。
「──やばっ!? これかァァ、アレをヤったの!?」
剣を振り切り放たれた魔滾り光る青緑の三日月は、噛みついていた銀色の顎を切り裂いた。
相手と己を強引に繋げて絞り出す本気以上の本気、そしてただならぬその魔力を受け止める本気。どちらもなければその技は成されない。
「あっ、やべ……あぁー……」
それがクリティカル陽術。池原の迷い目指した武の真髄。
▼
▽
「はぁははぁ……なんだこの陽気のかたまり、若っかーーーー……」
白いトレーニングルームの壁には、痛々しく刻まれた落雷が通ったような跡がある。
床には転がる真っ二つに折れた銀色の棒切れと、大の字になり息を吐き天を見上げる茶髪の水色作業着さん。ポニーテールに結っていた髪がまだ熱い床に広がり解けた。胴体はちゃんと繋がっている。
「……大丈夫すか?」
「はは、お手を拝借」
心配したピネスはまだ生きていた彼女の姿に安堵し、伸ばし求めてきた彼女の手に助けの手を貸した。
「よかっ…うがっ!? いててててて!??」
「はいあたしの勝ちー!」
「痛いいいいいいい────────!!!」
心優しき少年の貸したその手は、隙あり──。何故か関節技をかけられ、天地は逆転。
ピネスを押さえ付けて乗り掛かり、堂々たるマウントポジションへ。笑い飛ばし勝ち誇る負けず嫌いの用務員の女がそこにいた。
▼
▽
緑の糸で両手はあやとり遊びをし、考え耽る──。さっきやった咄嗟の防御行動その感覚と手順をもう一度確認し直し、池原はひとり頷いた。
「いいよ、毎週ここで〝一、二回〟は相手してあげる。それ以外はムリ。暇じゃないし金取るから、ってことでね。あと校長様怒ってた? なんとかそっちから上手いこと言っといて、じゃね!」
「え、あ、はい??」
片手でごめんのジェスチャー、なんだかチャーミングな仕草で彼女はウインクまでしている。
浦木幸は毎週、用務員の池原叉鬼と本気の対戦をできるようになった。
勝利か敗北かわからない。だが、手に汗にぎる充実感を手にした。ピネスは一人残されたトレーニングルームで、もう一度──熱宿る己の剣を構えてみた。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
憧れのお姉さんは淫らな家庭教師
馬衣蜜柑
恋愛
友達の恋バナに胸を躍らせる教え子・萌音。そんな彼女を、美咲は優しく「大人の身体」へと作り替えていく。「ねえ萌音ちゃん、お友達よりも……気持ちよくしてあげる」眼鏡の家庭教師が教えるのは、教科書には載っていない「女同士」の極上の溶け合い方。
女性向け百合(レズビアン)R18小説。男性は出てきません。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる