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60 頁の海、天界のいろいろ
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トップ同士、ブク高の校長不黒文と一本木の下の茶室での秘密の会談と交渉を終えた女神ガイアは、回収した【みどりのブック】と土産菓子を手にし、天界の石羽にある《カブト石山》の館へと帰った。
⬜︎
※《石羽》とは石ノ仏区と呼ばれる広大な世界の名であり、その広大な石羽の中のさらに細かい区分、第467S頁区の名は《カブト石山》である。
天界を属性を分けるように区切る仏区には、他にも上位神たちの住む《天峰》こと天ノ仏区、海神や水神たちの好んで住む《波文》こと水ノ仏区、主に下位神、神格を持たない者たちの住む《茎》こと白手ノ仏区などがある。
天界は多様な環境に、様々な神々がそれぞれのポリシーを持ち住む……あるいは潜む、数えきれないほどのページで構成されている世界なのである。
⬜︎
白く霞む景色と一本の長い橋を見下ろせる石色の頂、神秘厳かなるカブト石山に立派に構える和の館へと────
今、黒い羽衣を被った貴き存在が舞いもどった。
「遅いお帰りでしたね武天様。ちなみに再度釘を刺しておきますが、下界でそのチカラと魔力を好き勝手に行使することは許されていませんよ。何を考えているのですか、頭が割れそうです。(その恰好はなんですか?)」
降り立った美しき黒を迎えたのは、淡々とよく喋る黒い唇のピンク髪。ピンク髪を威厳ある宝髻に結った側近の天女であった。
歴代の天戴武天ガイアの教育係でもある古参の彼女、黒天女は厳しい面持ちで、館の門前でガイアのことを待ち構えていた。
「少しトラブルがあっただけよ、それも既に受け取り解決したわ。この焼け焦げた輪をまた作れば【天能システム】は勝手に許してくれると思うわ。頭を割る必要はなかったわね。(これはじぇーけー戦闘着よ)」
持ち帰られたたくさんの土産の品は、駆け寄ってきた動く石犬の式神に元気に咥えられ好きに持ち運ばれていく。その中のひとつ、【焼け焦げた輪】を咥えた石犬から回収した黒天女は、眉間にえらく皺を寄せながら誰にも聞こえるような溜息をついた。
「じぇーけ? なんですかそれは…………はぁ……だから贖罪中の問題の罪人の元には私が赴くと言ったのです! 輪が焦げるぅ!? 何があったというのですか!? 普通の神々はどれだけチカラを振り絞ってもそうはなりません! 訳を詳しく聞かせてもらいますからねっ、これはひょっとすれば天峰会議ものですよ! それに輪の報告をそう何度も下界への降臨時のエラー報告という体で偽ることは、さすがにおかしいことに気付く者もでてきます! この腕の【天の輪】は天能システムにより正しく管理されているのです。神聖なる歴代神々の意志の結集である天能システムに、神格と天性と性分を不適格と判断されれば〝天戴武天ガイア〟の名と手にした神力の大部分を今すぐにでも取り上げられてしまいますよ! これは由々しき……」
「炎神はもっと自由だったわ。天界の誰も彼からは何も取り上げることはできなかった、取り上げられることの方が多かったものよ」
「天の輪を幾度も焼き尽くし『俺を制御したいならもっといい首輪を焼いて持ってこい』などと宣い……あまつさえ天能システムを野蛮にも燃やし壊し、一時機能停止に陥らせるまで……そして略奪した天戴武天ガイアの名を、暴にまかせた腕試しで天界中に賭けるような真似をする自由奔放なあの例外を出すのはやめてください! 前前任が問題外のアレで、前任が色ぼけたお花畑の女神だったからこそ、炎神様の後を継いだガイア様は腕っぷしだけではない、知恵と慈愛ある歴代でもバランスのとれた人格者と評価されて、元の天界の秩序を取り戻しつつあり皆にこうして愛されているのですよ! あなたの心根は勝手気ままに姿をくらました奔放な炎神様などとはまったく違います。くれぐれもそのはばたく偉大なる聖なる道の先を、見誤らないでいただきたいのです! まったく幾度思い返してもまるで鍋の底に焦げついた黒歴史です……姿をくらます前に後継探しをちゃんとした分には評価しますがね……。噂ではまた火の立つところにずけずけとあらわ」
「────よく分かったわ、準備をしなさい黒天女」
「はい? このためた訴状や書類の束のことですか! それよりも先に新しい最高グレードの天の輪を用意する必要があると思われます。失礼ながら天戴武天ガイア様といえど、アレが以前暴れた一件のせいで、天の輪の認証なしでは危ういと判断され、天峰には入れませんがそこはまた私がなんとかし」
「私が何者であったかを思い出したわ。いくら座学にふけり勤しみ書物を漁ろうとも、質は変わらない。しょせん武天、カビ臭い訳の分からない本を読むばかりでいらぬ賢しさを増すばかり……。いつしか拳を握りしめたまま仕舞い、他の者へとばかり目を向け、だらけた神々の要望を満たそうと知らぬ頁から頁へ奔走する日々に本題を見失っていました。そして理解しました、この天戴武天をさしおき天峰で優雅に遊んでばかりいるお花畑な連中のことなど、〝知ったことではない〟何百年いくらと学ぼうがあの者たちとは属性が違うのだと、たった今その薄っぺらい紙屑の山を再度拝み見て、己の心に深く学びました」
「な、なにを……? 武天様は確実に立派になら」
「準備をしなさい黒天女、第四回天戴武闘市の!!! 天能システムも再び燃えろとこのヌイに味方をし言っているわ。台頭する灯火たちを、冷たい場所で燻らせるわけにはいきません。武天とは一番強き者の称号、ぬくぬくと本や紙束をこの手で受け取り過ごすことなどあってなるものか!! 試しの時は今、この拳が唸るのは今、今をおいてありません!!!」
ふらふらと風に散る白い紙を、天を見つめ握り締めた神の拳が燃やし尽くした。
主神の豹変に、呆気にとられた黒天女は館の門を過ぎゆくその堂々たる背と熱く天にまで迸る赤き神力の威厳に────何も言えず。いつの日か見た炎神の背姿と彼女のことを重ね合わせた。
〝第四回天戴武闘市〟
天戴武天ガイアの抱き掴んだ新たな野望は、メラメラと燻りつづけていた迷いを今全て燃やし、その勇ましき瞳の奥に新たな火が勢いよく灯り宿った。
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※《石羽》とは石ノ仏区と呼ばれる広大な世界の名であり、その広大な石羽の中のさらに細かい区分、第467S頁区の名は《カブト石山》である。
天界を属性を分けるように区切る仏区には、他にも上位神たちの住む《天峰》こと天ノ仏区、海神や水神たちの好んで住む《波文》こと水ノ仏区、主に下位神、神格を持たない者たちの住む《茎》こと白手ノ仏区などがある。
天界は多様な環境に、様々な神々がそれぞれのポリシーを持ち住む……あるいは潜む、数えきれないほどのページで構成されている世界なのである。
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白く霞む景色と一本の長い橋を見下ろせる石色の頂、神秘厳かなるカブト石山に立派に構える和の館へと────
今、黒い羽衣を被った貴き存在が舞いもどった。
「遅いお帰りでしたね武天様。ちなみに再度釘を刺しておきますが、下界でそのチカラと魔力を好き勝手に行使することは許されていませんよ。何を考えているのですか、頭が割れそうです。(その恰好はなんですか?)」
降り立った美しき黒を迎えたのは、淡々とよく喋る黒い唇のピンク髪。ピンク髪を威厳ある宝髻に結った側近の天女であった。
歴代の天戴武天ガイアの教育係でもある古参の彼女、黒天女は厳しい面持ちで、館の門前でガイアのことを待ち構えていた。
「少しトラブルがあっただけよ、それも既に受け取り解決したわ。この焼け焦げた輪をまた作れば【天能システム】は勝手に許してくれると思うわ。頭を割る必要はなかったわね。(これはじぇーけー戦闘着よ)」
持ち帰られたたくさんの土産の品は、駆け寄ってきた動く石犬の式神に元気に咥えられ好きに持ち運ばれていく。その中のひとつ、【焼け焦げた輪】を咥えた石犬から回収した黒天女は、眉間にえらく皺を寄せながら誰にも聞こえるような溜息をついた。
「じぇーけ? なんですかそれは…………はぁ……だから贖罪中の問題の罪人の元には私が赴くと言ったのです! 輪が焦げるぅ!? 何があったというのですか!? 普通の神々はどれだけチカラを振り絞ってもそうはなりません! 訳を詳しく聞かせてもらいますからねっ、これはひょっとすれば天峰会議ものですよ! それに輪の報告をそう何度も下界への降臨時のエラー報告という体で偽ることは、さすがにおかしいことに気付く者もでてきます! この腕の【天の輪】は天能システムにより正しく管理されているのです。神聖なる歴代神々の意志の結集である天能システムに、神格と天性と性分を不適格と判断されれば〝天戴武天ガイア〟の名と手にした神力の大部分を今すぐにでも取り上げられてしまいますよ! これは由々しき……」
「炎神はもっと自由だったわ。天界の誰も彼からは何も取り上げることはできなかった、取り上げられることの方が多かったものよ」
「天の輪を幾度も焼き尽くし『俺を制御したいならもっといい首輪を焼いて持ってこい』などと宣い……あまつさえ天能システムを野蛮にも燃やし壊し、一時機能停止に陥らせるまで……そして略奪した天戴武天ガイアの名を、暴にまかせた腕試しで天界中に賭けるような真似をする自由奔放なあの例外を出すのはやめてください! 前前任が問題外のアレで、前任が色ぼけたお花畑の女神だったからこそ、炎神様の後を継いだガイア様は腕っぷしだけではない、知恵と慈愛ある歴代でもバランスのとれた人格者と評価されて、元の天界の秩序を取り戻しつつあり皆にこうして愛されているのですよ! あなたの心根は勝手気ままに姿をくらました奔放な炎神様などとはまったく違います。くれぐれもそのはばたく偉大なる聖なる道の先を、見誤らないでいただきたいのです! まったく幾度思い返してもまるで鍋の底に焦げついた黒歴史です……姿をくらます前に後継探しをちゃんとした分には評価しますがね……。噂ではまた火の立つところにずけずけとあらわ」
「────よく分かったわ、準備をしなさい黒天女」
「はい? このためた訴状や書類の束のことですか! それよりも先に新しい最高グレードの天の輪を用意する必要があると思われます。失礼ながら天戴武天ガイア様といえど、アレが以前暴れた一件のせいで、天の輪の認証なしでは危ういと判断され、天峰には入れませんがそこはまた私がなんとかし」
「私が何者であったかを思い出したわ。いくら座学にふけり勤しみ書物を漁ろうとも、質は変わらない。しょせん武天、カビ臭い訳の分からない本を読むばかりでいらぬ賢しさを増すばかり……。いつしか拳を握りしめたまま仕舞い、他の者へとばかり目を向け、だらけた神々の要望を満たそうと知らぬ頁から頁へ奔走する日々に本題を見失っていました。そして理解しました、この天戴武天をさしおき天峰で優雅に遊んでばかりいるお花畑な連中のことなど、〝知ったことではない〟何百年いくらと学ぼうがあの者たちとは属性が違うのだと、たった今その薄っぺらい紙屑の山を再度拝み見て、己の心に深く学びました」
「な、なにを……? 武天様は確実に立派になら」
「準備をしなさい黒天女、第四回天戴武闘市の!!! 天能システムも再び燃えろとこのヌイに味方をし言っているわ。台頭する灯火たちを、冷たい場所で燻らせるわけにはいきません。武天とは一番強き者の称号、ぬくぬくと本や紙束をこの手で受け取り過ごすことなどあってなるものか!! 試しの時は今、この拳が唸るのは今、今をおいてありません!!!」
ふらふらと風に散る白い紙を、天を見つめ握り締めた神の拳が燃やし尽くした。
主神の豹変に、呆気にとられた黒天女は館の門を過ぎゆくその堂々たる背と熱く天にまで迸る赤き神力の威厳に────何も言えず。いつの日か見た炎神の背姿と彼女のことを重ね合わせた。
〝第四回天戴武闘市〟
天戴武天ガイアの抱き掴んだ新たな野望は、メラメラと燻りつづけていた迷いを今全て燃やし、その勇ましき瞳の奥に新たな火が勢いよく灯り宿った。
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